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第2話 歪な平和と神聖なる遊戯


「…………は?」

風が吹き抜け、廃墟の瓦礫がカラカラと音を立てた。

ケンは自分の耳を疑った。今、この可憐なエルフの口から、とんでもなく場違いな単語が飛び出さなかったか?

「ごめん、もう一回言ってくれる? 殺し合いの禁止はわかる。でも、その次は……」

「ドンジャラよ。国家間の領土交渉も、市場でのリンゴの売買も、喧嘩の仲裁も、今のこの世界ではすべてドンジャラの勝敗で決まるわ」

「ドンジャラって……あの、牌を引いて、同じ色を3つずつ揃える、子供が正月にやるあのゲームか!?」

「子供のゲームとはなんだ! 神聖なる天律の遊戯だぞ!」

フェニクスが怒って翼を羽ばたかせると、熱風がケンの頬を叩いた。

「いやいやいや、おかしいだろ! 魔王と殺し合いをして勝った後で、なんでいきなり決着の方法がドンジャラになるんだよ!」

「先代の裁定者様が、そう望んだからよ」

大真面目な顔で答えるティアを見て、ケンは頭を抱えた。

(14歳の少年が、魔王と殺し合いをして……平和を願って定めたルールが『ドンジャラ』?)

あまりにもシュールで、ふざけているとしか思えない。だが、二度と血を流したくないと願った少年の、あまりにも切実で子供らしい願いの産物だと考えれば、胸の奥がチクりと痛んだ。

「お前がアルカナに呼ばれたということは、つまりそういうことだ」

フェニクスが、ケンの耳元で宣告するように言った。

「天律戦。それは500年に一度、世界のルールを新しく決めるための戦いだ。お前はこれから5年間の準備期間の後、他国の代表と卓を囲まなければならない」

「俺が、ドンジャラを……?」

「そうだ。もしお前が負ければ、勝った国が次の500年の世界のルールを決める。もし魔王の末裔が支配する紫の国が勝てば、彼らは再び世界を『力と殺し合い』の時代に戻すだろうな」

ケンの背筋に冷たい汗が伝った。

自分の肩に、突然「世界の命運」という見えない超絶な重量の荷物が降ってきたのがわかった。物流倉庫のパレットの比ではない。

「待てよ……俺、ドンジャラのルールなんてうろ覚えだぞ。役の作り方すら怪しい。特技といえば、親戚の子供相手にやる『ババ抜き』で負けたことがないくらいだ」

「ばばぬき? 何だそれは。新しい魔法陣か?」

「いや、トランプの……って、そんなことはどうでもいい! とにかく俺には無理だ! 人違いだろ!」

悲鳴に近い声を上げるケンに、ティアは静かに歩み寄り、その冷えた両手をそっと握りしめた。

エルフの少女の琥珀色の瞳には、一切の迷いがなかった。

「大丈夫。私たちが、あなたを最強の打ち手にするわ。田中様が命懸けで残してくれた、この平和な世界を壊させないために」

14歳の少年が血まみれになって勝ち取った、ドンジャラという歪な平和。

39歳の、何者にもなれなかった男。

そして、5年後に迫る世界の命運を懸けた遊戯。

「マジかよ……」

鈴木ケンの第二の人生は、絶望的なミスマッチと共に、強制的にスタートを切ったのだった。

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