第6話 火山の神龍
フレイルは語り始めた。
日本上空に位置する魔法界、そこで唯一存在する魔法学院。
その中で起きた顛末を。
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私は天才だった。今もだけど。
授業なんて全部が人よりもできていたし、最優の評価をもらっていた。
箒のレースでは6番手だけど、こと、魔術知識や実戦形式の決闘術では他の生徒なんて目じゃなかった。
だけれど、私はいじめを受けていた。
陰湿なもの、一歩間違えれば死ぬかもしれないリスクあるもの、直接的なもの
カバンを汚されたり、教科書に水をかけられたり。
箒飛行中に焦点が定まらず、蛇行したり急降下急上昇を繰り返すように魔法をかけられたり。
決闘では私だけ、転ぶように氷結魔法で床を凍らせられたり。
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ハルトの眉がぴくりと動いた。
いじめ、という言葉に反応したのだろう。
けれどフレイルは「気にすることないよ! だって全部、私にとってなんの障害にもならなかったもの」と笑った。
「ほんとそんなのどうだってよかったけどね!
だって、私は天才だから。魔女や魔法使いは志せば、誰でも心にプロテクトをかけられるようになる。だから同じように対抗策を練って、その一個ずつのトラブルにそった魔法で打ち負かしてしまえばいいのよ」
「なんと言うか、豪胆? だな、君は。君がなんでそう言う性格になったのかわかる気がするよ」
「どういう意味よ」
「さて、続きをどうぞ?」
運ばれてきたパフェや苺タルトを頬張りながら、ハルトは続きを促した。
やっぱ量多くないか?
というジトリとした視線を送ったもののどこ吹く風といった顔をしているハルトに効果なさそうだったので、フレイルは続きを話し出した。
「そんな私だけどね、ある時ケガをしたの。それが、魔法界にあるレイファニア森林での光るキノコの採取授業中だったかな」
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視界から外れた位置から飛んできた風の刃、それに私は全くといっていいほど気づいていなかった。
大した威力じゃないけど、複数飛んできたし、練り込まれた魔力が魔獣のそれと違うから人であることがよく分かったの。
けど、魔法学院の中じゃないし、外で魔獣も出るような場所なのに、隣で私の唯一無二の親友ツキヨもいたし。
正直、油断……してたんだと思う。認めたくないけど。
左肩から血が飛んでね、今でも思い出すとむかっ腹が立つなあ。
ツキヨが親友だからこそ、心配されたくなかったのに、本当にすごく心配させちゃった。
回復魔法で治癒してくれたこと、今でも嬉しく感じてる。
本当に最高の友達。
ああ、ごめん! 続きね。
で、授業終わりに魔法自然学研修担当の教授に、こう言うことがあって危なかった旨を伝えにいこうとしたの。1人でね。
職員室の前に、学生5人が立っていた。
で、そいつらこう言ったのよ。
「火山の神龍って知ってる?」って。
知ってるもなにもあったものじゃない。
災害級の魔獣だよ。禁忌ともいっていい。
まさしく神を冠するに相応しい、龍なわけ。
それを、5人のリーダー格が口にした。
で、そいつはこう言うの。
度胸試しをしない?
あんたのために私が禁忌を破る。それをあんたが押しとどめて見せろって。
封印もあんたがしろと。
正直、頭がおかしいんじゃないかと思ったな。
だって、神龍よ?
封印を解いただけで世界に破滅が訪れると思っても過言じゃない。
バカじゃないのって言って拒否した。
けれども、「逃げてもいいよ。でも、いいのかしら? そんななっっさけないことをしたら、あんたの友達、あんたの家族、ぶっ潰すけどね」
そんなこと言われたらついてくしかないでしょ?
だから胸ぐら掴んで言ってあげた。
「あんたらこそ分かってんの?
私にだけ責任押し付けて逃げるつもりだろうけど、逃げたら承知しないよ。あそこまで啖呵切ったんだ。責任とってもらわないとね」
「どう責任取るってんのよ」
「あんたらの先祖から末代にかけてまで全身を激痛に苛まれるような呪いを開発して、一人一人丁寧にかけてやるってことよ」
「そんなことできるわけが……」
「できる」
私の怒りを込めた視線を感じて、リーダー格のその女は
「うっぜえな……、いつまで胸ぐら掴んでんだ。さっさと手を離せ」
手を払いのけて言った。
「フレイル、あんたの泣きっ面が楽しみだわ」
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「おら、キビキビ歩け」
「うっさいな押さないでよ、危ないなぁ」
ってやりとりをしながら、しばらく退屈極まりないいじめっ子どもとの遠足を火山口までして。
やっとの思いでたどり着いたらこう言われた。
「そこに突っ伏しな」
「あ?」
「睨むな、さっさとしろよ。このままマグマに頭からダイブでもしたいわけ?」
舌打ちをして私は従った。
お母さんから買ってもらった大切なローブに、ワイシャツ、学院の制服が灰に汚れる。
顎までつけたけど、後ろの奴らにどう責任を取らすかを考えたら悔しさはあったけど、なんとか耐えることができた。
私が火傷しそうなほどの熱気にさらされて暑がってるし、視界よりも下にいるから優越感に浸ったんだろうね。
そしたら調子づいたのか、さらにそいつは言うのよ。
「血を取るから腕出せ」
「は? ふざけん、な! なんで私があんたらのために血を与えなきゃなんないわけ!」
「私だってあんたの汚らわしい肌に触りたくなんかないわよ。でも、封印を解くには生贄となる者の血が必要なのよ。さっさと腕をよこせ」
「おい」というリーダー格の一言で4人の女学生が私の四肢を押さえつけてローブをめくりあげ、右腕を出した。
そこにナイフを突き立てる。
ジクリとした痛みが走った。
それだけじゃなくて、そのナイフは柄の部分にあるボタンを押すと注射器のように突き立てた物の内容液を吸い出せる仕組みになってたわけね。
で、私の血液を吸い出してーーー
「火山の神龍様、龍神イグニスの眷属よ。今宵、この者をあなたの生贄に捧げますーーーそしてどうか! 私に、邪悪なるものでもいい、力をお与えください!」
唱えながら、血を火山口のマグマだまりへと垂らした。
瞬間
天が紫色に光った。
雷鳴とともに一筋の光が、マグマだまりに落ちる。
しばらくして地響きがした。
断続的で、世界が終わるかと思うほどの光がマグマ溜まりから突如発生して明滅を繰り返す。
そして、ぬるりとーーー怪物が現れた。
溶岩をその身に纏い、全身が焼けてるのに痛みを感じないのかと思うほどの怒りをその眼に宿して。
その怪物が両翼を大きく広げる。
バサッ! という風を切る音がした。
刹那的に私は理解した。
この怪物こそが、火山の神龍そのものなのだと。




