第7話:査問と剥奪
「レイ君、ガイ君、セリア君、トール君。これより、今回の『黒鉄の迷宮』における探索についての査問を行う」
ギルドの奥にある厳かな会議室。
中央の長テーブルを挟み、レイとトール、そして顔を真っ青にしたガイとセリアが座っていた。上座には、王都ギルドの支部長である屈強な隻眼の男、バルトスが腕を組んで座っている。
「トール、もう一度、お前の主張を聞こう」
バルトスの低い声が響く。
「はい。第5層でAランクの変異種に遭遇した際、リーダーのガイは、レイの胸ぐらを掴んで魔物の足元へ投げつけました。俺はそれを明確に目撃しています。その後、俺が抗議しようとすると、ガイに背後から気絶させられ、置き去りにされました」
トールの証言は具体的だった。レイが【神眼】で見た事実とは少しズレていた(ガイがトールを気絶させたのではなく、単にボスの衝撃で気絶しただけだった)が、ガイがレイをハメたという本質は合っている。レイはあえて訂正しなかった。
「ぬ、温いことを言うな! 証拠はあるのか!」
ガイが必死に反論する。
「トールは頭を打って妄想を見ているんだ! レイが生きているのがその証拠だろ! 本当に囮にされたなら、こいつは死んでいるはずだ!」
「静粛に」
バルトスが一喝すると、ガイはびくりとして口を閉じた。
隻眼の支部長は、じっとレイを見つめた。
「レイ。お前がその二つの魔石を入手した経緯を話せ」
レイは事前に考えていた「嘘」を並べた。自身の固有スキル【神眼の支配者】の存在を隠すための嘘だ。
「ガイさんに投げ飛ばされた後、奇跡的に魔物の攻撃がバックパックの荷物に直撃し、私は吹き飛ばされて壁の隙間に落ちました。そこで、私の固有スキルが『覚醒』したんです」
「覚醒……だと?」
バルトスの目が光る。稀に、極限状態においてスキルが上位進化する現象は実在した。
「はい。私の【鑑定】は、敵の『弱点や魔力の流れを完全に看破する能力』へと進化しました。私は壁の隙間から、ミノタウロスが過去の戦闘で負っていた『古傷(核)』を見つけ、そこに落ちていたトールさんの短剣を突き刺して、運良く倒すことができたのです。ゴーラン戦も同様に、魔力の循環を断ち切ることで勝利しました」
『ステータス改ざん』や『スキル略奪』というチートを隠し、「超高性能な鑑定で弱点を突いた」という説明に留めたのだ。これなら、Fランクが勝てた理由としてギリギリ説明がつく。
バルトスはしばらくレイを睨みつけていたが、やがて深く息を吐いた。
「……レイの言い分には筋が通る。何より、現物がここにあるのが証拠だ。そしてガイ、セリア」
バルトスの目が、冷酷な光を帯びる。
「ギルドの魔道具により、お前たちの『嘘』はすでに看破されている。お前たちがレイを見捨て、トールを置いて逃げたのは紛れもない事実だ。──冒険者規約第8条に基づき、ガイ、セリア、両名の冒険者資格を『永久剥奪』とする」
「な、なんだと……っ!?」
ガイがガタタッと椅子を立ち上がった。
「お待ちになってください! 私は魔法大学を首席で出たのよ!? 資格剥奪なんて……!」
セリアが泣き叫ぶ。
「連れて行け」
バルトスの合図で、屈強なギルドガードたちが部屋に入り、暴れる二人を取り押さえた。
すれ違いざま、ガイがレイを血走った目で睨みつける。
「レイ……! お前、絶対に許さねえからな……! 泥水をすすってきたゴミの分際で、俺の人生を壊しやがって……!」
レイは、そんなガイの言葉を鼻で笑った。
「泥水をすすらせていたのは、お前らだろ。じゃあな、元・冒険者さん」
元リーダーたちの惨めな退場を、レイは冷ややかに見送った。
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