第23話:ダンジョン『大巨人の足跡』への逆襲
ルキウスとの接触から数時間後。レイたちは境界都市ゼノスの近郊にあるBランク推奨ダンジョン『大巨人の足跡』の第3層へと足を踏み入れていた。
このダンジョンは、古代の巨人が歩いた跡がそのまま巨大な地下迷宮になったとされており、岩壁のいたるところに巨大な足跡の窪みが存在する、薄暗く不気味な場所だった。
「レイ、さっきの街の奴ら……『聖なる夜明け』の残りのメンバーだな。後ろから5人、隠密スキルを使って執拗に追ってきてるぜ。殺気もムンムンだ」
トールが『竜殺しの戦鎚斧』の柄を握り直し、背後を警戒しながら低く呟く。
「うん、分かっているよ。わざわざ薄暗いダンジョンの中まで追いかけてきてくれるなんて、熱心な人たちだね」
レイは松明の光に照らされながら、困ったような苦笑いを浮かべた。
だが、その視界──【神眼】の中では、背後の暗闇の中で加護の隠密スキルを使用し、息を潜めて近づいてくる5人の暗殺職たちの位置が、鮮やかな赤色でくっきりとハイライトされていた。
「マスター。私がここで空間を固定し、一瞬で圧殺しましょうか?」
アルテが冷淡な目で背後を振り返る。
「ありがとう、アルテ。でも、君の手をそんな風に汚す必要はないよ。……ちょうどいい『おもちゃ』が前方に用意されているしね」
レイが視線を向けたのは、第5層へと続く狭い一本道の床だった。
そこには、千年前のダンジョン作成者が仕込んだ、極めて巧妙な古代の術式──『落石の罠』が存在していた。本来であれば、特定の不規則な床を踏むことで作動する仕組みだ。
【エリア情報:古代の術式(落石の罠)】
オブジェクト状態:休止中。
起動条件変更:レイの後方を歩く「特定の周波数(加護の隠密魔力)」を持つオブジェクトが通過した瞬間、に書き換え。
「よし、これでいいかな」
レイが小さく指先を鳴らす。神眼の光が床の術式へと吸い込まれ、そのソースコードが書き換えられた。
レイたちがその罠のエリアを何事も vacancies(何事もなく)通過した、数秒後。
「──今だ、やれ!」
暗闇から、バルト伯爵家の刺客を兼ねた暗殺者たちが、加護による速度バフを乗せて一斉に飛び出してきた。
しかし、彼らが一歩を踏み出した瞬間。
ゴゴゴゴゴゴ!!! と、ダンジョン全体を揺るがすような地鳴りが響き渡った。
「なっ……!? 罠だと!? 索敵職は何をしていた!」
「ば、馬鹿な! 罠の感知には引っかからなかったはず──」
気づいた時には、すべてが遅すぎた。
天井の岩盤が丸ごと剥がれ落ちるかのように、数十トンもの巨石が容赦なく降り注ぐ。暗殺者たちは加護の障壁を展開しようとしたが、レイによってあらかじめ「障壁の耐久値」も最低値にハッキングされていたため、紙のように容易く引き裂かれた。
ズガァァァン!!!
激しい土煙とともに、暗殺者たちは悲鳴を上げる暇すらなく、巨石の下へと圧殺されていった。
「神様の加護があれば、どんな危険からも守られると信じていたのかな」
レイは土煙を手で払いながら、静かに、そして酷く哀れむような目をその巨石に向けた。
「命の価値は、神様が作ったシステムが決めるものじゃないんだ。……さあ、トール、アルテ。先へ進もう」
レイは二人に微笑みかけると、死臭の漂う通路を平然と進んでいった。
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