生活
朝起きて鏡を見る。
薄いグレーの目。両目とも。
夢か?気のせいか?でも昨日はあんなに……。
しばらく鏡を睨んでみる。
瞬きをしても、目をこすっても変わらない。
「結局召喚は失敗ってやつか?」
僕は鏡から目を逸らす。
異世界に来て、知らない世界で暮らして、目の色までおかしくなった。
そろそろ頭もおかしくなりそうだ。
いや、なってるのか?分からない。
* * *
「もうすぐ満月ですね」
あれから一週間くらい経っただろうか。
今日もアダム先生の授業を受ける。
本職は神父か。でも先生としての彼の方が、今は接する機会が多い。
少しずつこの世界のことも分かってきた。
食事は飢えはしないが、質素なものだった。
大体は硬いパンに豆のスープ。たまに卵、ハム、そんなとこ。まぁここは修道院だ。贅沢は言えない。
でも孤児たちには悪くないか?
もうちょっと栄養があるもんを食べさせた方が良い。
とはいえ、最初はもっと、とんでもないものが出てくると思っていた。
スライムゼリーにキメラの肉、とかね。
でも、しばらく暮らしてて分かったよ。この世界に僕が想像していたようなモンスターはいない。
家畜はいる。馬や牛、鳥、見慣れた動物たちだ。
そもそも、人間の形だって僕たちの世界と同じ。
腕が三本ある人間もいなければ、耳が尖った種族も見たことがない。
そこは少し安心した。
この前提が変わると、重力とか、水とか、空気の比率だとか、そういう面倒な話になってくるだろ。
多分、魂が召喚される時には、似たような世界の魂を引っ張ってくるんだ。
だから僕は、ここでも酸素を吸って、水を飲んで、普通に生きていられる。
「酸素が必要なたんぱく質の塊として、今日も元気に生きています」って感じだ。
「ここは町はずれの教会ですからね、神から届く光が騎士団よりも弱いです」
アダム先生が黒板に文字を書きながら話す。
神から届く光。
どうやら、この世界では場所によって神の力に強弱があるらしい。
「満月の日なら月の神の力が強くなります。
エイジくんはその時になったらジェムに身分を登録しましょう」
この世界の人たちは、みんな神様を信じてる。
いや、本当に神様が存在するんだろう。
少なくとも、僕の常識では説明できない力が、この世界にはある。




