沖縄へ 闇に光る眼
フレイルとハルト、2人の気持ちは沈んでいた。
人を助けられなかった。
それでも前に進まなきゃいけない。
それは分かっている。
魔法も万能じゃないことも分かっている。
けれど、それでも全員を助けてあげたかった。
2人は口を聞かず、小牧空港に向かった。
道中でも人の流れやご飯の匂いすらもどこか遠くにある気がした。
着いてーーー閉まっていた。
閉鎖中
いやに、その文字が見える。
「ハルト……」
「すまん、やってなかったな。愛知県全域を襲うと鬼雷法師 破魔王狗は言っていたんだ。当然だわな、気づかなくて申し訳ない」
「いや……私こそごめん、ツキヨを説き伏せていたら」
「けどあれは、どうしようもなかったんだろ?
相手が聞く耳持たず、さっさとどこかに行ってしまったんだから」
「でも、いつものあの子なら私が困ってたら絶対来てくれるもの」
「そうか。そうだよな、でもだ」
「なに?」
少し警戒したような顔をするフレイル。
表情が固い。身体も硬直している。
「ツキヨは、お前の友達だ。それはそうだ。でも、助けに来てくれなかったことを今、なんでだろうと思っても仕方ない。 今やるべきことしないか? それが結果的に、人を救えなかったことへの責任を取ることに繋がるんじゃないか?」
長い沈黙。
フレイルは頷いた。
「分かった」
フレイルは続けて聞く。
「どこ経由で沖縄にいくの?」
ハルトは人差し指を立てて、こう言った。
「成田空港だ。東京に戻ろう」
バスに乗り、名古屋駅へ戻る。
景色に白黒に近かった色が、カラフルに見えた気がした。
新幹線に乗って東京へ辿り着く。
成田空港にもスムーズに行けた。
通勤ラッシュを避けているからとは言っても、やはり東京だ。
人がすし詰め状態になる時があり、大変息苦しい。
けれど、フレイルはそれを楽しむくらいには回復できていた。
ハルトが沖縄行きの航空機チケットを買ってきてくれた。
2時間後、航空機に乗り込む。
空の旅へと2人は出かけた。
雲海は、まるでどこまでも広がっているようで綺麗だった。
そして、その時は訪れる。
ある一点に、何か赤く光るものが見えた。
「なにあれ?」
フレイルが傍らで寝ているハルトを起こそうとした時、機体が激しく揺れた。
悲鳴
電灯の点滅
ブラックアウト
赤い光が、矢の如く迫りくる。
下から突き上げる彗星のような火の塊となりて。
3本の矢が次々に突き刺さる。
機体が燃える。
視界が火花を散らすようにチカチカした。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
機長がアナウンスをしようとするも、航空機が大破した。
3度に渡り、真下からの彗星の矢が突き刺さったからだ。
機械類が全て故障したようで意味をなさない。
徐々にスピードを上げて下へ下へと堕ちていく。
人々の悲鳴が聞こえる。
感じるG(重圧)もいつもの比ではない。
けれど、機長は諦めなかった。
なんとか機体を持たそうとしてハンドルを操作する。
しかし、現実は非情だった。
赤い火の塊が、機長室及び操作室を貫いて殺し尽くした。
機体は操作を失い、さらに加速して真っ逆さまに落ちていく。
海面に叩きつけられる直前、ハルトとフレイルはなんとか脱出した。
フレイルは自分とハルトの全身をなんとか魔法防壁で包んで防御していたのが命を救った。
けれど、航空機は海面上で爆発した。
激しく燃える。
その傍で、見下ろすような巨大な怪物がいた。
蠢く。
燃えて蠢く。
大百足がこちらを見ていた。
そして、その頭の上に乗っているであろう人物がこう言った。
「ハルト、裁定者ーーー空の旅は楽しかったか?
これからは、より素敵な催しを用意したんだ。どうか楽しんでおくれ」
そう、主催をするかのように。
ユーロだ。
ユーロがまるで天使ウラーのような耳元まで割れた壊れた笑いをしているのが、分かる。
「お前ーーー何してんだ!!」
ハルトが叫ぶ。
けれど、ユーロはこう言った。
「ハルトには何も言う権利はないよ」
「ああ!?」
「僕、私、我、わし……ああ、私だ。私は、妹エル……なんだったかな、とにかく妹を救いたいんだ。だから決めたんだ。人を殺戮すればいいとね」
一人称が定まっていない。
妹の名前も忘れているようだ。
それに、何かしらの禍々しい魔力はなんだ?
ハルトが眉間に皺を寄せる。
と、ユーロが大百足から降りてきた。
ユーロの右目が白く混濁している。
心なしか少し赤い光が見えた気がした。
左腕と違い、少し筋肉質の右腕に刻まれた何かの刻印が発する光と同じように明滅している。
そして、龍槍イグザス・アルメイバの先をハルトに突きつけてこう宣言した。
「ハルト、君に潜むある力を引き出すことで、私は神のおわす台座に近づける」




