第18話:特異点、再びダンジョン
数日後、レイたちの姿は、王都でも指折りの高難度ダンジョン『蒼穹の塔』の第15層にあった。
通常、Cランクパーティが立ち入るには危険すぎる領域。だが、今のレイたちにとっては、ただの「検証の場」に過ぎない。
「ギャシャアアッ!」
襲いかかってくるのは、全身が青い鱗で覆われたBランクの魔物『レイク・ワイバーン』。鋭い爪が空気を引き裂き、トールへと迫る。
「させるかよ! 『不屈の盾』!」
トールが前に出て大盾を構える。突進の衝撃をトールが完璧に受け止めた、その一瞬。
「アルテ、狙撃して」
「了解。魔力収束砲、起動」
レイの指示を受け、アルテが静かに右手を突き出す。彼女の指先から、眩い純白の熱線が放たれた。
ズドォォォン!!!
一撃だった。Bランクのワイバーンが、その自慢の硬鱗ごと、一瞬で消滅して光の粒子へと変わる。
「ふぅ、相変わらず容赦ない威力だな、アルテちゃん」
トールが盾を収めながら感心の息をもらす。
「当然の帰結です。マスターの戦術指示が最適であるため、エネルギーの無駄がありません」
アルテは淡々と応じるが、その目はまっすぐにレイを見つめていた。
『対象の討伐を確認。レベルが上昇します。Lv 25→ Lv 27』
(順調だな。アルテとの連携、そして神眼の先読みがあれば、Bランクダンジョンでも全く危なげがない)
レイはドロップしたワイバーンの魔石を拾い上げた。
通常の冒険者なら、これだけで大喜びする高級素材だ。だが、レイの目的はそこではない。神眼が『蒼穹の塔』の構造そのものをスキャンし、通常のルートとは異なる「隠された空間」を捉えていた。
「トール、アルテ。そこの壁の、3番目のレンガを押して」
「え? 壁か?」
トールが言われた通りにレンガを押し込むと、ゴゴゴ、と重い音を立てて隠し扉が開いた。
その奥にあったのは、現代の誰も足を踏み入れたことのない、埃を被った古代の宝物庫だった。
「やっぱりあった」
レイが中に入ると、中央の祭壇に一本の『朽ち果てた杖』が置かれていた。宝石は割れ、木製の手元は腐りかけている。
「レイ、さすがにそれはもうただの木くずだぜ?」
トールが言うが、レイは迷わず杖に手を伸ばした。
【鑑定対象:朽ち果てた杖(現代の評価:ゴミ)】
──真の識別名:【星詠みの英知(神話級・大賢者の杖)】
「アルテ、歴史ログの同期を開始する」
「了解、マスター。復元魔力を供給します」
二人の力が杖へと流れ込むと、腐った木肌がみるみるうちに大樹の息吹を取り戻し、割れていた宝石が星空のような輝きを取り戻した。
復元完了:【星詠みの英知(ランクB・復元度40%)】
「よし。これを王都の換金所に持っていこう。現代の魔術師たちが、どんな顔をするか楽しみだ」
レイは不敵に笑った。自分が強くなるだけでなく、世界中に眠る「ガラクタ」を神話へと変えて市場に流す。その行為が、どれほど王都の勢力図をひっくり返すことになるか、彼は十分に理解していた。
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