ALC0003⇔もう一度設定からやり直させてください
――錬金術に必要な物は二つ。
一つは錬金するための『素材』となるもの。
そしてもう一つは錬金術師が装備している両手の『腕輪』である。
『腕輪』にも通常の装備品と同じく性能の差があるのだが、腕輪を装備可能な錬金術師は生産職であるため腕輪を装備しても攻撃力や魔力は上昇しない。
代わりに上昇するもの――それが『錬金成功率』である。
また『錬金成功率』はLUCの数値でも補正が掛かるため、高難度の錬金術を成功させるためには欠かせない要素となっているらしい。
錬金をするには両腕に装備した腕輪を共鳴させ、素材に向かって錬金術を詠唱する。
成功すれば素材が消滅する代わりにレシピ通りのものが完成、失敗すればゴミが出来上がる。
またこのゴミも錬金素材として利用できることもあるので、すぐには捨てないように。リサイクル大事。
後はさっきレミルとやったような『魔法陣を使った錬金』や『共同錬金』というものもある。
……ヤバい。もう覚えられなそう……。
次にステータスについて。
最初に私の頭を悩ませたあの謎のステータス――そう『MED』と『ALC』。
この二つは『錬金術師専用のステータス』なのだという。
『MED』はMedicineの略であり、『ALC』はAlchemyの略である。
レミルが言うにはMedicineという言葉には何も意味が無いとのことだが、いやいや。医学とか医術、薬剤って意味でしょう、どう考えても。
Alchemyは錬金術という意味で、『ALC』の数値が高いほど高度な錬金術が使えるというわけである。
「……そろそろ覚えるのがきつくなってきたんだけど」
「ふふ……あとちょっとだから頑張って」
レミルの解説は続きます。
『MED』と『ALC』は錬金術師にとって最も重要なステータスであり、また両者は『相対関係』にある。
初期の数値は『MED』が1000、『ALC』が0で固定されているらしい。
良かった……。私の錬金術師としてのステータスが0点なのだと勘違いしてた……。セーフ。
この『ALC』の数値を上げる方法は様々あるが、まずは先ほどレミルと一緒にやった『共同錬金』をするか、もしくは『初心者錬金術教本』と呼ばれるものを使用するのが基本である。
「サナエはさっき私と『共同錬金』をしたから、『ALC』の数値が少しだけ上がっているんじゃないかしら」
彼女に言われ、私は慌ててウインドウを出現させる。
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NAME サナエ・クジハラ
LV 1
HP 1000/1000
SP 200/200
MP 1200/1200
STR 7
ATK 23
VIT 12
DEF 31
DEX 29
AGI 14
INT 108
MAT 126
MDE 154
HIT 9
LUC 15
MED 997
ALC 3
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「……あ、本当だ。『ALC』のステータスが3に上がってる。……あれ? でも『MED』が……下がった?」
「ふふ、気付いた? そう。『MED』が反対に3下がってるわよね」
つまり『相対関係』とはそういうことらしい。
『ALC』の数値が上がるほど『MED』の数値は同じ数だけ下がってしまう。
上位の錬金術を使用するにはそれに相応しい『ALC』が必要であるため、必然的に『MED』はどんどん下がっていってしまうのだ。
『MED』の数値を気にしないのであれば、何度も錬金を重ねて『ALC』だけを上昇させていけばよいと思うのだが、そう簡単な話では無かった。
「ここで厄介なのが『成功率』なのよ」
先ほどレミルはMedicineという言葉には意味が無いと言っていたが、実はこの『MED』が『錬金成功率』と密接に関係している。
計算方法は以下の通り。
『錬金成功率=MED×0.1(%)』
今しがた錬金した黒剣アーザイムゼヘウムを例にとってみよう。
黒剣を錬金するのに必要な『ALC』は300。
ちなみに彼女は素材からではなく『魔法陣を使った錬金』を使用した。
この方法を正式名称で『召喚錬金』という(さっき言わなかったのは私の頭がパンクしそうだったかららしい。レミルって意外に優しい……?)。
レミルの『ALC』は召喚錬金前では299。
ここに私が『共同錬金』として加わり、共同錬金ボーナスが発生。
私の『ALC』は0だったが、ボーナスで+1され、二人で合計300。
よって無事に錬金を開始することが可能となった。
この時点でレミル『MED』の数値は701だから、先ほどの計算式に当てはめると――。
『錬金成功率=701×0.1(%)=70.1(%)』
だからさっきレミルは「成功率がまだ70%あるから……」とか言っていたんですね。
今理解しましたー。
「ふーん……。じゃあ、この成功率に加えて『LUC』やら『腕輪』の性能やらで補正が掛かって、最終的な成功率になる、みたいな感じなのね。よーく分かりました」
「ふふ……後は、そうねぇ。錬金術師に最も必要なステータスくらいは覚えておいたほうがいいかもね」
「最も必要なステータス?」
そう言い首を傾げると、またレミルはクスリと笑いました。
……何だろう。若干馬鹿にされている気がしなくもないけど。
錬金術師として最も必要なステータスは三つだと彼女は言う。
モンスターなどから自身の身を守るために必要な『HP』と『VIT』。
それと錬金成功率に関与している『LUC』。
……うん。
…………あれ??
「ち、ちょっと待ってね……。ええと、HPとVIT……。それにLUC。……うん。…………うん?」
「どうかしたの? サナエ?」
「え? いやいや、だって錬金術でしょ? そりゃやっぱMPとかINTとかDEXだって必要なステータスだよね?」
「ううん、全然」
「…………」
……え? 何の躊躇も無く否定された……? マジで??
「一番重要なステータスはさっきも言ったけれどLUCかしらね。私たち錬金術師は生産職だから普段街から出てモンスターと戦うこともそんなに無いし。どうしても素材集めのためとかで街の外に出なければならない時は、ギルドに依頼を出すか、もしくは傭兵を雇えばいいことだし。でも傭兵を雇ったって、万が一の時はダメージを受けてしまうこともあるでしょう? 生き残るためにもHPやVITはある程度上げておく必要があるわね」
「あ、でもそういうことならINTを上げて魔法攻撃耐性とかも上げておいた方が――」
「必要ないわね。私達は錬金術師なんだから、事前に魔法対策のアイテムを沢山作って持っていけば問題ないわ。一番怖いのは物理攻撃や状態異常の攻撃かしらね。まあそれらも対策出来ないわけじゃないんだけど、それでも体力が多いに越したことはないから」
「…………」
えーと……。うーんと……。ちょっと待ってね。
私、最初の設定で一体何のステータスにボーナスポイントを割り振ったんだっけ……?
……。
…………。
「……サナエ?」
「…………おいらやっちまった」
「やっちまったって、何が?」
あまにりショックすぎて現実を直視できません……。
だって『INT』も『MP』も『DEX』も、錬金術師には全く意味がないとか言われたらそうなるでしょう。
辛うじて『LUC』にはボーナスポイントを7くらいは割り振った気がするけれど、残りの93ポイントは全部無駄だったってことに――。
「……あ、でもちょっとした魔法くらいは使えるよね? 錬金術師だって」
「使えるわけないじゃないの。魔術師じゃないんだから」
「『器用さ』の数値で錬金の仕上がり具合に違いとかは……?」
「出ないわよ、そんなの。違いが出るのは鍛冶師が武具を作成した時とかよ。何度も言うけれど、錬金に直接関わるのは『MED』、『ALC』、『LUC』の数値。それと『腕輪の性能』だけ」
「…………」
「他に質問は?」
「……ありません」
私は肩をガクッと落とし、膝から崩れ落ちます。
――そう。私は最初の設定の時に、すでに躓いていたんです。
100もあるボーナスポイントのうち、93ものポイントをドブに捨ててしまっていたんです。
だから私は、叫びます。
「うわああああぁぁぁぁぁん!!! ゲーム開始早々やっちまったあああぁぁぁぁぁ!!!」
そんな私の悲痛な叫び声がレミル錬金店に木霊しました。
2021.11.28改稿




