011:再生
視界が再び闇に閉ざされた。
「エマ!」
呼びかけても返事がない。
「どこだ。エマ!」
闇の中で呼び続ける。
「返事をしてくれ!」
呼び、求め、そして……名を呼ばれた気がした。
「エマ!」
その瞬間。体が一瞬の浮遊感。その直後、全身に痛みを感じた。
「いてて」
目を開けて体を起こすと、どうやらベッドから落ちたらしい事が分かった。慌てて視線をエマに向けた。そこには結晶化したままのエマ。
「夢?」
そんな……嘘だ。手をエマへと伸ばした直後。エマの結晶にヒビが入った。そしてポロポロポロポロと崩れ落ちていく。
「おい。嘘だろ。やめてくれ! エマが!」
止める間もなく完全に崩れ落ちてしまった。キラキラと朝日を反射して輝く結晶の欠片。そこに、もうエマの形はどこにも残っていなかった。
「……嘘だ」
声にならない声が漏れる。手を伸ばしても、掴めるものは何もない。
唖然とその様子を見ていたら、驚くことが起こった。今度は結晶の欠片が輝き出したのだ。そして0と1の数字が羅列され始める。それは何かが書き換えられていくようだった。次第に人の姿へと変わっていく。骨、筋肉、神経、血管、皮膚が再構築されていく。今。エマが新たに作られている。情報生命体が言っていた言葉を思い出した。再構築されたエマは本当に以前のエマなのか、と。それは本当にエマなのか。それとも……エマを模した何かなのか。それでも「……戻ってきてくれ」と祈った。
再構築は5分もかからずに終わった。そこには完全に以前のエマが居る。ベッドで横たわり、ただ寝ているだけに見える。呼吸もしている。皮膚も光を反射なんてしない。透けたりもしていない。異変前のエマの体だ。
「エマ」
そっと近寄り、その体に触れてみる。柔らかく弾力があって温もりも感じられる。もう一度呼んでみる。
「エマ」
「……ん~?」
返事があった。
「もうちょっと寝かせてよぅ」
寝ぼけているようだ。思わず顔が綻んだ。
「エマ……起きて? 朝だよ」
申し訳ないが起きてもらおう。声が歓喜で震えている。いや全身が震えている。
しばらくエマの反応を待っていると、エマの瞼が動き、ゆっくりと開いた。そしてその視線が俺を見て呟いた。
「ロイ……おはよう」
熱い涙が頬を伝い落ちていくのがわかる。
「おはよう。エマ」
「どうして泣いているの?」
どうしてって……さっきのことを覚えていないのか?
「エマ。記憶が?」
確認してみたところ、ここ2ヶ月ほどの記憶が欠落していることが分かった。特にあの集合意識の中のことに関してはすっぽりとだ。他にも何かしら喪失しているかもしれないが、今は確かめようがない。少なくても見た感じでの異常が見当たらない。失われた二ヶ月。その中にあったはずの時間。それを思うと胸の奥がわずかに軋んだ。だが……。
「……いや」
今は、いい。
なので、俺は涙を拭いて、エマに微笑んだ。
「朝食にしよう。何が食べたい?」




