太陽
カーテンを大きく開き、月の光を浴びる。
「証拠を見せよう。君はこんなことしても、月狂いにはならない」
ミカエラが自信満々に言い放ったわけだが。
「……あれ?」
満月と目が合う。
――見つけた。
そう、言われた気がした。
「うっ」
おかしい、体が、目の奥が熱い。
怒っている。月は、なぜだか強烈に怒ってる。
「うーーーっ……」
頭の奥が熱くなって、思考がまとまらない。
なんだこれ、頭がおかしくなりそうだ。
「……おかしいな」
ミカエラの声が、遠く聞こえる。
僕は胸を押さえてうずくまる。
だめだ、呼吸が正しく出来ない。
「仕方ない」
ミカエラが僕の前にしゃがみ込む。
その顔には、先ほどまでの優しい笑顔が張り付いている。
でも、恐ろしく冷たい目だ……。
「騎士団の力をもって、君を治療しても構わないかい?」
それが、騎士団の人間だけに与えられた特権だということを。
僕は、まだ知らなかった。
治療できるのなら、何故すべての人は救われないのか。
何故先生は子供を殺さなければならなかったのか。
「あぁ……」
僕は、この世界の矛盾に翻弄される人の心を思い、
彼の言葉に了承しながら、涙した。
「苦しいですか?泣かないで。
俺がすぐに楽にしてあげます」
口の中に熱い何かを流し込まれる。
舌をねじ込まれ、唇を吸われ、それが彼の唾液だということに気が付いたのは、
しばらくたってからだった。
喉が焼けるようだった。
そのまま、何度も深く探るようにキスされる。
それを拒絶する術はない。
身体の奥に何かが入り込んでくるような感覚だけがあった。
僕はそのまま意識を失い、目が覚めた時、夜は終わっていた。
窓から、朝の光が差し込んでいる。
「あ……」
隣にはミカエラがいた。一晩中側にいてくれたらしい。
「おはようございます、具合はどうですか?
昨日は俺の早とちりで、……すみません。
でもなんでだろう……、不思議だな。あなたは確かに……」
彼は申し訳なさそうに言う。
そして目が合うと、小さく微笑んだ。やめて、あまりにも顔が良い。
「ん?」
赤い。昨日の夜とは違う。
光に照らされたミカエラの目は、左だけ赤く輝いていた。
考えたらそういう物かもしれない。
だって僕は夜だけ、色が変わる。
それなら、太陽は、太陽が出てる時だけ色が変わるんだろう。
「私の……太陽……」
その言葉が、突然、頭の中に浮かんだ。
それは、僕が夢で見た、女のセリフだった。
――私の、太陽。
僕は、もう一度ミカエラを見る。
朝の光を受けた左目が、赤く輝いていた。
まるで、太陽そのもののように。




