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神眼の支配者 ~ハズレスキル【鑑定】が覚醒したので、俺を見捨てたSランク(予定)パーティを底辺から置き去りにします~  作者: イヌの名前はあとむ


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第32話:『世界の終層(ワールド・エンド)』の門

人類の勢力圏の最北端、一年中激しい吹雪と猛烈な寒波が吹き荒れる永久凍土の地。そこに、大地を大きく引き裂いたかのような、巨大な奈落の底へと続く漆黒の亀裂が存在していた。


世界で最も深く、最も危険とされる未踏ダンジョン──『世界の終層ワールド・エンド』。


その入り口にあたる上層エリアは、実質的にギルドから許可を得た実力派の『Aランク冒険者』だけが立ち入りを許される、神聖な領域だった。なぜならこの場所は、世界の根幹システムへと繋がっているがゆえに、『神の加護』の魔力が最も高密度で機能する聖地であり、同時に、加護を持たない者にとっては「存在するだけで肉体と精神が不純物として排除される」呪われた拒絶エリアだったからだ。


「う、頭が……頭が割れそうだ……。魔力の密度が、王都のダンジョンとは次元が違うぞ……」


防寒具に身を包んだトールが、入り口の巨大な石門をくぐった瞬間、激しい目まいに襲われたように膝を突きかけた。大気そのものが、目に見えるほどの濃密な白銀の光となってうねっている。


「肯定。このエリアを満たす魔力波形は、既存の神のシステムと100%同調しています。システムは現在、加護を持たないマスター、および適合していないトールを『世界の不純物エラー』と判定し、空間圧力による強制的な排除を試みています」


アルテが、その冷たい無機質な瞳に数式の光を点滅させながら警告する。


周囲の岩壁や氷床から、バリバリと不気味な放電現象が起き、レイたちの肉体を内側から焼き切ろうと、不可視の圧力が襲いかかる。


「そっか……。神様が作ったこの世界は、加護を持たない僕たちのことが、そんなに嫌いなんだ」


レイは寒風に黒髪をなびかせながら、困ったように眉を下げ、ひどく寂しそうに微笑んだ。


だが、その次の瞬間。レイの金色の瞳──【神眼の支配者】が、まばゆい絶対的な支配の光を放った。レイが一歩を踏み出すと、彼の足元から、空間そのものを塗り替えるような金色の幾何学模様の波動が、波紋のように一瞬でエリア全体へと広がっていった。


(書き換え──このエリアの『環境記述コード』をハッキング。加護の有無による生存制限を【完全無効化】)


ピキィィィン……! と、ガラスが鳴るような美しい音が空間に響き渡る。


すると、先ほどまでトールを押し潰そうとしていた強烈な目まいと空間の圧力が、まるで最初から存在しなかったかのように、一瞬できれいに霧散していったのだ。代わりに、春の木漏れ日のような、どこか暖かく心地いい空気がレイたちの周囲を優しく包み込む。


「お、おい……!? 急に身体が軽くなったぞ!? 寒さまで和らいだ気がする……!」


トールが驚愕して自分の手を見つめる。


「神様が作ったルールなんて、ただの脆弱な初期プログラムに過ぎない。さあ、みんな、体調は大丈夫?」


レイはトールとアルテに優しく微笑みかけた。背後に控えるガウェインとブリュンヒルデも、レイの底の知れない【神眼】の力に、静かに感嘆の吐息を漏らしている。


「世界のシステムごと、自らの領域に書き換えるとは……。流石は我が主、素晴らしい手際です」


ブリュンヒルデが細剣の柄に手を当て、深く一礼する。


「ううん、みんなが怪我をしなければ、それでいいんだ。……さあ、この『世界の終層』の奥に、僕たちと同じようにシステムから見捨てられて、寂しい思いをしている子が眠っているみたいだ。早く助けに行ってあげよう」


レイは穏やかな足取りで、人類未踏の深淵へと、一歩を踏み出した。

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