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ALC0000⇔巨大なおねいさんは好きですか

「庵ぃ……。堀沢ぁ……。玲子ぉ……。ホントどこに行ったのよぅ……。グスン……」


 もう一周街中を回ってから最初に降り立った魔法陣の近くまで戻ってきた私。

 流石にもう人見知りするとか言っていられないので、道行く人に庵達のことを聞いて回ったが、目撃情報はゼロ。


「私のライフももうゼロよ……。みんなの顔でも拝まなきゃ、やってられないっつうのマジで……」


 ベンチに座り溜息を吐いた瞬間、とうとうアレ(・・)が始まってしまいました。


「!? 空が……!!」


 上空を見上げるとそこに浮かんでいる雲の動きがありえないくらいの速さで動いているのが見える。

 そして徐々に一箇所に集まったそれは、巨大な人の形に変化していった。


「キタ……! グズグズしてたら本当にデスゲームの開催宣言が始まっちゃった……! どうしようどうしようどうしよう……!!」


 そして巨大な人型の雲から、この世の物とは思えない形相の悪のGM(ゲームマスター)が――。


『ようこそ~♪ 《Alchemist Offline》へ~♪』


 …………はい?


『ええと~、あった、これこれ。あー……サナエ・クジハラさん、かな。……あ、いたいた。やっほー』


 ……………………はい?


『本日は《Alchemist Online》のオフラインバージョンを開始頂き、真に真に、ま・こ・と・に! ありがとうございまーす!』


 ……うん。なんかテンションアゲアゲな巨大なお姉さん出てきた。

 ……ん? ていうか『オフラインバージョン』て、なに?


『これからサナエさんには由緒正しき錬金術師として、この異界の地《グランドレグザイム》にて! 様々な冒険者との出会いや別れ! さらには恋愛やらチョメチョメやらを楽しみながら! 通常では味わえないほどの刺激的な毎日を過ごしていただきまーす!』


「…………」


『そして一年間の異世界生活を満喫した後には! この世界に混沌をもたらす厄災ともいえる大魔王を討つべく! 仲間達と共に魔王城に攻め入ってもらいまーす!』


「…………」


『あれ、反応が鈍いぞー! ……で、えーとなんだっけ。あ、そうそう。そしてー、見事大魔王を打ち倒しー、世界に平和をもたらしてもらってー、えー、サナエさんはこの世界の救世主としてー崇められー奉られてー、もらいまーす!」


「…………」


『ええと、なお、この《Alchemist Offline》のセーブデータは、全て《Alchemist Online》と共通となっておりますので、お気を付け下さーい!』


「…………」


『あれ、寝てる? 反応が全くないけど……まあいいや。 ではでは! 《Alchemist Offline》の世界を十分に楽しんでチョンマゲ! ……あ、ちなみに次に会うのは一年後だから宜しくねー! じゃ、そういうわけで! See you again!』


 そう叫んだ巨大なお姉さんは大きな雲に姿が戻り、空には平穏が戻る。

 周りを眺めても、道行く人々は何事もなかったかのように街を練り歩いています。


「…………」


 さっきから私の口は開いたまま。

 涎が垂れても、閉じられる事はありません。


「…………どういうことなの」


 アレはどう見ても悪のGM(ゲームマスター)という感じではなかった。

 どちらかと言えばアホのビッチ女という感じ。

 玲子とは違った、また別のビッチ臭がプンプンと漂っている感じ。

 ……そんな事はどうでも良い。


「ちょっと待って……。一個ずつ……一個ずつ整理させて……」


 私は頭を抱えながら屈み込む。

 落ち着け、落ち着くのよ早苗。

 もう一度、さっきのビッチ女(大)の言った事を思い出すのよ。

 

 まず最初に、あのビッチ女……私だけを(・・・・)名指ししていた(・・・・・・・)わよね……。

 ここには私以外にもめっちゃ人いるのに何でだろう……。

 だってこのゲームって、世界中で何万人もやっているオンラインゲームなんでしょう?

 そこに入り込んでしまったのに、デスゲーム開始の合図が私だけ名指しで行われるのはおかしいでしょ、どう考えても。

 ……ていうか、全然デスゲーム開始の合図じゃ無かったけど。


 次にあの女は『ようこそ《Alchemist Offline》へ』って言ってたわよね。

 オフラインって言えば、アレでしょう?

 オンラインモードをやりたくない人とか、そもそも通信環境が整っていない人向けに作られたゲームのことでしょう?

 いわば『一人用のゲーム』のはず――。

 自分以外の周りは全てNPCで、基本的にはクリア目標が設定されているってやつ。


「……うん? でもさっき確か一年間の異世界生活が何たらかんたらとか……?」


 そして魔王城に攻め入って大魔王を倒して来いとか……。

 じゃあ、それがクリア目標ってことか。

 ……でも、なんかおかしい。

 ビッチ女(大)は大魔王を倒したらログアウトできるって言わなかったよね、一言も。


「んん……? あ、いや、そもそもここはオフラインの世界なんだっけ? ……んん? ならおかしいじゃない。ログインやらログアウトっていうのはオンラインで使う用語でしょう? ……んん???」


 ……だんだん混乱してきました。

 さっきのセーブデータ云々の話から察しても、こことは違う《Alchemist Online》の世界もあるみたいだし……。

 そっちだったら意味が通じるんだけど――。


「……あれ? まさか……」


 私は記憶を遡る。

 確かあのインターネットカフェで庵からゲームコントローラーを受け取った後、画面に《!CAUTION!》の赤い文字がでかでかと映し出されていた。

 そしてパソコン画面から照射された眩い閃光が私達を包み込んで、でも私は気を失いそうになるのをぐっと堪えて――。

 で、三人に視線を向けたら、もうみんな気を失っているみたいで――。


「……じゃあ、あの時差が原因……? 私が秘密の新陰流忍術を使って、気を失うのを堪えたから……?」


 ということは、飛ばされる瞬間は『オンライン状態』になっていて。

 飛ばされた後に何かの拍子に私だけ『オフライン状態』になっちゃったってこと?

 あのネットカフェの店長、私達があまりにもギャハギャハうるさいから、意地悪でその瞬間にルーターを切ったとか?


「マジで……? じゃあ、庵達は……?」


 ――確定したわけじゃない。

 確定したわけじゃ無いけれど。


 これだけ探しても庵達が見付からないのと、さっきのビッチ女の言った事が正しいとするならば――。



「私だけ本当の意味での脱出(ログアウト)不能の異世界に来ちゃったってことじゃん、これ……」



 しかも錬金術師としては『欠陥品』の烙印まで押されて?



 え?? どうすんのよ、これ……??




2022.5.27 改稿

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