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神眼の支配者 ~ハズレスキル【鑑定】が覚醒したので、俺を見捨てたSランク(予定)パーティを底辺から置き去りにします~  作者: イヌの名前はあとむ


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第2話:神眼の起動

『──【神眼の支配者ディバイン・アイ】を起動します』

脳内に響く冷徹なアナウンスと同時に、レイの視界は一変した。

世界から色が消え、すべてがモノクロームの静止画のようになる。その中で、眼前に迫るミノタウロス・バリアントの巨体だけが、不気味な赤い光を放っていた。

いや、それだけではない。

怪物の頭上に、これまで見たこともない膨大な「文字列」が浮かび上がっていたのだ。

【ミノタウロス・バリアント】

状態:狂暴化(肉体強度+50%)

HP:4500 / 4500

MP:120 / 120

筋力:280

耐久:310

敏捷:150

【保有スキル】

・『剛力(ランクC)』:一時的に筋力を1.5倍にする。

・『超再生(ランクC)』:1秒ごとにHPを50回復する。

・『痛覚鈍麻(ランクD)』:ダメージによる怯みを無効化する。

(なんだ……これは……!?)

かつての【鑑定】とは明らかに一線を画す情報量。まるで、世界の裏側にある設計図を覗き込んでいるかのような感覚だった。

だが、驚いている暇はない。

文字列の最下部に、明滅する奇妙なカーソルと、未知の音声案内が続いた。

『──権限を行使してください。現在、あなたには対象の「ステータス」および「保有スキル」の改ざん、または奪取が許可されています』

(改ざん……奪取だって……!?)

レイの頭に、電撃のような閃きが走った。

もし、この文字通りの意味なら──。

「ふざけるな……っ! 誰がこんなところで死ぬかよ!」

レイは必死に手を伸ばし、視界に浮かぶミノタウロスのステータス画面へ意識を集中させた。

(書き換えろ! あいつの『耐久』と『筋力』を──ゼロに!)

『警告:対象との実力差(ランク差)が大きすぎるため、完全なゼロへの改ざんは拒絶されました。……代替案:数値を「1」に固定します。よろしいですか?』

「構わない! やれ!」

レイの瞳の金光が、さらに激しさを増す。

その瞬間、ミノタウロスの頭上の文字列がパチパチと火花を散らし、書き換わった。

筋力:280 → 1

耐久:310 → 1

「グル……!?」

モノクロの世界が動き出す。

直後、ミノタウロスが苦悶の声を上げた。自らの巨体を支えるだけの筋力を失い、自重によってボキボキと骨が折れる音が迷宮に響き渡る。

ドガァァァン!!

豪快に振り下ろされるはずだった戦斧は、その自重に耐えかねて怪物の手から滑り落ち、地面を激しく叩いた。ミノタウロスはまるで糸の切れた人形のように、その場に崩れ落ちた。

「はぁ、はぁ、はぁ……!」

レイは呆然とそれを見つめた。

Aランクの化け物が、ピクリとも動けず、地面に這いつくばって苦しげな息を漏らしている。

(本当に……書き換わったのか? スキル一つで、世界のルールを……)

だが、まだ終わっていない。

動けないとはいえ、怪物のHPはまだ残っている。そして近くには、ガイたちに見捨てられて気絶している前衛の戦士がいた。

「グルル……」

ミノタウロスがなおもレイを睨みつけ、這い寄ろうとする。『超再生』のスキルが働き、失われた肉体を無理やり修復しようとしているのだ。

(そうか、スキルも奪えるんだよな……)

レイは再び『神眼の支配者』を意識した。

「お前のスキル、全部俺がもらう!」

『申請を受理。スキル【剛力】【超再生】【痛覚鈍麻】を奪取します。──成功しました』

カチリ、と頭の中で何かが嵌まる音がした。

その瞬間、レイの体内に未知の熱いエネルギーが奔流となって流れ込んでくる。細かった腕の筋肉が引き締まり、五感が劇的に研ぎ澄まされる。

一方で、スキルを完全に奪われたミノタウロスは、肉体の崩壊を止める術を失い、完全に干からびた肉の塊へと変わっていった。

『対象の死亡を確認。経験値を獲得しました』

『レベルが上昇します。Lv 1 → Lv 15』

『条件達成:Aランク魔物のソロ討伐。ボーナスポイントが付与されます』

体の奥底から湧き上がる圧倒的な「力」。

レイはゆっくりと立ち上がった。今まで背負うだけで精一杯だった重量100キロを超えるバックパックが、今は羽毛のように軽く感じられた。

ステータスカードを取り出し、恐る恐る【鑑定】してみる。

【レイ】

ランク:F

レベル:15

【固有スキル】

・『神眼の支配者(ランク:測定不能)』

【獲得スキル】

・『剛力(ランクC)』

・『超再生(ランクC)』

・『痛覚鈍麻(ランクD)』

「あはは……なんだよ、これ……」

乾いた笑いが漏れた。

たった一戦で、彼は平凡な冒険者が一生かけても到達できない領域の力を手に入れてしまったのだ。

「う、うう……」

背後で、気絶していた『暁の剣』の戦士がうめき声を上げた。意識を取り戻しかけている。

レイは冷徹に状況を整理した。

自分がこの力を手に入れたこと、そしてAランクの魔物を倒したことが知れ渡れば、確実に面倒なことになる。特に、自分をハメたガイたちが黙っていないだろう。

「……行くか」

レイは散らばった素材の中から、ミノタウロスの『魔石』だけをポケットにねじ込んだ。Aランクの魔石だ。換金すれば、しばらく遊んで暮らせるだけの大金になる。

気絶した戦士を安全な場所に引きずり出し、最低限の止血だけを施すと、レイは静かに第5層の闇の奥へと歩き出した。

上の層に戻ってガイたちに復讐する?

いや、そんな小さなことは後だ。

(俺を見捨てたこと、せいぜい後悔させてやる。……まずは、このダンジョンの底まで突き進む!)

少年レイの、世界を揺るがす「成り上がり」の歯車が、いま確実に回り始めた。


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