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5/13

病

騎士団があるのは、城の中の一角だったらしい。

城を抜けると、そのまま城下町へ出た。


賑わいを見せる町並みは、思っていたよりもずっと普通だった。


石造りの建物が並び、道には人が行き交っている。

露店からは食べ物の匂いが漂い、子供たちが走り回っている。


そうだな、映画なんかでよく見る、中世ヨーロッパをベースにした世界。

そう思ってもらえれば、大体合っている。


石畳の街並みをしばらく歩くと、町の外れに小さな教会があった。


礼拝堂があり、その奥にはおそらく神父たちが暮らしている居住スペース。

そして、今回案内されたのは、そのさらに奥にある小さな部屋だった。


寺子屋、とでも言えばいいのだろうか。

中には子供たちが数人いて、ちょうど授業の最中だった。


「先生にご用ですかー?」

「先生、これ誰ー?」


「静かにしなさい」


先生に叱られても、子供たちはどこか楽しそうだ。


教壇に立っていた男は、少し神経質そうな顔をしていた。

ただ、子供たちの様子を見る限り、嫌われているわけではないらしい。


「アダム神父、よろしいですか?」

「あぁ、はい」


アダムと呼ばれた男は、少し猫背気味の陰鬱そうな男だった。

黒い髪に青白い肌、身長は180くらいありそうだが、その猫背のために僕と同じくらいの背丈に見える。

年は30~40といったところだろうか。


アダム神父とフードの男は二言三言交わして、それからフードの男は城へ帰っていった。

見送りのために僕もなんとなく後を追いかける。


その時、突然教会の扉が開いて、年配の女性が入ってきたんだ。


「神父様……、大変です。お助けください……」


女性は震える手で、自分の顔に触れた。


「肌が……太陽が痛くて……」


そう言って女性は顔をかきむしると、肌がぽろぽろとはがれだす。


「私はもう助からないのですか?助けて……、助けてください……。

 痛い……肌が痛い、太陽が、太陽が痛いのです……」


また、顔を掻く。顔からさらに皮膚が剥がれ落ちていく。

やがて、その下から骨が覗いた。


僕は思わず息を呑んだ。

……いや。


僕は一応元、警察官だからね。

死体なら、それなりに見慣れている。


目の前の彼女だって、生きている人間というよりは、もうゾンビか何かに近い。

そう考えれば……まあ、なんとかなる。

僕は冷静さを保つことに成功した。


「えぇ、あなたに許しを与えましょう」


アダム神父が腰に差していた剣を抜き、女性の胸へ突き立てる。


そして、倒れた女性の目に――釘を打ち込んだ。


一切の迷いがない。

あまりにも手際がいい。


「いきなり、驚かせてしまいましたね」


ほんとにね!そう叫びたい気持ちをぐっと抑える。

返り血をあびたアダム神父が振り返る。


「この国はずっと、月狂いの病に侵されています。

 その病を治すには、消えてしまった月の神の魂を呼び戻すしかない、

 と教会の人間は皆信じています」


アダム神父はじっとこっちを見る。


「……でも、また、召喚は失敗したようですね」


目に釘を刺された死体は、灰になって消えた。


挿絵(By みてみん)

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