第35話:加護の完全崩壊
「神を恐れぬ不純物どもめ、聖なる光の前に塵と化せ! ──多重合神聖魔法『ジャッジメント・レイ』!!」
特務騎士団の大隊長の号令とともに、後方に控えていたAランクの魔術師たちが一斉に杖を掲げた。彼らの加護の魔力が共鳴し、天を衝くほどの巨大な白銀の光の魔法陣が展開される。そこから放たれたのは、空間そのものを熱量で消滅させる、絶対的な神の裁きの光条だった。
まばゆい光がレイたちを飲み込もうと迫る。
だが──。
「くすくす……。そんな退屈で、ガチガチに固定されたお行儀のいい術式、一瞬で書き換えられるに決まっているじゃない。──虚空魔法『属性反転』」
レイの隣で、黒い羽をパタパタと揺らしながら、リリスが可憐に指先を鳴らした。
彼女の固有スキル『無限詠唱』により、特務騎士団が放った神聖な光の裁きは、着弾の直前、空間の因果を無視して禍々しい「暗黒の劫火」へと強制変換された。そして、あろうことか、その圧倒的な破壊のエネルギーが、そのまま騎士団の元へと逆流していったのだ。
「な、何だと……!? 我らの神聖魔法が、闇に染まった……!? ぎゃあああああッ!!」
自らが放った最大火力の直撃を受け、前衛の騎士たちが悲鳴を上げて吹き飛んでいく。彼らの強固な聖障壁は、リリスの書き換えによって完全に無効化されていた。
「次は私の番だ。──『不滅の突撃』」
地響きを立てて突進したのは、黒騎士ガウェインだった。彼は大隊長が構える、国宝級とされる最高級の聖盾に向かって、その圧倒的な質量の大剣を容赦なく叩きつけた。
バキィィィン!!! と、凄まじい破壊音が響き渡り、聖盾は木っ端微塵に砕け散った。大隊長は血を吐きながら数十メートル後方へと吹き飛び、氷壁に激突して動かなくなる。
「ひ、引き裂け! ──『神雷の閃光』!」
ブリュンヒルデの細剣が黄金の雷霆となって閃くたびに、Aランクの精鋭騎士たちが、加護の防御バフを一切機能させてもらえず、まるで紙細工のように容易く切り伏せられていった。
わずか数分。王都が誇る最強の特務騎士団は、レイの陣営に指一本触れることもできず、文字通り「完全崩壊」して全滅した。
静まり返った氷の神殿。
レイは、息も絶え絶えに地面に這いつくばる特務騎士団の生き残りの前に、ゆっくりと歩み寄った。そして、腰の黒大剣の切っ先を、その騎士の喉元へとそっと優しく突き立て、いつも通りの穏やかな、しかし凍りつくほどに優しい笑みを浮かべた。
「これが、お前たちの盲信している『神の加護』の限界だよ。……僕たちを無能と呼んだシステムの脆さ、少しは理解できたかい?」
騎士は恐怖に歯をガタガタと鳴らし、レイの金色の瞳を見つめることしかできなかった。神のルールの外側で、世界そのものを書き換える少年。彼こそが、この深淵の真の支配者だった。
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