ALC0000⇔私を疫病神扱いしないでください
「……グスン」
完全に意気消沈。もう駄目。やる気全然出ない……。
これだから説明書無しでゲームを始めるのは嫌なのよ……。
それが最初から分かっていれば『LUC』に70、『HP』に15、『VIT』に15とかにしてボーナスポイントを振り分けてたのにぃ……。
「サナエが何を悲しんでいるのか全然分らないのだけれど……。まあ『ALC』は上がったのだから、試しに何か錬金してみたらどう?」
レミルが苦笑しながら私にそう提案する。
「そうねぇ……。あ、ちょうど良いわ。そこの花瓶の水を錬金して『聖水』にしてみなさいな。『ALC』が1でも出来る初歩中の初歩の錬金だから、まず失敗なんてしないだろうし」
花瓶から花だけ取り出したレミルは、それを私の目の前に置く。
……うん。この『水』を『聖水』に、だと……?
やべぇ、ちょっとそれっぽくなってきたじゃんこれ。
「さっき私がやったみたいに、その両腕の腕輪に《錬力》を込めてみて?」
私は自身の両腕に装備されている腕輪に視線を落とす。
確か『闇の腕輪』と『光の腕輪』、とかだったっけ。
「…………」
「どうしたの?」
「あ、いや……。『《錬力》を込めてみて?』とか言われても……」
初心者ですのでホントすんません。まったく意味が分からぬ。
「うーん。そこから分らないのか……。えーと、こう両腕の腕輪にググーって念じて、こう、ワワーっと《錬力》が腕輪に集まってきて、それでもってババーっと光が凝縮して――」
「…………」
……なにその昔の有名な野球監督の説明みたいなやつ。
擬音ばかりでさーっぱり分らないんですけど……。
「とにかくやってみなさいな。貴女の『MED』は997でしょう? 錬金成功率は99.7%なのだから絶対に失敗なんてしないから。『LUC』と『腕輪』の成功率補正だって掛かっているのだし」
「あ、はい。じゃあ……ぐわわー……」
「そうじゃないわ。こう、じゅわわー……て」
「……じゅわわー」
「うーん、違うな。こう、でばばー……かな」
「……でばばー」
……うん。
さっきから私は一体何をやらされているのだろう……。
ていうか何の宗教の儀式だよこれ。
「……あ。なんか腕輪に光が……」
随分と時間が掛かった後、両腕に装備されている腕輪から僅に光が漏れ出してきた。
「え……? まさか……?」
レミルがそう言った瞬間――。
先ほどレミルが錬金を成功させた時とはまた違った、禍々しい黒い光で辺りが照らし出されてしまう。
数秒の黒の光の照射のあと、瞑っていた目を開く私とレミル。
「……うん。なんすか、これ」
花瓶に張ってあった『水』が異臭を放っている。
ていうか色が……。ヘドロみたいな深緑色になってるし。
「貴女……ある意味天才ね」
「え? いやあ、そんな褒められても……。チューだけならサービスしても良いけど……テレテレ///」
「馬鹿。嫌味で言ったのよ」
レミルは深く溜息を吐き、せっかく私が錬金した異臭を放つ謎の水(?)を台所に流してしまう。
「さっき見たでしょう、あの『黒い光』。あれは錬金が失敗した時に出る光なのよ」
「え? 私、失敗したの? だってレミル、『絶対に失敗しないから』って……」
「だからある意味天才って言ったのよ。成功率99.7%で『LUC』と『腕輪』の補正も入っていて、どうやったら失敗できるんだか……」
花瓶を洗いつつ、そうため息交じりに言ったレミル。
うーむ……確かに。
言われてみれば宝くじが当たるよりも確率が低いような気もする……。
「貴女きっと【SUB】なんじゃないかしら……。私は初めて見るのだけれど」
「……【SUB】?」
……三郎さん?
誰や。知らんがな。
「うん【SUB】。『Subspecies』の【SUB】。直訳すると『亜種』ってとこかしら」
「おお! なんか格好良い響き!」
「どこがよ。この世界での『職業』に【SUB】が付くってことは、悪い言い方をすると『欠陥品』て意味なんだから」
「けっかん……」
喜びのあまり両手を挙げた状態から、そのまま正座の形でおでこを床に付け崩れ落ちる私。
欠陥品……私は錬金術師としては……欠陥品……。
「あ、言い忘れたけど、錬金を失敗すると大きく『ALC』のステータスが減少するわよ」
「それ先に教えといて!」
私は大慌てでステータスを確認する。
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NAME サナエ・クジハラ
LV 1
HP 1000/1000
SP 200/200
MP 1200/1200
STR 7
ATK 23
VIT 12
DEF 31
DEX 29
AGI 14
INT 108
MAT 126
MDE 154
HIT 9
LUC 15
MED 1000
ALC 0
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「ああ……私のALC……私のALCがぁ……」
また振り出しに戻っちゃいました……。
何だったの、これまでの時間は……。
「はぁ……なんか不吉ね。【SUB】の人が街に現れると毎度のように不幸な出来事が起きるって言うから」
「わたし疫病神っすか!?」
「貴女に錬金術としての最低限の能力でもあれば、私のお店を手伝ってもらいたかったのだけれど、流石に【SUB】はお断りだわ」
言い終わった瞬間、私の背中をグイグイと押してくるレミル。
「ほら、帰った帰った。(あとでお店の前に塩撒いておかなくちゃ……)」
「ああ! 今聞こえた!! スッゴイ失礼なこと言ったの聞こえたっ!!!」
あれよあれよと言う間に店の外に追い出される私。
「じゃあね、サナエ。お客として来る分には問題ないから、今後とも宜しく~♪」
――バタン。
「…………」
締め出された……。
「………………」
疫病神扱いされた……。
「…………マジでなんなの」
初期設定に失敗しただけじゃなくて、錬金術師としても欠陥品……?
しかも【SUB】の職業の人が街に現れると、不吉な事が必ず起こる……?
……あれ? 私の『異世界での活躍』というストーリーはどこに消えた?
「錬金術師が錬金店で働くのを拒否られるって……」
薬剤師が『薬剤師急募!』の張り紙を見て面接に行ったら、顔見た瞬間『不採用』と言われるのと同じくらいショックかも知れぬ……。
駄目だ、立ち直れそうにない……。
異世界にまできて『お前いらない』なんて、どう考えても耐えられない……。
「……探そう。あの三人に養ってもらおう……。私にはもう、あいつらしかいない……!」
そう独り言を呟きつつ、私は重い足取りで再びあの魔法陣まで歩いて行ったのでした。
名前:サナエ・クジハラ
種族:人間族(女)
職業:錬金術師【SUB】←NEW!
2022.5.27改稿




