ALC0051⇔私、大学の研究発表の経験が生かされました
それからすぐに街まで戻った私達は、パーティを解散。
事の次第については四大伯爵家側にはルーファス、教会側にはアーネルに任せる形となった。
しかし翌日、すぐに私は『議事堂』と呼ばれる伯爵家と教会の議会の場に呼ばれる事となった。
議会にはもちろんルーファスもアーネルも参加していた。
私はルーファスからの求めにより、今回の件についての説明を異界の人間にも分るように説明した。
最初は怪訝な表情の教会側の出席者だったが、先のハクナ族の件については既に知れ渡っていたらしく、思っていた程には議会も荒れを見せなかった。
私としては研究発表などで、沢山の教授の前での論文や研究途中の内容発表を、今までの大学生活で嫌と言うほど経験してきた為か。
基本的な医学薬学の知識の無い彼らに説明する事が、意外にも知識を詰め込んだ隙の無い教授達に説明するよりも、遥かに説得力を持たせて説明出来る事に安堵した。
そう。簡単に言えば研究発表と言うよりは、塾の講師に近い形だ。
何も知らない生徒に、分るように噛み砕いて説明する。
言葉そのものが理解出来ないものであれば、例えを使って説明する。
この世界に『医学』、『薬学』に関する知識は皆無だとは言え、『回復アイテム』や『回復魔法』は存在する。
それらに内容を置き換え、また私の『錬金術師』としての立場を利用し、会議の出席者に説明を繰り返す。
私はだんだんと、この世界の住人を納得させられるだけコツの様な物を見に付けて行った。
しかし一つだけ問題があった。
それは四大伯爵家と教会の『威厳』だ。
私のような謎の知識を詰め込んだ錬金術師の提案を丸呑みするには、彼らの立場を危ぶませる事にも繋がる。
よって私は提案した。
これらの知識や提案は四大伯爵家や教会側が『独自の研究により発見した新事実』という事にして貰う事を。
これで彼らの威厳は保たれるばかりか、ハクナ族に続き『吸血鬼』と揶揄され、恐れられていた人々をも解放した、まさにこの街の救世主として崇められ、よりその権力を誇示出来るだろう。
この提案にはルーファス、アーネルも驚きを隠せなかった様だが、私はそもそも目立ちたくてこんな事をしているのでは無い。
ただ、この世界の『無知』が許せなかった。
たったそれだけの事なのだから。
◆◇◆◇
「クウウン」
「はいはいはーい。待っててね~くまごろう~。今ミルク用意しまちゅからね~」
昼食の準備を終えた私はくまごろうのミルクを容器に注ぐ。
「クウゥン」
「はーい、いい子でちゅね~。おいちいでちゅね~。可愛いでちゅねぇ~///」
「……相変わらずの親馬鹿っぷりね、サナエ」
昼食のパスタとサラダを食べながらレミルは呆れた様にそう言う。
「ああそうさ。私は親馬鹿さ。何が悪いっていうのさ。さ」
開き直る私。
そしてまた、くまごろうの愛らしい食事姿に表情が崩壊する。
「……それにしてもサナエ。あんたってホント、天才なんだか馬鹿なんだか……」
3日間にも及ぶ四大伯爵家と教会側の会議。
私の説明は2日目のみだったが、ルーファスの計らいで3日目も参加する事となった。
そして下された決定は、彼ら『吸血鬼』と呼ばれた『呪いの街』の住人の解放と食糧支援だった。
簡単に言うと、私の提案が丸呑みされた形となったのだ。
当然この結果に至るまでの過程は『極秘扱い』とはなっているが、既に経緯を知ってしまったゼギルや、この街でも有名な錬金術師のレミルには、詳細な内容が説明された。
多分だけどレミルについては私がここでお世話になっている事も関係してるんじゃないかと思っている。
「まさかハクナ族に続いて『呪いの街』の吸血鬼の問題も解決しちゃうなんてね……」
ミルクを飲むくまごろうに優しく微笑みを向けながらもそう言うレミル。
「ううん、まだ『解決』はしていないわ、レミル」
彼ら『吸血鬼』と呼ばれた人々が『てんかん患者』だという事は分った。
そして彼らが限られた行動範囲の中、独自に生き残る為に身に付けた行為が『吸血行為』だったという事も。
しかし、根本的に彼らの病気を治せる薬がある訳では無い。
てんかんは『脳の疾患』だ。
この異世界にある物で脳疾患を治せる薬を私が作れる可能性は限りなくゼロに近い。
またてんかん症状を引き起こす要因も様々だ。
私が出来る事と言ったら、てんかん発作を引き起こした時の対処法を伝える事と、毎年現れるてんかん患者を極力減らす為の『予防医学』の流布。
簡単に言えば『ストレスの発散』『節酒』そして『光刺激の軽減』。
その他細かい要因を挙げればきりが無いが、殆どは現代で言う生活習慣病の改善と似ているとも言える。
よって根本的解決には至らないのだ。
「……異世界でも『生活習慣病』の改善か。……まさかオンラインゲームでこんな落とし穴があるなんてね……」
「え? おんらいん……なんだって?」
「……なんでもねーっす」
レミルの質問を軽く流し、くまごろうのミルク皿を下げる。
「クンクン」
「うん。美味しかったね、くまごろう」
軽く喉を撫でてやるとすぐさま欠伸をし、丸まって寝てしまったくまごろう。
「あ、そうそう。そう言えばアーネルも錬金獣が欲しいとか言ってたけど、注文来た?」
馬車の中での会話を思い出し、そう尋ねる私。
パスタをフォークでグルグルさせながら、先ほどの私の言葉で頭の中までグルグルさせた様子のレミル。
「え? ああ、注文なら来たわよ。でもアーネルは猫型の錬金獣が欲しいって言うから、『具現化指定』の錬金獣はもっとALCが上昇しないと使えない『上位錬金術』なのよ」
レミルは困った様にそう言った。
「へえ、じゃあ今の私が……ALCが51だけど、それを足して『共同錬金』をしても、まだ足りないと」
私はウインドウを開きながらもそう言う。
「ええ。今の私のALCは467。貴女と足しても500ちょっとでしょう。『具現化指定』は700オーバーの上位錬金術だから」
「うげぇ……」
それだけ上位の錬金術となると成功率もかなり下がるだろうし……。
失敗したらめっさALCの数値が落ちちゃって振り出しに戻る状態だし……。
錬金術師って不遇職なんじゃ無いかしら……。
と【SUB】の私が言ってみる。
……辛い……。
「あ、そうそう。貴女が会議に出ている間に頼まれていた物、錬金出来ているわよ」
「え? マジで!」
「でも……あんた、あんな道具を錬金させて、一体何を始める気? まるで『鍛冶道具』じゃないのよアレ……」
レミルが指し示す場所に目的の機材が錬金され、積み上げられていた。
「そうなのだよ。私は錬金術師改め、鍛冶職人サナエとして転職こら」
間を開けずにチョップをかます。
何で土方のおっさんみたいにならなきゃいけないのよ……。
錬金置き場に雑然と並べられた物。
ピンセット、スポイト、錠剤カット、サンプラテック、温度計、ビーカー、軽量スプーン、秤、小瓶、散薬用トレイ、軟膏用ヘラ、カプセル、フルイ、軽量カップ、錠剤粉砕機、乳鉢乳棒、霧吹き、薬包紙、ピペット、寒天プレート、ガラス棒、メスシリンダー、シャーレ……。
「うおっ!? このどデカイのは『インキュベーダー』! こっちは『オートクレーブ』に『遠心分離機』に……! うひょう! 『クリーンベンチ』まで錬金出来るのマジで! 冗談で頼んだのに!」
私は小躍りを始める。
て言うか電気は何処から繋げるんですかコレ。
「ああ、そのでっかい奴ね。ほら、この前サナエが見せてくれた『錬金レシピ』があったでしょう? あれに載ってたわよ、それ」
錬金レシピ……?
ああ、あの『薬学全書』の事か。
ていうか未だに良く分からないよな、あの本の『意味』が……。
「……あれ? コンセントは付いてるのに、どこにも電源を繋げなくてもスイッチが入る……?」
試しにクリーンベンチのスイッチを入れるとベンチ内の蛍光灯とエアーが起動した。
何でですか。
コンセントの意味無いじゃないですか。
流石はファンタジー。
「私も良くは分らないけど、何かそのドでかい奴には『魔力』が籠もっているわね。感覚的には《光魔法》に近いのかしら」
「光魔法?」
何だ? 太陽光発電とでも言いたいのか。
じゃあ内臓電池が搭載されていて電源繋げなくても使えるって事なの?
何というファンタジー。
「でも……これだけ器具が揃えば、色々と薬が作れるかも……」
流石にてんかん薬は無理だろうが、アーグリッド湿原で採集した素材がかなりあるから、それで色々と民間薬くらいならば……。
「うおっし! いっちょ調剤すっかあ!」
「ふふ、じゃあ、はい」
私の歓喜の雄叫びを聞いたレミルは溢れんばかりの笑顔で私に手を差し出す。
「……なんですか、その手は」
嫌な予感しかしない。
その笑顔が超絶怖い。
「誰も『タダ』で錬金してあげるとは言っていないでしょう」
「……お金、ですか」
私のこめかみに一筋の冷汗が流れる。
「サナエちゃんはアーグリッド湿原に行って、どれくらいGを稼いで来たのかな~♪ お姉さん、知りたい知りたい~♪」
……完全にばれている。
私は一切戦闘には参加してはいないが。
モンスターを倒した時に手に入る経験値やGは。
……全て、均等に自動分配されるのだと言う事を。
「あ、あの、レミル先輩……」
「よ・こ・せ♪」
「…………はい」
そして私は強制的にウインドウを開かされ。
せっかく(他人任せで)稼いで来たGを。
レミルに根こそぎ持って行かれた訳でありまして。
……ありまして。
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NAME アーネル・ヴァイオレット/治癒士
LV 32
HP 18760/18760
SP 780/780
MP 22340/22340
STR 76
ATK 142
VIT 199
DEF 305
DEX 125
AGI 90
INT 498
MAT 1032
MDE 1197
HIT 54
LUC 76
右手/なし
左手/聖杖ゲヒルグシャナス〔E-〕
頭/祝福された銀の髪留め〔A+〕
胴/司祭の洗礼服〔C-〕
腰/翼白竜のスカート〔D+〕
足/巨土竜の背皮靴〔B+〕
アクセサリー①/司祭の十字架〔A-〕
アクセサリー②/なし
アクセサリー③/なし
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