授業
「今日の授業ではジェムの力についてやりましょうか」
神の掟に従ったジェムには、力が溜まる。
そして、その力を借りることができるらしい。
つまり、そうだな。
魔法みたいなものってことだ。
「神の奇跡と呼ばれています。皆さんは見たことがありますか?
その力を使うと、ジェムは力を失い、色が淡くなります」
僕のジェムは元々昼間は透明だ。
今どうなってるかは、よくわからない。
「どんな力が使えるか、まぁ私たちはあまり知りませんね。
騎士団の方が秘匿していますから。
それにジェムの力を使うと、騎士団の方に記録される。
神の奇跡を犯罪に使ってはいけませんからね」
ただ、奇跡が起きたら神に感謝しましょう、という言葉で授業は締めくくられた。
* * *
「ねぇ、今日の授業の質問。神ってどっちの?
二人いるでしょ、太陽と月」
授業が終わって、僕と先生は二人きりで部屋に籠る。
今後の計画を決めるためだ。
「そうですね、太陽の奇跡だったら太陽の神。
月の奇跡だったら月の神といったところでしょうか」
「奇跡の種類が違うんだ。
で、先生は知ってるんでしょ、どんな力があるか」
先生は「あぁ、まぁ」と曖昧に答えると、周りを見回した。
誰もいないことを確認してから、声を落として言葉を続ける。
「太陽には月狂いを治療する力がありますね。
でもこれは善行ではないです。月狂いは殺すのが善い行いですから。
ただ騎士団の人間は別ですね。
管理は彼らがやっているから、どんなことでも揉み消すのは簡単だ」
なるほどね。
「月の神には、相手を月狂いにする力があります。
これは簡単に悪用出来ますね。月狂いは殺しも罪にはならない」
「先生、治療が出来るなら……」
あの子を治せば良かったんじゃない?
いや、そんな簡単な話じゃないことくらい、僕にもわかっている。
それでも、口に出さずにはいられなかった。
「私では無理です。奇跡が起きるほど、ジェムに力は貯められない。
一定溜まると、騎士団に力を返さなければならない。
それで報酬ももらえますしね。まぁ、神父としてのお給料です」
この国は騎士団がすべてを支配しているっていうわけだ。
「騎士団、というかですね。まぁ平民は騎士にはなれません。
あの人たちは特権階級です。
そして、この国のトップは――」
「黒いフードの人?」
「そうです。彼は太陽の神をその身に宿しているのですから」
「太陽が一番偉いなら、僕だって同等?
じゃあ、僕のやることを揉み消すのも簡単?」
僕はこの世界の人間でもなければ、生きてもいないっぽいし。
少し考えてから、僕は続ける。
「でも、今の話を聞いてると、魔法の力でなんとかされちゃいそうだ。
奇跡って、そういうもんでしょ?」
先生はふぅっと息を吐く。
眉間にしわが寄って、悩ましい顔だ。
「この前は……私も少し、どうかしていたな。参っていた。
気持ちが、弱くなって、言わなくてもいいことを言ってしまった」
先生は僕の頭を優しく撫でる。
僕は驚いて先生を見る。
ふと目が合って、先生は少し照れたように、雑に頭をポンポンとして、手は離れていった。
その仕草は父親のようで、
僕が、ずっと欲してたものだ。
「私はこの世界を愛しています。
壊れてしまったら、愛する家族も巻き込むことになってしまう。
それはよくないことです」
「大事なんだね、家族」
消えてしまった一人。
残された、二人。
「ねぇ、何か手伝おうか?」
なんでも言ってよ。
家族言えないことでもさ。
「そう……、手伝い……、手伝いか。
それなら仕事を手伝ってほしい」
「仕事?」
「月狂いの討伐依頼だ」
あぁ、それは、願ってもないことだ。




