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第53話: アンチウイルスの起動

「フェンリルか。システムが用意した、最後の物理防衛レイヤーだね」


レイは眼前に現れた巨狼フェンリルを静かに見据えた。


フェンリルの瞳には知性はなく、ただ目の前の「不純物」を消去することだけを目的に、その巨大な顎から、空間をドロドロに溶かす神聖エネルギーのプレスを吐き出そうとしている。


【鑑定対象:システム統合守護獣・フェンリル】

特性:ウイルスの強制消去。攻撃対象のデータを物理的に『食べる(消去する)』。

防御:全魔法・物理攻撃を99%カットする 『神聖プロテクト』。


「おい、レイ! あの狼の周りの空気、触れるだけで俺の魔力が吸い取られちまうぞ! 普通の攻撃は通じそうにないな!」


トールが焦りを滲ませながら、戦鎚斧を強く握りしめた。


「トール、手出ししちゃダメだよ。あれはただの獣じゃなくて、システムの『ゴミ箱機能』が形になったものだから。触れたら存在データごと消されちゃうよ」


レイは静かに告げると、一歩前へ出た。


フェンリルが大地を蹴り、光速を超えるスピードでレイに向けて突進してくる。そして、その巨大な顎が、レイの頭上から噛み砕こうと迫った。


「ガウェイン、ブリュンヒルデ、奴の動きを1秒だけ止めてもらえる? 直接は戦わなくていいからね」


「了解しました」


「お任せください」


黒騎士ガウェインが盾から放った『挑発信号』と、ブリュンヒルデが放った黄金の雷霆のデコイデータが、フェンリルの視覚認識を一瞬だけ狂わせた。


フェンリルの突進の軌道が、レイのわずか数センチ横へと逸れる。


その一瞬の交差。


レイは【虚空の修正剣】を引き抜くことなく、フェンリルの青白く光る横腹へと、自らの左手を静かに添えた。


「システムプロセス、強制終了」


レイの金色の瞳が、フェンリルの内部に流れる「タスク管理コード」を瞬時にハッキングし、その起動プロセスを直接シャットダウンした。


ハッキング: フェンリルの『メインプロセス』に、即時終了シグナルを送信します。


ピキィィィン・・・・・・・!


「ガ・・・・・・、ア !?」


空中でレイを噛み殺そうとしていたフェンリルの巨躯が、突如としてすべての動きを完全に停止した。


その瞳から赤黒い光が消え去り、全身の青白い光のチェーンが、サラサラと砂となって崩れ落ちていく。


それは動かない「ただの静止オブジェクト」へと変化し、地面へと力なく落下した。


レイのハッキングは、戦うまでもなく、敵の「起動する権利」そのものを根底から奪い去ったのだ。


「プロセスの終了を確認しました。・・・・・・これより、このオブジェクトの魔力領域を、私たちの魔力へと強制回収しますね」


アルテが告げると、フェンリルの巨躯から莫大な神聖魔力が抽出され、レイたちの魔力ゲージを一瞬で最大値へと回復させた。


神々が用意した最大の「爪」すらも、レイの前には、ただの使い勝手のいい回復リソースに過ぎなかった。

【新作のお知らせ】


いつも本作をお読みいただき、本当にありがとうございます!


この度、新しい連載作品をスタートいたしました。


タイトル:『森羅家の生活魔法は戦闘不能? 〜カフェの雑用と馬鹿にされた三姉弟、Fランクから最強へ駆け上がる〜』

あらすじ:「カフェの雑用魔法」と蔑まれた三姉弟が、知恵と工夫で地味な日常魔法を昇華させ、Fランクから最強へと駆け上がる成長ファンタジー!


本作とはまた違った魅力の詰まったお話になっています。

少しでも気になった方は、ぜひ以下のリンクから覗いていただけると嬉しいです!


▼新作はこちらからお読みいただけます

https://ncode.syosetu.com/n6822mn/


※アプリをご利用の方は検索画面で Nコード『 n6822mn 』と検索していただくか、作者マイページの「活動報告」から直接お越しいただけます!


引き続き、応援よろしくお願いいたします!


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