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第20話:置き去りの証明

翌日、王都のギルドマスター室。


レイは支部長のバルトスと向き合っていた。


「レイ、お前が持ち込んだ『星詠みの英知』、魔法大学の教授連中がひっくり返って喜んでたぞ。おかげでギルドの面目も丸潰れ──いや、大立ち回りだ」


バルトスが豪快に笑う。


「喜んでもらえて何よりです」


レイは淡々と応じる。手元には、今回のオークションで得られた、想像を絶する額の金貨の山があった。


「お前のその、遺物の『真価』を見抜く眼と、それを復元する力……もはや王都の誰も、お前をただのCランク冒険者とは見ていない。近いうちに、さらに上のランクへの昇格試験を推薦させてもらう」


「ありがとうございます、バルトスさん」


ギルドを出たレイを、トールとアルテが出迎えた。

「マスター」


アルテが静かに歩み寄る。


「ああ。これで第1段階の資金調達と装備の強化は完了だ。これからは、王都の周辺だけじゃなく、世界中に眠る『神話の遺跡』へ本格的に遠征するよ」


「おう! どこまでもついていくぜ、レイ!」


トールが拳を突き出す。


その時だった。


ギルド前の広場の喧騒の向こうから、凄まじい「殺気」がレイたちに向けて放たれた。


「レイィィィィィッ!!!」


現れたのは、目を血走らせ、全身から黒いドス黒い魔力を噴き出しているガイだった。


衣服は破れ、肌には紫色の血管が浮き出ている。明らかに『禁忌の魔薬』を過剰摂取し、理性を失った化け物の姿だった。手には、どこからか盗んできた錆びた剣を握っている。


「ガイ……? 何だ、その惨めな姿は」


レイは冷ややかな視線を向けた。


「お前のせいだ! お前が死ななかったせいで、俺の人生はめちゃくちゃだ! 死ね! 死んで俺にその眼を寄越せぇぇぇ!」


レベル限界を無理やり突破したガイが、突風のような速度でレイへと突進してくる。その速度は、以前のガイを遥かに凌駕していた。周囲の冒険者たちが「ひっ、暴走者だ!」と悲鳴を上げて逃げ惑う。


だが、レイは一歩も動かなかった。抜刀すらしない。


「アルテ」


「了解。──『絶対障壁』」


キィン、と美しい音が響き、レイの目の前に1枚の透明な光の盾が展開された。


ドガァァァン!!!


ガイの渾身の突進と剣撃が、その光の盾に激突する。凄まじい衝撃波が広場を駆け抜けたが──アルテの展開した障壁は、かすり傷一つ付かず、ガイの一撃を完全にシャットアウトしていた。


「な、何だと……!? 俺の限界を超えた一撃が、遮断された……!?」


ガイが血の涙を流しながら驚愕する。


レイは、盾の向こうで息を切らすガイを、哀れみの目で見下ろした。


そして、静かに【神眼の支配者】を発動させる。


【ガイ(魔薬暴走状態)】

筋力:320(一時的)

耐久:80(崩壊寸前)


「ガイ、君は僕が自分に復讐しにやってくるとでも思っていたのか?」


レイの低い声が広場に響く。


「え……?」


「勘違いするな。お前たちへの復讐なんて…、お前たちはもう、僕の視界にすら入っていないんだよ」


レイは神眼の意識をガイの『筋力』へと向けた。


(書き換え──【1】に)


『承認。対象のステータスを改ざんします』


パチパチ、とガイの周囲の黒い魔力が霧散し、頭上の数値が「1」へと固定された。


「あ、が……あ……!?」


限界を超えていた肉体から一瞬で力が抜け、ガイはその場にバッタリと崩れ落ちた。魔薬の反動と、ステータス低下の二重の負荷により、彼は二度と冒険者として戦えないほどの廃人へと変わり果てた。


静まり返る広場。レイは倒れたガイを一瞥もせず、トールとアルテを振り返った。


「行こう。僕たちの目的地は、こんなところじゃない」


「おう!」


「御意、マスター」


かつて自分を最底辺だと見下した者たちを圧倒し、文字通り「背中すら見えない場所」へと置き去りにしたレイ。


底辺の荷物持ちから、世界を紐解く神話の攻略者へ。

青年レイの本当の旅が、今、ここから世界中へと広がっていくのだった。

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