ALC0051⇔キナ臭い話はちょっと勘弁です
馬車の周りには十数名の吸血鬼が取り囲む形となっている。
しかしアーネルの堅固な防護結界魔法により、馬車の周囲約0.5ULに賊は侵入できない形となっている。
アーグリッド湿原で採集していた時にも感じたが、アーネルの防護結界はかなり強力な防御魔法に属しているのだと、改めて感じさせられる。
効果範囲も何段階かで分けられるみたいだし、これだけの数の吸血鬼からも完璧に身を守る事も出来ている。
流石は街で一番の治癒士だと言われるだけはあるが、それでもMPが尽きてしまえば当然効果は消失する。
額に軽く汗を掻いているアーネルに視線を向け、私はルーファスに質問を投げ掛ける。
「まずは、『呪われた街』について教えて。何故『吸血鬼』と呼ばれる彼らがその街に住み着いたのかが知りたいわ」
「んな事聞いてどうすんだよサナエ。それよりもさっさとズラかろうぜ。ここに居たって奴らと戦わないなら逃げた方が得策だろ」
ゼギルが馬車から身を乗り出し外の様子を伺いながらも口を挟む。
「言いにくいのですがサナエさん……。私の防護結界もそうは効果が続きませんので、私としても早くこの場を離れて頂いた方が……」
アーネルが辛そうに続ける。
確かに私の我侭でここに居続ける訳にはいかないのだけれど……。
「――『呪われた街』は」
ポツリ、と独り言の様に呟き始めるルーファス。
いつもの爽やかな笑みが消え、その雰囲気に押し黙る私達3人。
「……『呪われた街』は、僕ら四大伯爵家が『吸血鬼』に成り下がった彼らを……」
そこで一旦止まってしまうルーファス。
そして彼は顔を伏せ、まるで懺悔するかの如く、こう話す。
「……隔離する為に作った、『偽りの街』なんだ」
◆◇◆◇
ルーファスの独白は続く。
過去百数十年にも渡り街周辺の土地を治めて来た由緒ある家柄の『四大伯爵家』。
その権力は一国の国王に匹敵する程の力を有していると言われていた。
彼らの手に掛かれば一つの街を独自に築く事もそう難しい事では無い。
『呪われた街』が作られたのも今から約50年ほど前に遡ると言う。
「『偽りの街』? それって一体どういう……」
俯いたままのルーファスにそう投げ掛ける私。
「……簡単に言えば『街』としての最低限の体裁を取り繕ってさえいない、邪魔者となった人々を隔離する為の施設、と言った方が正しいのかな」
「なっ!?」
余りにもルーファスの言葉が投げやりに聞こえた私は、ついそう口に出してしまう。
「しかしルーファス様! それは……!」
「いや、僕もアルルハイド家の長男だ。伯爵家の一員として同罪だろう」
ゼギルが何か言おうとしたがルーファスはそれを制してしまう。
……『同罪』?
「……もしかしてルーファスさんが仰っているのは、あの『不治の患者様』達の事を言っているのですか?」
アーネルが話に割り込んで来る。
「もしもそうでしたら、私達『司祭側』の方にも責任があると思うのですが……」
「いや、アーネル達は伯爵家の依頼を受けただけに過ぎないよ。最終決定権は僕らにあるのだし……」
「しかし……」
なんだか話がキナ臭くなって来ている気がする。
「……聞かせて貰えるかしら。一体『何が』あったのかを……」
「……ああ。これは僕からも、是非ともサナエの意見を聞きたい案件だからね」
ルーファスは再度、話を進める。
・・・
ある日の事、街の教会に一人の患者が運び込まれた。
その患者はまるで何かに取り憑かれたかの如く奇声を発したり、全身の痙攣を起こし昏睡状態に陥っている様だった。
すぐさま司祭は状態異常回復魔法を掛け、治療を始めた。
しかし『呪い』の解除魔法も『麻痺』の解除魔法も全く効果が出ない。
ならばと道具屋で売っている状態異常回復薬や錬金術で特別に作らせた万能薬を飲ませても一向に症状が回復しないばかりか、その患者の奇行により町民に怪我人が相次ぐ事態となった。
手が付けられなくなった司祭らは彼に眠りの魔法を唱え、事の次第を四大伯爵家に報告した。
「それって……」
私はルーファスの話す内容が、今まさしく目前で起こっている状況と交差し言葉を失う。
「ああ。そしてその患者は眠りから覚めると一度は大人しくなったのだけれど、また同じ病状を再発したらしくてね。その後、同じ様な症状の患者が年に数人程度教会に運ばれて来るようになったんだ」
年に数人程度……。
四大伯爵家が管理している土地にどれくらいの人間が生活しているのかは分らないが、もしその『数人』が領地内の人口の1%程であるならば、平均的な『てんかん発症率』と同じ数字という事になる。
「じゃあ、『呪われた街』に住み着いた『吸血鬼』っていうのは……」
「……ああ。伯爵家が自分達に都合の良い様に情報操作した『噂』さ……。実際は彼らが『住み着いた』のではなく、街や周辺住民に危害を加える可能性のある『不治の病』を発症した彼らを隔離する為に、即席で『街』を作り、そこに閉じ込めたのさ。……街の周囲約30UL以上を離れると魂を消滅させる『呪いの魔法』を彼らに掛けて、ね……」
「まさか……! 『呪いの魔法』は教会の禁術とされている筈……! それを司祭様らが解放したなどとは……!」
アーネルが驚愕の表情で叫び出す。
彼女には知らされていなかったのだろうか。
「おいおい……。俺ぁ、初めて聞きますぜ、そんな話……。なんでそんな大それた事を伯爵家と教会で勝手におっぱじめてやがるんですか、ルーファス様……」
ゼギルが歯軋りをしながらそう答える。
生まれながらにして伯爵家に仕えて来たゼギルも知らない『真実』。
歴史の闇に葬られてきた『事実』とでも言うべきか。
「……その問題は後に回して。もう一つ質問させて貰える? ルーファス」
「ああ」
「隔離した彼らに対し、食糧やその他物資の援助は?」
私の予想が正しければ。
「……恐らく一度も行ってはいないと思う。彼らには制限があるとはいえ、街の周囲約30ULは行動出来る様にしてあるんだ。伯爵家の見解では『自給自足が可能』という決定を下していたらしいから……」
……やはり。
「自給自足? この何にもない野っ原で30ULぽっちの行動範囲で、ですかい?」
私の言いたい事を先に告げるゼギル。
そう。
どう考えてもまともな食糧にありつける様には思えない。
これではハクナ族と同じでは無いか。
いや、状況だけで言えば彼らよりも酷い状況とも言える。
てんかん症状を抱えた住民だけが寄せ集められて、まともな食糧を得られそうにも無い土地に軟禁されているのだ。
この辺りに生息しているモンスターと言えば【デザートスネーク】くらいでは無いだろうか。
「……そうか。だから彼らは『生き血』を……」
ヘビの生き血を吸う行為は現実世界のどこかの国でも行われていた行為だった様に思う。
食糧となる生物が限られている状況の中、彼らが何十年の軟禁生活で独自に身に付けた『栄養摂取方法』。
それが生物の『生き血を吸う行為』だったとしても、何ら不思議は無いのではないだろうか。
そしてそれら『食糧源』が枯渇した際には、近くを通過する冒険者を襲い『吸血行為』を行う。
それが毎回の事では無かったとしても、数回でもそのような行為を目の当たりにした冒険者達は口を揃えて噂するだろう。
――あの街に住んでいる住人は『吸血鬼』であると。
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NAME ゼギル・スパイラル/盾護士
LV 30
HP 50090/50090
SP 7730/7730
MP 0/0
STR 279
ATK 421
VIT 598
DEF 1029
DEX 94
AGI 68
INT 21
MAT 0
MDE 87
HIT 198
LUC 156
右手/炎帝龍の鱗盾〔C+〕
左手/炎帝龍の鱗盾〔C-〕
頭/根性の鉢巻〔C+〕
胴/巨人の鋼鎧〔D-〕
腰/獣王亀の甲羅〔A+〕
足/巨人の足鎧〔D-〕
アクセサリー①/なし
アクセサリー②/なし
アクセサリー③/なし
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