006:検査
翌日。ゴーレム車を出してエマを病院へと連れて行く。そこで一日がかりで検査なのだが、体の節々が固くなり始めていて検査着に着替えるのも一苦労だった。不安そうなエマを少しでも元気づけるために努めて明るく、笑顔で対応しているつもりだが果たして上手く行っているだろうか?
内心はグチャグチャで、気を抜くと膝から崩れ落ちてしまいそうだ。
「エマ……」
何と言って声を掛けたらいいのか分からない。
「ロイ……」
エマが俺の名を呼び、そして検査着を指して一言。
「この服って結構エッチだよね」
ぶふっと吹き出してしまう。
「突然何を言い出すんだ?」
「いえ。だって、こう生地は薄いしスカスカだしさ」
そんな俺達の会話を聞いていた看護師もクスクスと笑っている。
「ロイ。ごめんね。ねぇ1つお願いがあるだけど?」
「あぁ。何だ?」
「私が結晶化病だったら……私をロイの仕事の役に立てて欲しい。私もロイの役に立ちたいの」
「おい!」
「できる限り協力するから。ね?」
一瞬戸惑ったが、すぐに頷いた。
「あぁ。なら治療薬が出来たら一番で使ってやる!」
「ふふ。うん」
そして努めて明るく彼女が告げた。
「もしさ……間に合わなかったら、その……それでも続けてね?」
間に合わない?
それって死ぬってことか?
エマが?
俺は首を左右に振って、その怖い考えを振り払った。
「死なせないさ。絶対に間に合わせてやる」
彼女の少し硬くなった手を握りしめる。
でも、実際どうしたらいい。治療薬づくりをやりつつエマの傍に居るというのは無理だ。いや。そうでもないか。昼間はエマの傍に居ながら夜を研究に当てるというのが現実的か。
「睡眠時間を削ることになるが……それは今までだってやってきたことだ」
俺にならやれるさ。
決意を新たに今後の予定を組むのだった。
しかし、この検査が思うようにいかなかった。いや。検査自体はスムーズに進んだのだが、データ結果で予期せぬ数値が出たのだ。
「何だ、この数値は?」
医者が首を傾げている横で、俺も首を傾げる。医者が話し始めた。
「結晶化病の専門家に言うのもなんですが。症状だけを見れば確かに結晶化病の初期症状です」
そこで医者は一度言葉を切った。
「ですが脳波の反応だけが異常です。非常に活発化している。普通は鈍化していくのに、です……」
俺はそれでも彼女の言語能力や記憶力の低下が観られたことを告げると医者も同意する。
「えぇ。確かに。テストでもそう出ています。ですが実際には脳波だけは異常な数値が出ている。これは今までなかったことです」
「そんなはずはない……」
自分でも何に対していったことなのか分からないが、思わず口から出ていた。
これはどう解釈したらいい。俺達の様子を見ていたエマが俺の腕を掴んだ。
「どうした?」
「うん。ねぇ。それなら何故そうなっているのかをロイが調べてくれない?」
「おい!」
「私はロイに任せたい」
「でも……」
俺は弱気を振り払うように一度だけ首を左右に振った。
「分かった。君の体に……脳で何が起きているのかを調べよう。もしかしたら何かの突破口になるかもしれない」
そう口には出したが、同時に胸の奥で別の声もした。
間に合わないかもしれない、と。




