召喚
光の中で、夢を見た。
金の目の男と、赤い目をした女が逢瀬をしていた。
それ以外のことは、よくわからない。
男の顔も、女の顔も、はっきりとは思い出せない。
赤い目と、金色の目。
ただ、二人の目の色だけが、なんだか僕の脳裏に焼き付いたんだ。
二人は互いの姿を見つけると、嬉しそうに駆け寄っていく。
「私の太陽……」
そして、強く抱き合った。
その姿を見て、僕はなんとなく思った。
――あぁ、この二人は運命の相手なんだ。
次の瞬間だった。
金の目の男の姿が、ふっと消えた。
残された女は、一人だった。
それからずっと、女は泣き続けている。
「どうして、いなくなってしまったの……」
ぽろぽろと涙をこぼしながら、何度も何度も呟いている。
「会いたい……。
あなたに、会いたい……」
その声が、遠くなっていく。
光が、だんだんと強くなる。
そして――僕は、目を覚ました。
* * *
「……ここ、は……?」
ぼんやりと目を開ける。
夢の続きを見ているのかと思った。
目の前には、ひどく男女の像。
さっき夢で見た、あの二人だった。
金の目の男と、赤い目の女。
互いを見つめ合い、寄り添う二人の姿。
神様を模した像だ。
「……どこだ、ここ」
僕は思わず呟いた。
「召喚に成功したみたいです」
「……え?」
声のした方へ視線を向ける。
僕の周囲には、何人もの人間が立っていた。
全員、白いローブを身にまとっている。
そして、そのさらに奥。
僕から少し離れた場所には、一人だけ黒いローブを着た男が立っていた。
フードを深く被っているせいで、その顔は見えない。
僕はそこで、ようやく自分がどこにいるのかに気づいた。
床には、大きな魔法陣が描かれている。
その中央に、僕は立っていた。
魔法陣をぐるりと取り囲むように、十二本のろうそくが置かれている。
炎は揺らめき、薄暗い部屋を不気味に照らしていた。
「……何だこれ……」
まるで、黒魔術の儀式みたいだ。
そんなことを考えていると、白いローブの一人が僕を見て、ぽつりと言った。
「でも……色が……」
「金色じゃない」
別の男が答える。
「……あぁ。失敗だ」
その言葉に、周囲がざわめき始める。
「また失敗……」
「これで何度目だ?」
「仕方がない。捨てよう」
「捨てて」
「また、生贄を用意しないと……」
何を言っているのか、僕にはまるで理解できない。
けれど、一つだけ分かった。
僕は、歓迎されていない。
むしろ、失敗作として扱われている。
「ちょ、ちょっと待ってください!」
状況がわからないまま、僕は声を上げた。
「ここはどこなんですか?
あなたたちは誰なんですか?
それに、僕はいったい――」
「静かに」
低い声が響いた。
先ほどまで騒いでいた白いローブの男たちが、一斉に黙り込む。
声の主は、黒いローブの男だった。
どうやら、この場で一番立場が上なのは彼らしい。
黒いローブの男は、僕をじっと見つめる。
フードの奥にある顔は、やはり見えない。
「では、彼は教会へ捨てに行きましょう」
「……教会? いや、捨てるなよ、言葉が悪い」
聞き返す僕を無視して、男は続ける。
「失礼。今空きがありそうなのは町はずれの所ですかね。
君は教会で保護してもらうことにします。
そして、自由に生きると良いでしょう」
まるで、僕のことなどどうでもいいかのような言い方だった。
けれど、次に続いた言葉だけは、妙に引っかかった。
「あなたがこの地に未練を持つようになるころ――」
黒いローブの男が、静かに僕を見る。
「迎えに行きます」
その言葉を最後に、男は踵を返した。
白いローブの男たちも、それに続いていく。
僕はただ、その場に取り残された。




