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第41話:人間界の異変

レイたちがエリアの深部へと潜る中、人間界──特に王都オウラシオンでは、天変地異とも言える凄まじい異変が発生していた。


「な、何だこの力は……!? 体の内側から、魔力が無限に湧き出てきやがる……!」


王都のギルド訓練場。若きBランク冒険者の一人が、己の両手を見つめながら狂喜の声を上げていた。彼の額に刻まれた神の加護の紋章は、通常の数倍の大きさに膨れ上がり、赤黒い不気味な光を放っている。


彼だけではない。王都中の、いや世界中のすべての『加護持ち』たちのステータスが、何の前触れもなく爆発的に上昇していた。Cランクの者が一瞬でAランク級の力を手に入れ、街のいたるところで暴走した魔力による破壊行為が頻発していた。


「これは『奇跡』などではない……! 世界システムが、あのレイという少年を排除するために、全人類の加護を強制的にオーバークロックさせているのだ……!」


ギルド総本山の最奥。総帥ヘンドリクスは、世界各地から届く「冒険者たちの暴走と肉体崩壊」の報告書を前に、青ざめた顔で震えていた。


加護の強制引き上げは、人間の肉体に致命的な負荷をかける。このままでは、数日のうちに世界中の冒険者たちが自滅の途を辿ることになる。神は、レイ一人を殺すために、全人類の戦力を使い捨ての爆弾に変えたのだ。


「神よ……貴方はそれほどまでに、あの少年を恐れておられるのか……」


ヘンドリクスは天を見上げ、絶望の溜息を漏らすしかなかった。


一方、その頃レイたちは、第28層の美しい水晶の回廊を歩いていた。


「マスター、人間界の全加護持ちオブジェクトの記述に、異常な『強制負荷バフ』が書き込まれたのを確認しました。現在、全人類の9割の冒険者が、肉体の限界を超えて暴走状態にあります」


アルテが悲痛な数式の光を点滅させながら、レイにデータを提示する。


「そっか……。神様たちは、僕を止めるために、人間界のみんなの命を人質にしたんだね」


レイは歩みを止め、届けられた人間界のログを見つめた。彼の顔から、いつもの柔らかな微笑みが消え、底の知れない深い悲しみの色が広がっていく。


「レイ……王都の奴らは俺たちを裏切って、散々無能扱いしてきた奴らだぜ。神様が勝手に自滅させてるなら、放っておいてもいいんじゃねえか?」


トールが複雑な表情で尋ねる。


「ううん、それは違うよ、トール。彼らが僕を虐げたのは、神様の作った『加護の格差システム』のせいで、彼らの心が歪められていたからなんだ。彼らもまた、この不完全な世界の被害者なんだよ」


レイはトールの目を見つめ、諭すように言った。その声には、自分を裏切った世界への憎しみではなく、すべてを包み込むような、圧倒的な大愛(優しさ)が満ちていた。


「神様がみんなの命を弄ぶなら、僕がその接続をすべて切り離して(デバッグして)あげる。……もう誰も、神様の都合で死なせたりはしない」


レイの金色の瞳が、かつてないほどに強く輝きを放つ。彼は人間界の全人類を救うため、そして神のシステムを完全に解体するため、さらに速度を上げて深淵の奥へと突き進んでいった。

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