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第43話:『虚空の鍛冶師』との邂逅

第32層へと進んだレイたちの前に、これまでの純白の虚空とは異なる、赤黒い溶岩の川が流れる、巨大な地下工房のようなエリアが現れた。


ゴーン、ゴーン、と重厚な金槌の音が空間に響き渡っている。


中央の巨大な金床に向かってハンマーを振り下ろしていたのは、筋骨逞しい、しかし全身が半透明の光の数式で構成された、隻腕の老人だった。彼の周囲には、人間界ではお目にかかれないような、神話級の武器の数々が未完成のまま無数に浮遊している。


「ほう……。神の防衛網をすべてハッキングし、人間を一人も殺さずにここまで来たか。面白いガキがいたもんだ」


老人はハンマーを止め、その鋭い眼光をレイの金色の瞳へと向けた。


【鑑定対象:虚空の鍛冶師・ヘパイストス】

真の識別名:【世界システム・武器製造サブプログラム】

状態:千年前、神々のやり方に反発したため、自我を半ば凍結され、ここで死ぬまで武器を作らされている奴隷プログラム。


「はじめまして、ヘパイストスさん。……ずっと一人で、こんなに熱くて暗いところで武器を作らされていたんだ。手がとても傷だらけで、痛そうだ」


レイは老人の半透明の腕を見つめ、困ったように眉を下げて、ひどく痛痛しそうな声をかけた。


「ハッ! 同情のつもりか? 俺はただのプログラムだ、痛みなど──」


「ううん、プログラムだって、千年も同じお仕事をさせられていたら、エラーが溜まっちゃう。寂しかったよね」


レイはヘパイストスに歩み寄り、その半透明の冷たい手に、自分の温かい手を優しく重ねた。


老人は目を見開いた。千年間、神々から「道具」として酷使され、冒険者からは「都合のいいシステム」として消費されてきた自分に、これほどまでに人間的な温かさを持って触れてくれた者は、誰一人としていなかったからだ。


「ガキ……お前、本当に妙な奴だな。……いいだろう、神どもはお前をバグと呼ぶが、俺から見ればお前こそが、この歪んだ世界を直せる唯一の『正解』だ」


ヘパイストスは自嘲気味に笑うと、金床の上に置かれていた、まだ未完成の「透明な剣の柄」をレイに差し出した。


「こいつは、世界システムそのものを直接叩き切るために、俺が神の目を盗んで作り続けてきた未完成の『神殺しの記述デバッガー』だ。だが、俺の権限じゃこれ以上は削れねえ。お前のその【神眼】で、完成させてみろ」


「ありがとうございます、ヘパイストスさん。君の千年の想い、確かに受け取らせてもらいます」


レイの金色の瞳がまばゆく輝き、透明な剣の柄へと光を注ぎ込んだ。


(因果の書き換え──未完成の記述を【完全最適化】。レイの黒大剣と融合させ、新システム【虚空の修正剣】を構築)


キィィィン……!


レイの持つ黒大剣が、まばゆい金色の光のルーンをその身に宿し、世界のシステムそのものを直接『消去』できる、究極のデバッグツールへと進化を遂げた。


「グラシアス(感謝する)、ガキ。……さあ、その剣で、俺を縛るこのクソッタレな工房の記述ごと、すべてを解き放ってくれ!」


「うん。今までお疲れ様、ヘパイストスさん。これからは、自由な空の下で、好きなものを作ってね」


レイは優しく微笑むと、進化した大剣を静かに一振りした。工房を縛っていた神の規制記述が、一瞬で綺麗に消滅し、ヘパイストスの魂は、満足そうな笑みを浮かべながら、自由な光となって世界へと解き放たれていった。

「少しでも面白い、続きが気になると思ってくださったら、ページ下部の【ブックマーク】や【評価】で応援していただけると励みになります!」

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