第4話 神に届き得る者ハルト=カレイド
敵と自分だけ。何も残ってない。
魔力が枯渇しようとしている今、魔力でできた召喚獣も意味をなさない。
火炎剣も消えてしまった。
魔力が完全に消えてしまえば戻るまでしばらくの日数がかかる。
そうなれば自分はただの人間となんら変わらなくなる。
だめだ、思考が最悪のことしか思いついてくれない。
勝てる可能性が道筋が見えてこない。
絶望
その二文字が頭に浮かんだ。
その瞬間 まばゆい光が見えた
光り輝く天上にある一条の光が降りてきたような、そんな壮大さ。
目の前に立っていたのは男性だった。黒いシルクハットを被り、青の輝くコートを身にまとい、右手には星のように光り輝く短剣を持っている。
「払え……一条の光。剣の灯火よ、閃光の如く敵を打ち払え!(SET fleim code」
男のゆっくりした言葉。それでいて悠然とした立ち振る舞い。そして、高らかに叫ぶその言葉。
魔法を発動する詠唱だとフレイルは認識した。
男の持つ短剣が瞬く。形を変える。
それは大剣に変化し、男は腰を落として左手を地につける。
かなり無理な体勢に見えるものの、男は余裕そうに笑った。
「君はそこで見てるだけでいい」
そう言って男は走った。
脅威に感じたのかジュリアスが髪の毛を伸ばし、男を潰そうとする。
男はすんでのところで回避して手に持つその大剣で髪の毛を切り裂いてみせていた。
ジュリアスは自慢の髪の毛を切り裂かれたのがすごく気に入らなかったのだろう、奇声をあげる。耳が破壊されるかと思うくらいの声の大きさ、そして甲高さだった。
髪の毛が揺れる。切り裂かれて傷だらけになった髪がトリートメントでも塗ったかのように綺麗さを取り戻した。それだけではない。
無尽蔵に増えるのかと思うほど多量の髪の毛が伸び、質量を増やし、大波と化しながら迫る。
「こんなの……勝てるわけが……」
力なく座り込んで見守るフレイルに、
男は振り返って言った。
「これを打ち払ったら、あとは君がとどめを刺せ」
「でも、私にはでき……」
「できるさ」
言わせてくれなかった。でも、なぜだろう力が湧いてくる。
フレイルは立ち上がり、言った。
「あなたが負けたらどうせ心中するしかないもんね、やって見せてよ。あとは私がきっちりあの化け物を殺してみせるから」
「言ってくれるね、さっきまでうなだれてたくせに」
「うるさい、ばか」
「はは」笑って男は正面を向く。
「じゃあ、行くぞ。準備はいいか?」
「言われなくてもできてるよ」
フレイルは笑って答える。
そして、すぐにでも魔法を発現できるように構えた。
男が大剣を持って走りだす。
走りながら男が言葉を紡ぐ。
「光よ……現れ、我が剣に星の力を与えろ!」
合わせ、剣が熱を帯びる。それが凄まじいまでの光を放った。
「敵は前方にあり。我が右手は神の御座に届き得るだけの魔力を帯びる。
ブラックアウト……バーン!」
黒い光、白い光をそれぞれ宿しながら輝きを増す大剣。
それを迫り来る大波に一息にぶち当てる。
刹那
崩壊する大波。莫大な光に当てられ、髪の毛の大群が熱に溶けるようにして融解していく。
そして、その光はジュリアスの姿を露わにした。
ーーー行ける
フレイルは加速魔法を自身にかける。
「火焔魔法……!フレイムソード!」
燃える剣を生成し、ジュリアスの胸に突き立てた。
ジュリアスが声にならない悲鳴を上げる。
つんざくように耳を貫く。
痛んできた耳を押さえたくなる。けれど耐えた。
しばらくして、ジュリアスが炎に巻かれて焼き尽くされーーー消えていった。
フレイルは男に聞いた。
「なんで……助けてくれたの?」
「君は……裁定者だろ? 君がいなきゃ神は現れない。だから君を守護する役割を買って出たい。そのためだよ」
「だいぶシビアというか…あなた、リアリストだね」
「ふ」と笑い、「そうかもな」
男は手を差し伸べてきた。
「私はフレイル。魔女……あなたは?」
魔女の問いに男は笑って、名を告げる。
「俺は、ハルト。ハルト=カレイドだ。十二星大戦の参加者の1人だよ」




