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闇の夢 進め咎人よ

 夢を見た。

 暗闇の中にいる夢。

 フレイル1人だけだと思っていたら、その目の前にもう1人いた。

 その隣にモヤのようなものが形を少しずつ変えながら滞留している。

 フレイルは見覚えがあった。

 私だ。

 もう1人の私。そして、龍神イグニスの闇の力。ネファエラを退治した時に、私へと乗り移った神がかった力の源泉。

 恐れのようなものがフレイルに震えとして足を止めさせるが、振り払って叫んだ。

「私の友達をどうして殺した!」


 振り返り、彼女は言う。


「いたの、フレイル」


「あなたが呼んだんでしょ? 友達を殺したくせに舐めた真似をしてくれるね、この殺人鬼」


「随分な言いぐさね、私が助けなければあなたは死んでいたし、神の天啓もまっとうにクリアーできなかったくせに」


「余計なお世話よ!」


「あら」

 クスッと笑いながらもう1人のフレイルは手を広げる。

「そんなこと言っていいの? ようやくあなたの願いが叶うのに」


「どう言うことよ」

 つかつかと詰め寄ってくる彼女の圧に、フレイルは少し後ずさった。

 何よ、と言おうとしたところで彼女は笑った。

 悪意を込めた醜い笑顔だった。

「あなたの願いは自分の才を認めさせること、でしょ?」


「違う…」


「違わないよ、あなたは自分で言っていたでしょう? 自分の才を認めさせてやるって。

 いじめを受けても、教授や学院長が嫌がらせをしてきても、友達を殺しても……それが全て神の天啓をクリアーすれば全て報われる……そう思ったのでしょう?」


「違う…!」


「そう、そんなことないのにね!」

 もう1人のフレイルの顔がさらに歪む。

「あなたのやることは確かに自分の強さを認めさせることができるでしょう、でも!

 それは独りよがりでしかない。それを繰り返したところでなにも変わらない! たとえ、神の天啓をクリアしても、あなた自身が真に認められることは一向にあり得ない!」


「黙れ!」フレイルは彼女の襟を両手で締め上げる。


「私も殺すの? あなたの仲間や友達のように」

 吐き捨てるように言う「もう1人の私」にフレイルは吠えるようにして言い返した。

「ハルトについては認める。けれどツキヨは……あなたがしたことでしょ!」

「違うわ」首を横に振る。その姿にフレイルはさらに腹が立った。ふざけてるのか?

 大事な友達を殺しておいて、何が違う。


「なにを言ってんだ、あんたは! お前が!

 お前が……私の友達を……っ!」


「あなたは私、私はあなた……一心同体なのよ。あなたの闇の部分、抑圧された負の感情が私と言う怪物を生み出したの。自分には才能があるからいじめを受けてもどこ吹く風でいられたと思った? 違うよ、少しずつ少しずつあなたは今の現状から抜け出したいと足掻いていた。それでもそんな自分を認められないから、、」

「もう、何も言うな!」

 押し倒し、首を締め上げる。

 苦しそうな顔は一瞬見えたものの、すぐに悪意のある笑顔に戻った。

「あなたが真に認められることはない、あなたが自分を許さない限り…、そして! 神を殺さない限りね!」

 フレイルの首を絞める力が緩まった。

「どう言うこと? 神を殺すって」

ケホッと一度だけ咳き込むともう1人のフレイルは言った。

「あなたは薄々感じているはずだよ、神を殺すことが自分の今までを大きく変える手段だとね」

「そんな、ばかな……というか、そもそも神は死んで魂だけの存在となってるから天上にいてこの世界には現れることはできないはず」

「無理やり世界に権限させて、戦いを仕掛けることができるとしたら?」

「でもそれは神下ろしの儀で学院長が画策してて……私にはできるわけが……」

「できる」

 もう1人のフレイルが起き上がる。フレイルは身体を思わず少しのけぞらせた。


「なんでそう言い切れるの?」

「神の天啓を受けた者はなんでも一つ願いを叶えることができるからだよ」

「それなら神を殺すことを願うのは?」

「それは無効だよ」

「なぜ?」

「そのためにはまず、神の姿を認知しなければならない。その上で殺すことを願うとなると、願うのが2つになり、無効」

「どうして、あなたはそこまで知って……」

「あなたが知らないはずないじゃない」

「どういうこと?」

「あなたは知っている、自分がどういう風にすればこの戦いを終わらせられるかを」

「意味が分からない、私は何も知らない!」

「そう思い込んでるだけだよ、あなたはなにかしらのトラブルに対しての打開策を打ち立てることができるでしょ?」


 いじめを受けた時に返り討ちにしたのもそうだと彼女は言う。


「それに、もうすぐで……私のはなった古龍魔法の詠唱をできるようになると思うよ」


 あとね。あなた、自分で世界を終わりに近づけたんだよ


 そんなわけあるか!とフレイルは叫ぶ。

 けれど、もう1人のフレイルが嗤いながらこう言った。


「ハルトを殺したせいで、神の器官や肉体が中枢へ集まり始めた。ーーーああ、ごめん。ツキヨもだね。神の眼を取り込んでいたから。

 だからあなたが願わなくてもどうせ、神は顕現できる」


「じゃあ、殺すことを願えばーーー」


「いいえ? あなたが願うのは、神に戦いを申し込むこと。これだけ。これだけでいいの。

 あとは龍神イグニスを抑え込む方法を自分で見つけなさい」


 私に頼らず、できるようになるといいわね。


「あんたになんて誰が頼むか。ここまで教えてくれたこと、私の抑圧された感情を代替わりしてたことには感謝するわ。でも、ツキヨを殺したことだけは、絶対に死んでも許さない」


 夢から覚める


 ツキヨを埋葬し、手を合わせる。

 そして、歩き出す。


 向かうは、霊峰富士山。

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