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第34話 獅子の憂鬱と逆襲



 鋼都バルガンの朝は、いつだって活気に満ちている。

 燃え盛る溶鉱炉の熱気、ドワーフたちが鉄を打つ重厚な鎚音、そして、赤の国の軍人たちが修練場で流す熱い汗。

 その熱気の中心には、常に一人の女傑がいた。

 赤の国使節団副団長、タナカ・マチ。彼女の豪快な笑い声は、バルガンの朝の目覚まし時計代わりと言っても過言ではない。


 マチの肉体は、赤の国の過酷な環境と絶え間ない鍛錬によって磨き上げられた、まさに戦士の結晶である。

 隆起する上腕二頭筋、雄々しくも美しい広背筋、そして見事に割れた褐色のシックスパック。その肉体美は国中の軍人たちから畏敬の念を集めている。

 しかし、その完璧な筋肉の鎧を手に入れた代償なのか、彼女の胸元は驚くほどに平坦――身も蓋もない言い方をすれば、圧倒的な『貧乳』であった。

 普段の彼女は「戦場に脂肪など邪魔なだけだ!」と豪語し、そのフラットな胸を誇りにすら思っている素振りを見せていたのだが……。


 ――今日の王城は、どこか様子がおかしかった。


「……はぁ」


 王城の大食堂。

 いつもなら山盛りのオーク肉のステーキを朝から平らげ、周囲の兵士の背中をバンバンと叩き飛ばして回るはずのマチが、今日はフォークで小さな葉物野菜のサラダを力なくつつきながら、この世の終わりのような深いため息を吐いていた。

 燃えるような真紅の短髪は心なしかパサついて見え、トレードマークである肉食獣の不敵な笑みは完全に消え失せている。その瞳には、かつてないほどの哀愁と悲愴感が漂っていた。


「……データ異常。マチ副団長のバイタルサインが、平時の十五パーセントまで低下しています。……いえ、それどころか彼女を構成する『覇気』というパラメーターが完全にゼロ、いやマイナスに振り切れています」


 その様子を少し離れた席から観察していたのは、銀縁メガネの戦術参謀、コアラだった。

 彼女の手元の魔力データファイルには、朝からマチの異常行動がびっしりと記録されていた。

『朝風呂で軍歌を歌わない』

『すれ違った新兵にプロレス技を掛けない』

『鈴木ケン殿の寝室のドアノブを破壊して侵入しようとしない』

 これは、赤の国の軍部崩壊にも繋がりかねない、由々しき異常事態である。


「……どうしたというのでしょうか。まさか、何かの未知のウイルス? いえ、あのゴリ……もとい、副団長の強靭な免疫系は、魔獣の毒すら三日で完全分解するはず」


 コアラは、冷静沈着な参謀としての顔の裏で、激しい焦りと動揺を感じていた。

 スラムで孤児として飢えと暴力の中で死にかけていた自分を拾い、ドンジャラと喧嘩の基礎を叩き込み、今日まで人間らしく育ててくれた大恩人。それがマチだ。

 口では「発情ゴリラ」などと毒づいているが、コアラにとってマチは母親代わりであり、絶対に超えられない壁であり、誰よりも尊敬する存在なのだ。


(……なんとかして、元気を出してもらわなければ。私のあらゆる戦術を駆使して、副団長の機嫌を『上方修正』します)


 コアラは意を決して立ち上がり、厨房からとあるものを持ってきた。

 赤の国の特産品である「火竜のドラゴン・ペッパー」を致死量すれすれまでたっぷり使った、超激辛の特製オーク・ミートパイだ。マチの大好物であり、これを食べればいつも口から火を吹きながら「ガッハッハ! 効くぜェ!」と大笑いするはずだった。


「……マチ副団長。朝食が進んでいないようですね。貴女の好物を用意しました。これを食べて、いつもの暑苦しい……いえ、覇気のある声を出してください」

 コアラは、努めて無表情を装いながら、マグマのように赤いミートパイを差し出した。


「……ん? ああ、コアラか。気を遣わせて悪いな、サンキュー……」

 マチは、力なくミートパイを手に取った。

 しかし、一口かじっただけで、再び地を這うような大きいため息をついた。


「……はぁ。私って、やっぱりガサツで、筋肉ばっかりで……ちっとも『女らしく』ないよな……」


「なっ……!?」

 コアラのメガネが、驚愕でカチャリとズレた。

 激辛ミートパイを食べたマチが、火を吹くどころか、まるで悲恋に悩む深窓の乙女のような、か弱く湿っぽい声を出したのだ。

 コアラの頭の中のスーパーコンピュータが、エラー音を立てて完全にフリーズした。


(ど、どうすれば……! 私のデータベースには、こんな『しおらしいマチ副団長』の対処法など一切登録されていません!)


 コアラは慌てて、自らが道化を演じるという、彼女の人生においてかつてない奥の手に出た。

「あ、あの! 副団長、見てください! 私、メガネのレンズを右と左、間違えて入れてしまいました! アハハ、戦術参謀のくせに計算ミスです、滑稽でしょう!?」

 コアラが、わざとメガネをずらし、寄り目にして変顔のようなものを作ってみせる。スラム時代からの付き合いであるマチでさえ見たことのない、涙ぐましいコアラの努力だ。


 しかし。

「……はぁ。メガネ……いいよな、知的で、ミステリアスな感じで。……私なんか、脳みそまで筋肉だと思われてるんだ。色気なんて、このガチガチの腹筋の溝に落ちた埃ほども無いんだよ……」

 マチは、コアラの捨て身の変顔すらも極端にネガティブに受け取り、さらにどんよりと沈み込んでしまった。

 完全に悪循環である。


「……ダメです。私の手に負えません」

 コアラは自身の無力さを悟り、急いで「彼女」の元へ向かうことにした。


     * * *


 数十分後。

 王城に併設された、広大な武の修練場。

 朝の剣道の稽古が始まろうとしていた。


「……マチ叔母様が、元気が無い? あの戦闘狂バトルジャンキーがですか?」

 竹刀の手入れをしていた第一王女タナカ・サクラは、息を切らして駆け込んできたコアラからの報告を受け、綺麗な柳眉をひそめた。


「ええ。物理的な疲労や外傷、毒物の反応は一切ありません。完全に精神的な問題メンタルエラーです。私の慰めも、戦術的アプローチも全く効果がありませんでした」

「あの叔母様が? にわかには信じられませんね。どうせまた、ケン殿に対する欲求不満か何かでしょう。夜な夜な彼を地下室に引きずり込んでは、色んな意味で激しく打っているというのに、まだ足りないのですか」


 サクラは呆れたように冷たく言い放ちながら、道場の中央に視線を向けた。

 そこには、サトシ国王と向かい合い、竹刀を構えるマチの姿があった。

 しかし。


「どうしたマチ!! 踏み込みが甘いぞ!! 剣先がブレている!! 貴様の剣はそんなに軽かったか!!」

 サトシの怒号が道場に響き渡る。


 バシィィンッ!

「あいたっ……。ごめん、兄貴……。なんか、手首に力が入らなくて……はぁ……」


 コロン、と。

 マチの手から竹刀が滑り落ちた。

 普段なら、サトシの岩砕きのような重い一撃にも真っ向から打ち合い、道場を揺るがすほどの気合いを上げる彼女が、今日はあっさりと小手を打たれ、武器を手放してしまったのだ。


「……マチ。お前、本当にどうしたのだ? どこか具合でも悪いのか? 魔獣の呪いでも受けたのか!?」

 武術において一切の妥協を許さないサトシでさえ、妹のあまりの不調に怒りを忘れ、本気で心配そうな顔になって歩み寄った。


「いや、呪いとかじゃないんだ……。ちょっと、休むわ……」

 マチはトボトボと、まるで迷子になった子犬のように道場の隅へ歩いていき、壁際で小さく膝を抱えて丸くなってしまった。

 その巨大な背中には、目に見えるほどのどす黒い「哀愁オーラ」が立ち込めている。


 その異様な光景を見て、サクラの表情も深刻なものに変わった。

「……コアラ。貴女の言う通りですね。これは完全に異常事態です。あの発情……いえ、あの勇敢な叔母様が、剣を握って気合いを入れないなんて……五百年の赤の国の歴史上、最大の国家危機かもしれません」


「サクラ。ここは私たちが、彼女の心のバグを直接デバッグ(原因究明)するしかありません。サトシ王の単細胞な励ましでは逆効果です」

「ええ。行きましょう」


 サクラとコアラは竹刀を置き、道場の隅で膝を抱えるマチの前に正座した。

 二人の顔には、普段の軽口を叩き合う余裕はない。赤の国の軍を支える重要な柱であり、何より自分たちにとって大切な家族である彼女を救うため、真剣な眼差しを向けていた。


「……マチ叔母様」

 サクラが、静かに、しかし力強く声をかけた。

「私たちに、隠し事は無しです。一体、何があったのですか? もしや、青の国の残党が呪術でも仕掛けてきたのですか?」


「サクラ……コアラ……」

 マチは、二人の真剣な顔を見て、少しだけ目を潤ませた。


「副団長。貴女は私にとって、母親であり、師匠です。貴女が塞ぎ込んでいると、私の戦術データに深刻なエラーが生じ、国の防衛システムに支障をきたします。お願いですから、一人で抱え込まず、理由を話してください」

 コアラも、メガネの奥の瞳に珍しく感情を乗せて訴えかけた。


 二人の本気の心配と、温かい眼差しに触れ、マチはついに、重い口を開いた。


「……あのな。私……フラれたかもしれないんだ」


「「……はい?」」

 サクラとコアラの声が、見事にハモった。

 呪いでも謀略でもなく、恋バナ。予想外の角度からの被弾に、二人の思考が数秒間停止する。


「フラれたって……。相手は、言うまでもありませんが、あの鈴木ケン殿ですか?」

 サクラが訝しげに尋ねる。


「ああ……。私、あいつのことが本気で好きになっちまって、毎晩のように地下室で猛烈にアタックしてたじゃないか」

「アタック(暴行・拉致・監禁)ですね。事実上の夜這いです」

 コアラが冷静かつ正確に訂正する。


「だけど……私みたいなガサツな筋肉女は、やっぱりただの『都合のいいプロレス相手』としか思われてなかったみたいなんだよ……」

 マチは、自分の平坦な胸元をギュッと抱きしめ、ぽつりと呟いた。


「……ケン殿が、直接そう言ったのですか? あの男、女性の容姿をとやかく言うほどデリカシーのない男には見えませんでしたが」

「いや、ケンから直接聞いたわけじゃない。……昨日、エミとエマに教えてもらったんだ」


 マチの口から、思いがけない二人の名前が出た。

 財務大臣ミツルの娘であり、つい数日前にケンをストーキングした結果、マチによって強制的に剣道の朝練に参加させられた、あの双子である。


「エミとエマが、ですか?」


「ああ。あの子たちが、こっそりケンの好みのタイプをリサーチしてくれたらしくてな。……そしたら、ケンは……ケンはな……」

 マチの目から、ポロリと大粒の涙がこぼれ落ちた。


「ケンは、重度の『巨乳好き』なんだってさ……!!」


「「…………」」

 サクラとコアラは、何も言えなかった。


「おまけに! ケンは『女はやっぱり色白で、柔らかくて、お淑やかで、守ってあげたくなるような子が最高だな。間違っても、褐色肌でシックスパックが割れてて、胸板が俺より厚い装甲板みたいなメスゴリラは絶対に無理だわー』って……一人で部屋で呟いてるのを、エミとエマが聞いたって言うんだよ!!」


 マチは、床をバンバンと叩きながら号泣した。

「私……いくらドンジャラで絶頂してアピールしても、結局はただの筋肉ダルマなんだ! 私のこの胸じゃ……ケンの理想のおっぱいには、一生勝てないんだよォォォッ!! 青の国のサミーみたいな、あんなスイカみたいな胸、私には作れねえよォォ!!」


 自身の最大のコンプレックスである「筋肉質ゆえの貧乳」を的確にえぐられ、マチは完全に乙女の顔になって絶望の淵に沈んでいた。


「…………」

「…………」


 マチの涙ながらの、あまりにも生々しいコンプレックスの告白を聞いて。

 サクラとコアラの間に、十秒近い、絶対的な沈黙が流れた。


 そして。

「……はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…………」

 二人は、赤の国の五百年の歴史上、最も深く、最も長い溜息を、同時に吐き出した。


「な、なんだよお前ら……。人が真剣に、胸のサイズで悩んでるのに……」

 マチが涙目で不満そうに口を尖らせる。


「……マチ叔母様。貴女は、戦場での勘は野生の獣のように鋭いのに、なぜこういうことになると単細胞のプランクトン以下になるのですか」

 サクラが、親指でこめかみを押さえながら、酷く冷めた声で言った。

「よく考えてみてください。あの鈴木ケンという四十歳の元・倉庫作業員が、そんなデリケートで乙女チックな『好みのタイプ』などというものを、一人で部屋でブツブツと独り言で呟くような男だと思いますか? あの男の脳内は、常に九割が『ドンジャラの牌の在庫管理』と『疲労』で占められています。女性の胸のサイズなどというパラメータを気にする情緒は、物流倉庫の奥底に置き忘れてきているはずです」


「……データ照合、完了しました」

 コアラが、手元の魔力端末を素早く操作し、絶対零度の冷ややかな声で告げた。

「完全に、双子のフェイクニュースですね」


「う、嘘ォ!?」

 マチがガバッと顔を上げる。


「ええ。エミとエマは、先日貴女とサトシ王によって、強制的に剣道のシゴキに参加させられました。……私のデータによれば、頭脳労働専門だった二人は慣れない激しい運動のせいで、現在『全身の筋肉痛』が1週間も引かず、大好きなドンジャラすら牌を握れなくて打てないほど苦しんでいるそうです」


「つまり……」

 サクラが、氷のような、しかし獰猛な微笑を浮かべて引き継ぐ。

「これは、自分たちを筋肉痛地獄に陥れたマチ叔母様に対する、頭脳派の双子なりの『仕返し(悪戯)』ですよ。叔母様の最大の弱点かつコンプレックスが『胸のサイズ』と『ケン殿からの評価』であることを正確に突き、ピンポイントで精神攻撃デバフを仕掛けてきたのです」


「……なっ」


 マチの瞳孔が、カッと限界まで見開かれた。

 悲壮感と涙に濡れていた顔から、みるみるうちに哀愁が消え去り、代わりに……ドス黒い、そして赤々と燃え盛る『怒りの闘気オーラ』が、ゴゴゴゴゴ……と火山のように噴き上がり始めた。


「……あの、クソガキども……。純情な大人の、デリケートなコンプレックスを弄びやがって……!」


 メキィッ! バキィッ!!

 マチが立ち上がりながら強く握りしめた拳から、骨の鳴る恐ろしい音が道場に響き渡った。彼女の周囲の空気が、熱を帯びて陽炎のように揺らめいている。


「……お分かりいただけましたか、副団長」

「ああ……。サクラ、コアラ、すまなかったな、無駄な心配かけて。私、ちょっと……あの子たちに『教育的指導』に行ってくるわ」


 マチの背中には、もはや乙女の哀愁は欠片もない。

 あるのは、赤の国最強の戦士としての、そして「胸のサイズを弄られた女」としての、圧倒的で理不尽な殺気だけだった。


「……双子たちのご冥福を、心よりお祈り申し上げます」

 サクラが、小さく十字を切った。コアラも無言で黙祷を捧げた。


     * * *


「「ひぃぃぃぃぃぃぃっ!! ごめんなさぁぁぁい!! 私たちが嘘つきましたぁぁ!!」」


 その日の午後。

 王城の広大な中庭には、エミとエマの世にも恐ろしい悲鳴が響き渡っていた。


「アハハハハ!! 筋肉痛でドンジャラが打てない? 上等だ! なら筋肉痛を感じなくなるまで、徹底的に新しい筋肉を破壊して再生してやるよォ!!」


 完全復活を遂げたマチが、鬼神のような形相で双子を追い回していた。

 ドンジャラ卓での勝負ではない。マチが用意したのは、「地獄のスクワット二千回」「巨大な丸太を背負ってのウサギ跳びで城外周三周」「千本素振り(丸太で)」という、完全なる『鬼の肉体破壊メニュー』であった。


「ま、マチ叔母様、あれはほんの冗談で……! ケンお兄さんが本当に言ってたわけじゃなくて……! むしろお兄さん、マチ叔母様のアブドミナル・アンド・サイ(腹筋と太腿)の仕上がりを褒めてましたからぁ!!」

「嘘です! 嘘つきましたァ!! 助けてパパァ!! ミツルパパァ!!」


「問答無用ォ!! 私の胸をまな板と呼んだ大罪は重いぜ!! ほら、足が止まってるぞ!! 泣け! 叫べ! そして筋肉を喜ばせろォ!!」

 マチの容赦ないシゴキに、双子の体力と精神力は完全にゼロになり、最終的には芝生の上で完全に魂が抜けたように、白目を剥いて倒れ伏した。口からは一筋の泡が吹いている。


 その様子を遠巻きに見ていたケンは、清掃用の箒を持ったまま、呆れたようにため息をついた。

「……またあいつら、無茶なことやってんな。双子の奴ら、今度は一体何やらかしたんだ? 筋肉痛が治ってないって言ってたのに」

 自身の偽の性癖の噂が原因だとは知る由もないケンにとっては、ただの「赤の国のいつもの暑苦しい日常風景」にしか見えなかった。


 しかし。

 鬼の修行を終え、スッキリとした顔で汗を拭っていたマチが、不意にこちらを見ているケンに気づいた。

 次の瞬間、マチの顔に、いつもの、いや、いつも以上に凶悪で肉食獣のような笑みが浮かんだ。


「……おっと」

 ケンは野生の勘で凄まじい危機感を覚え、そそくさとその場を立ち去ろうとしたが、遅かった。


「見つけたぜェ、マイハニィィィィッ!!」

 マチが、弾丸のような速度で一瞬で距離を詰め、ケンの背後から両腕をガッチリとホールドした。鋼鉄の万力のようなホールドだ。


「おいバカ! 放せ! なんで俺が捕まるんだよ!! 掃除の途中だぞ!!」

「アハハハ! 今日は昼間っから変に悩んだせいで、エネルギーを持て余しててな! 双子を物理的にシゴいたら、今度は私のこの燃え上がる『恋心』を、アンタにシゴいてもらいたくなっちまったんだよ!」


 マチは、もがくケンを俵のように軽々と肩に担ぎ上げた。

「さあケン! 私の胸が平坦だろうが関係ねえ! 今日は私の『可憐で柔らかいところ』を、アンタの勇者牌(白牌)でたっぷり底の底まで堪能させてやるからなァ!! 地下室へ直行だァ!!」


「なんでそうなるんだよ!? 誰か助けてくれェェェェェッ!! サトシ王!! サクラ!!」


 ケンの悲痛な叫び声は、完全復活を果たしたマチの豪快な高笑いに掻き消され、王城の深い深い地下室へと吸い込まれていった。

 かくして、タナカ・マチの憂鬱な一日は、双子への無慈悲な倍返しと、ケンとの『愛のドンジャラ(強制連行)』による絶頂の嵐で、いつも通り騒がしく、そして極めて暑苦しく幕を閉じたのであった。

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