第9話:王都の武器街にて
カン、カン、カン──と、心地よい鉄を叩く音が響く王都の鍛冶屋街。
レイは金貨の入った袋を懐に忍ばせ、一軒の古びた、しかし風格のある鍛冶屋『鉄の拳亭』の暖簾をくぐった。
「いらっしゃい。……あんた、見ない顔だな」
奥から出てきたのは、白髪交じりの頑固そうなドワーフの老人、バルカンだった。
「新しくCランクになったレイだ。実戦に耐えうる、いい剣を探しに来た」
バルカンは鼻で笑った。
「Cランクになったばかりの若造がか。うちの武器は高いぞ? そこらの量産品とは違うんだ」
「予算なら、これで足りるか?」
レイがカウンターに金貨10枚を積み上げる。ドワーフの目が丸くなった。
「ほう……いい金を持ってるじゃねえか。よし、奥の『特別品』を見せてやる。ついてきな」
店の奥の地下室には、厳重に保管された数々の名剣が並んでいた。
バルカンは誇らしげに一本の長剣を差し出した。
「これは『飛燕の剣』。風の魔石を組み込んであり、一振りの速度が──」
「いいえ、それはいいです」
レイは一瞥しただけで断った。【神眼】がその性能を見抜いていたからだ。
【飛燕の剣(ランクC)】
耐久値が低く、レイの【剛力】に耐えられない。
「何だと? 我が魂の一作を……!」
気分を害したバルカンを無視し、レイは地下室の隅に転がっていた、一本の『黒く錆びついた大剣』に目を留めた。
長さは1.5メートルほど。あまりの重さに誰も使えず、埃を被っている。
「……店主、あれは?」
「あ? あれか……。ありゃ『黒鉄の呪い剣』だ。隕鉄で打ったんだが、重すぎる上に魔力を全く通さない。どんな名手が振ってもただの鉄塊だ。失敗作だよ」
だが、レイの【神眼】には、全く違う情報が映し出されていた。
【神殺しの未完成刃(ランク:測定不能)】
状態:封印(真の力を引き出すには、莫大な魔力が必要)
特性:神聖・魔属性の攻撃を100%吸収し、自身の威力に変換する。
(……見つけた。これだ。これこそ、俺の相棒にふさわしい)
「店主、これをくれ」
「おいおい、本気か? それは筋力値が150以上なきゃ持ち上がることすらできねえぞ?」
レイは黙って大剣の柄を片手で掴んだ。
そして、【剛力】を発動させる。
ズ、ズズ……。
「なっ……!?」
バルカンが目玉が飛び出さんばかりに驚愕した。
レイは、大人3人がかりでようやく動かせるレベルの黒大剣を、まるで軽い木刀でも扱うかのように、片手でひょいと持ち上げたのだ。
「これでいい。いくらだ?」
「……金貨5枚でいい。お前さんのような化け物に買われるなら、その剣も本望だろうよ」
バルカンは完全に脱帽し、笑った。
こうしてレイは、規格外の相棒『黒大剣(仮)』を手に入れたのだった。
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