第45話:理不尽なる『天罰』
レイたちがラダマンティスを救済したその瞬間、人間界の全域の空が、不気味なドス黒い赤色へと染まり上がった。
「な、何だあの空は……!? 世界の終わりが来たのか……!?」
王都オウラシオンの広場では、加護の暴走からレイによって救われた冒険者や平民たちが、恐怖に震えながら空を見上げていた。
天の割れ目から現れたのは、数万本の巨大な「光の槍」。それは、神々がレイの進撃に激怒し、彼を支持する人間界ごとすべてを焼き尽くそうと放った、無差別の広域殲滅魔術──『神の天罰』だった。
一本の槍が着弾するだけで、一つの都市が跡形もなく消滅するほどの破滅的なエネルギー。それが、世界中の主要都市に向けて、一斉に降り注ごうとしていた。
「神よ! 貴方は本当に、私たち人間をただの使い捨ての道具としか思っておられないのか……!」
ギルド総帥ヘンドリクスは、王都の窮地を前に、ただ祈ることもできず絶望していた。
その頃、第37層を進んでいたレイの元に、アルテからの緊急アラートが届いた。
「マスター、大変です! 世界システムが人間界の全主要都市に向けて、広域消去魔術『神の天罰』を射出しました! 着弾まであと60秒。……このままでは、人間界のすべての命が消失します!」
「そっか……。神様たちは、僕が言うことを聞かないからって、またみんなを苛めるんだ」
レイは歩みを止め、上空を見上げた。彼の金色の瞳の中に、人間界で怯え、泣き叫ぶ平民たちの姿が、無数のログとなってリアルタイムで映し出されている。
レイの顔から、完全に笑みが消えた。彼の周囲の空間が、怒りではない、絶対的な「支配の静寂」によって凍りつく。
「レイ……俺たちの力じゃ、人間界の空まで届かねえぞ! どうすればいいんだ!」
トールが焦りで声を荒げる。
「大丈夫だよ、トール。届かないなら、僕の眼で、世界の接続を強引に繋ぎ変えちゃえばいいだけだから」
レイは【虚空の修正剣】を地面へと深く突き立て、両目を静かに閉じた。
そして、再びその目を開けた瞬間──彼の金色の瞳から、第37層のすべてを黄金に染め上げるほどの、圧倒的な支配の光条が放たれた。
(広域因果改ざん──人間界の全上空の空間と、この第37層の空間を【一時的に完全同期】。すべての『天罰の槍』の着弾地点を──僕の目の前へと変更)
ピキィィィン……!!!
次の瞬間、王都や他国の空から降り注ごうとしていた数万本の「光の槍」が、着弾の直前で空間の歪みへと吸い込まれ、一瞬で消え去った。
そして、その数万本の破滅の槍は、第37層にいるレイの頭上へと、濁流のように一斉に転送されてきたのだ。
「ひ、ひええええッ!? 天から槍が降ってきたぞ!」
トールが悲鳴を上げる。
「みんな、僕の後ろにいて。……神様、人の命を安易に奪うようなその歪んだルール、僕がここで、完全にデリートしてあげる」
レイは穏やかに微笑みながら、迫り来る数万の槍に向けて、右手をそっと優しくかざした。
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