第26話:ゼノスギルド、震撼
「──おい、嘘だろ……?」
「冗談だろ……あの『聖なる夜明け』が、全滅……?」
境界都市ゼノスの冒険者ギルドの広大なロビーは、まるでお通夜のように静まり返っていた。
カウンターの上には、レイがダンジョンから持ち帰った、ルキウスをはじめとする『聖なる夜明け』のメンバーたちのギルドバッジ(死亡が確認された際に自動でロックされる遺品)が、静かに並べられていた。
昨日まで「加護なしの無能」と嘲笑っていた青年が、街のトップエリートを一人残らず返り討ちにして戻ってきたのだ。周囲の冒険者たちは、レイと目が合うことすら恐れ、ガタガタと震えながら一斉に距離を取る。
「レイ君、少し奥の部屋へ来てくれるかい?」
受付の奥から姿を現したのは、顔の左半分に大きな切り傷を持つ、隻眼の頑健な老男。ゼノスギルドの支部長であり、かつて元Aランクの猛者として名を馳せたオズワルドだった。
応接室のソファに腰掛けたオズワルドは、レイが淹れてもらったハーブティーを一口すするのを見つめながら、重々しく口を開いた。
「ルキウスの遺体を回収班が確認した。……奴は、禁忌の魔薬『神の涙』を使っていたな。体内の魔力回路が完全に焼き切れていた」
「はい。とても苦しそうだったので、少しだけ楽にしてあげました」
レイは困ったような笑みを浮かべ、穏やかに応じた。
「……お前がやったことは、ギルドの規約上、完全な正当防衛だ。あいつらが先に仕掛けた証拠も、アルテ嬢の記録魔法できれいに残っているからな。だがな、レイ。ルキウスは王都のバルト伯爵家の息がかかった男だ。これで、あの権力狂いの貴族どもは、いよいよお前を本気で潰しにくるぞ」
オズワルドの隻眼が、レイの金色の瞳をじっと見据える。
「ありがとうございます、オズワルドさん。僕のことを心配してくれて、とっても嬉しいです」
レイはふわりと優しい笑みを崩さないまま、しかしその瞳の奥にある、絶対的な意思の光をオズワルドに見せた。
「でも、大丈夫です。売られた喧嘩は、相手の家が綺麗に潰れるまで、買い占めるのが僕の主義ですから」
その静かな、しかし毛が逆立つほどの絶対的な自信に、元凄腕冒険者であるオズワルドすら、背筋に冷たい戦慄が走るのを自覚せざるを得なかった。
「少しでも面白い、続きが気になると思ってくださったら、ページ下部の【ブックマーク】や【評価】で応援していただけると励みになります!」




