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真実の槍を喉元に喰らいて

 フレイルは学院長室のドアの前に立って、ノックを2度した。「入れ」と入室を許可されると室内へと入った。


 そこでこう言われた。


「まずは二つ目の天啓までクリアできたことを素直に褒めてあげるよ」


 パン、パン、パンとわざとらしく拍手までして学院長が笑っている。


「でも、私ーーー12体は倒せていません」


 大丈夫。そう、学院長は口にした。


「この神の天啓についてお話ししよう」


 君は才があるから優秀だから選ばれたと思っていただろう?

 神の天啓を全てクリアすれば報われると。


 実は違う。


 そう、違うんだ。


 神の天啓は、才があってみんなから疎ましがられている人を排除する、そんなシステムなんだ

 そして、神の器官というより臓器かな

 を3種 神の肉体に返すことが叶えば、終了なわけだ



「え……? 嘘ですよね」


「嘘じゃないよ。本当のことさ」


 だから君が12体の異界の者を殺せていなくても、神の臓器を3種 肉体に返せていて、なおかつ三つの証を全て獲得できていればーーー『神下ろしの議』はあと一歩だ。


「だから、おめでとう。

 あとは、君が最も大事な人を殺せば神が降臨されるんだ。しっかりとこなしてきなさい」


「嘘だ」


 フレイルは顔を左右に振る。


「嘘だ!」


 私は友達を殺したくない

 ハルトを殺してしまって次はツキヨを?

 無理だ

 耐えられない。


「そんなの絶対嫌です!」


「君の友達が、人を殺そうとしていても?」


「そんなの、信じられない!」


「フレイルーーー子どもじゃないんだから、しっかり全うしなさい。いいかい?

 人間界でいうところの冬『クリスマス前日』だ。その日に、ツキヨと殺し合いをして勝ちなさい。それが君の、神の天啓最後の試練だ」


 動悸がひどい。立っているだけでやっとだった。

 けれど、せめてもの抵抗で学院長に問いかける。


「ーーー学院長」


「なんだ?」


「あなたは私の前任者ですか? 神の天啓の」


「ああーーー二つ目の疑念の札で私の声を聞き、三つ目の憎悪の札で過去の情景を知ったのか。その通りだよ、私がお前の前任者だ」


 そもそもだ。『三つの証を集めること』は歴代の神の天啓を授かりし者達の悲哀や疑念、憎悪を受け取ることと同義なのだから。

 知っていて当然だ。

 人間界でもあるだろう? 御朱印集めに人の記憶が入ったようなものだ。


 そう言って嘲笑う学院長。


「最初から、騙していたんですね」


 震える声でいうフレイルから視線を切ると、学院長は手を叩いた。


「そうだとしても実行したのは君だよ、フレイル。話は終わりだ。ーーーマスクベル」


 魔法陣が光る

 教授が現れる


 そして


「つまみ出せ」


 風魔法をもろに受けて、フレイルは通路の壁に叩きつけられた。

肺から空気が全て出た気がする。

咳き込み、視界が歪む。

それが涙だということ後から気づいた。


 扉が閉められる。


 フレイルはふらふらと立ち上がる。そして学院から逃げるように走っていった。


 もう限界だ。

 もう嫌だ。

 全てが自分を否定しているように感じて仕方がない。

 それらを振り切るように、フレイルは何度も何度も学院を振り返っては絶望したような恐怖したような顔で、走っていった。


 ーーーーーーーーーーーーーーーー

 二つ室内から見る影があった


 学院長室で


「良かったのですか?」


「もちろんだとも。あれで拒絶するだけして自死を選ぶならそれまでだ。捨ておけ」


 眉をひそめて心底不快という顔で、学院長はフレイルの姿を眺めていた。


 ーーー神の天啓を受けた時点で、こうなることは予想できただろうに。

 バカな子どもだ


 そう、哀れな子どもを眺めるような視線だった。




 そして教室では。


 ツキヨが禁忌魔法の副作用でぐずぐずに溶け出した右腕を押さえながら、背中を見せて逃げるように走り去っていくフレイルの姿を窓越しにみて。


 ーーーあんなのフレイルじゃない


 なんであんな走ってるの?


 そんなに神の天啓に選ばれたのが嬉しい?


 ふざけるな、私を殺せなんて命令されたくせに。


「フレイルなんて死んじゃえばいい」


 嫉妬を込めた目で見ながら、そう言った。


 いや


「私が、殺せばいいんだ」


 天才フレイルを、私がくだす。


 私がフレイルを倒す。


 そして、天才と言われるのは私!


 これでようやく対等だと思ってくれるよね?


「そうだよーーーだから、神の眼まで殺して手に入れたんだ」


 ツキヨは壊れたように歪んだ笑みを浮かべた。


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