月夜に吠える狼 闇に光る水晶
その日の夜は満月だった。
ユーロは首筋に刻まれた痣からの痛みを感じた。
横になっていたが、立ち上がる。
屋上からの眺めはいい。風も心地いい。
ーーー死んだか、帝王
それにしてもハルトが勝つとはな。
使い魔たる狼に監視カメラ的な役割をさせるでもなく、呪いのサブ的な効果で発動する感知のみに絞ったのは結果的によかった。
勘付かれる心配がない。
ユーロは龍戦士レイクが手を大きく振っているのを見て、ビルの屋上から飛び降りて着地する。
「レイク殿、ただいま帰還しました。
調査報告いたします」
「うむ……ご苦労。教えてくれ」
「12の異界の者たち、まずは我々から。
魔術王星からの参加 2名
あなたは神聖星も兼ねてらっしゃるのですか?」
「その通りだ」
「最終的には、敵対するかも……ですね。少し寂しいです」
「教えただろう、軍人たる者感情的になるな」
「申し訳ありません」
「まあーーー貴様の事情は理解しているつもりだ。あれから成長したな、今ではこんなに大きくなって……」
「その話は今は大丈夫ですよ! 話の腰を折って申し訳ございません、調査報告の続きを話しますね」
「素直じゃないな、君は」
くくくっとレイクが笑う。
「怨敵ハルトは裁定者である魔女フレイルと手を組み、
愛知で暴れている鬼雷法師は火龍の剣と手を組んだ模様です。『鬼界星』と『龍の羽衣界』……異次元存在が手を組んだのはかなり痛いかも知れません。
篝火百足世界出身の不死の毒蟲は地中を移動しているとのこと」
「また、神の器官なるものが3つ存在しているようです。
神の心臓、神の眼、そして神の脊髄。
これを宿している者がいるかも知れない。
神の眼や神の脊髄については少々勝手が違うかもですが。
余談ですが、永遠を司る者は使い魔がいるようです。その使い魔も参加者のようですよ」
「そして以下が敗退者です。薔薇の女王ジュリアス、天使ウラー、氷雪の帝王は敗退して息を引き取っております」
以上です、と締めくくると龍戦士レイクは腕組みをしてうーむと唸った。
「全体像が見えてきたな」
「十二星というのに、なぜ惑星の住人だけでなく異次元の存在がきているのか……という謎はございますが」
「それは確かに謎だ。しかし、そんなことよりもだ。神の器官3種の方が不気味ではないか?
神の眼、神の脊髄、神の心臓ーーーそして、永遠を司る者。おそらく、神の肉体。
神の肉体を誰かが宿していて、神の器官を集めようとしている。まるでーーー儀式のようではないか」
「その通りですねーーーあ、失礼レイク殿肩に虫が止まっておりますよ」
そう言って、目にも止まらぬ早さで一閃した。
どこかでぶつんと回線が切れる音がした。
「すまんな、虫は気づかんかった」
「耄碌するにはまだ早いお年ですよ、私と今後戦わねばならぬかもしれないのに」
「はははーーー何をいうか。俺はまだまだ現役だ。その時は死ぬ気でかかってこい」
「もちろんです、師匠」
握手を交わす。
そして、ユーロは天を仰ぎ見て呟いた。
魔女めーーーこの盤面を盗み見て何をするつもりだ。
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魔法界 学院内
「謎多き大戦かと思ったが、波長があったおかげでみえたな。後で回線を切られたが、12体を知れたのは大変大きい」
「その通りですね 学院長」
「そして特筆すべきは、神の器官3種と永遠を司る者『神の肉体』
これらを宿す者たちーーー興味深い」
学院長の表情はどこか笑うのではなく、憎悪を感じさせる。
けれど諦めの感じさせるような……。
「学院長?」
「すまない、少し過去を思い出しただけだ。気にするなマスクベル」
「お茶をお出ししようかと思ったのですが……」
「だから気にするなと言っている」
机の上に立ち、マスクベルの首元に人差し指をつける。
「今後、私を気遣ったことを言ったら殺す。フレイルにこのことを貴様から伝えても殺す。
分かったな?」
「も、申し訳ございません。エーニアス学院長」
「それで良い」
そうして、学院長は柔和に笑った。
瞳には怒りを込めたまま。
そのアンバランスさが、マスクベルには怖く感じていた。
ーーー学院長、あなたが前任者なのは分かっています。けれどなぜあなたはそこまで壊れたのですか?
その問いをしようとしても、それをした瞬間に殺されると思い、マスクベルは震えながら首肯した。




