第37話:世界システムの「バグ」と地鳴り
特例で『Aランク冒険者』へと昇格したレイたちの躍進は、もはや誰にも止めることができなかった。
「加護なき超新星・レイ」。その名は、王都の貴族から最果ての冒険者まで、世界中に「恐怖」と「畏怖」をもって響き渡っていた。かつて無能と蔑まれ、荷物持ち(ポーター)として虐げられていた少年は、今や世界の理不尽なルールに抗う者たちの、絶対的な「希望の象徴」となっていた。
しかし、レイたちが『世界の終層』のさらに深部──第19層へと足を踏み入れた頃、世界の情勢は不気味な変貌を遂げつつあった。
ゴゴゴゴゴゴ……!!! と、ダンジョンの深層から、聞いたこともないような不気味な地鳴りが響き渡る。
それと同時に、ダンジョン内の大気に満ちていた白銀の魔力が、まるで水が沸騰するかのように激しく波打ち、歪み始めた。
「マスター、異常事態です」
レイの影に寄り添うアルテが、そのサファイアの瞳に無数の赤いエラーログを高速で走らせながら、深刻な表情で告げた。
「世界各地のダンジョンの記述コードから、想定上限値を遥かに超越した『エラー値』を検出。何者かが、神の加護のシステムそのものを、世界の『外側』から強制的に書き換え、難易度を改ざんしています」
アルテの報告通り、前方から現れたのは、本来ならこの階層に存在するはずのない、全身からどす黒い神聖魔力を放つ変異した上位魔獣の群れだった。彼らの戦闘力は、世界のシステムによる強引なバフによって、通常の数倍──実質的な『Sランク』級にまで引き上げられている。
「なるほど……。僕たちの逆襲が、あまりにも効率的で効きすぎちゃったから、この世界を作った『神様たち』が、焦ってゲームのルールを無理やり変え始めたわけだ」
レイは荒れ狂う魔獣たちの暴走を目の当たりにしながらも、動じる風は一切なく、困ったように眉を下げて苦笑した。その瞳──【神眼の支配者】の金色の輝きが、かつてないほどに深く、昏く、その出力を限界まで引き上げていく。
「相手が神様だろうが、世界そのものだろうが、僕には関係ないよ。……僕たちをバグとして排除しようとするなら、その傲慢なシステムごと、僕の眼で全部ハッキングして、書き換えて(デバッグして)あげる」
レイは腰の黒大剣の柄に優しく手をかけた。
「トール、アルテ、ガウェイン、ブリュンヒルデ、リリス。……ちょっと世界が僕たちに意地悪をしてきているみたいだけど、みんな、僕に力を貸してくれるかい?」
「当たり前だろ、レイ! 世界ごと叩き潰してやるぜ!」
トールが戦鎚斧を掲げ、仲間たちが一斉に不敵な笑みを浮かべる。
最強の絆で結ばれた加護なき軍勢は、世界そのものを敵に回し、その堂々たる一歩を進めた。
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