49 心地よい関係
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勝手知ったるチャリオットの執務室へ行こうと受付前を通り過ぎると
受付のお姉さんに声を掛けられた。
「失礼ですが、どちらへお出ででしょうか?」
「チャリオットにちょっと用があるので執務室にお邪魔しようかと」
「お約束はございますか?」
対応は丁寧な感じだけれど目が笑っていない。
そう言えばいつもは私一人だし、
称号のお陰で見過ごされていたんだろうけど、
今日はぞろぞろと三人も連れ歩いていてどう見ても不審者だよね。
「ごめんなさい、忘れていました。
ギルド長に面会を申し込みたいのですが」
私がそう言って頭を下げると
「少々お待ちください。」
そう言って執務室へと入っていった。
暫くして戻って来たお姉さんに
「失礼ですがお名前をお伺いしてもよろしいでしょうか?」
そう聞かれ、
「アオイと言います。」
そう答えると、お姉さんは慌てたように執務室へと消えて行った。
すると間もなくして
「ああ、アオイさんお待ちしてました。」
何だかご機嫌な様子のチャリオットが現れ、
急かすように執務室へと通された。
「何だかこの間と違って今日は歓迎ムードだね、何かあった?」
「少しばかりアオイさんにお願いがありまして。」
「分かった、じゃぁその前に私のお願いを聞いてくれる?」
揉み手でもしそうな雰囲気のチャリオットを制して言った。
どんなお願いをされるのか想像も出来ないけれど、
ここに連れて来た三人をまずはどうにかしない事には
私が落ち着かない。
「そう言えば今日は見慣れない方々をお連れの様ですね。」
「うん、ダムデムで召喚された人達だよ。
この人達のこれからを相談に乗って貰おうと思って連れて来た。
どうにかしてくれる?」
「お三人共ですか?」
「そう、チャリオットが会いたがってた忍者もいるよ。」
「私、会いたがっていましたっけ?」
「あれっ、違ったっけ?」
そんなやり取りを黙って聞いていたニックさんが
「お願いします。」と言うと
「「お願いします。」」とケント君とミノル君も頭を下げた。
「取り合えず冒険者登録して、ここのダンジョン結構稼げるし、
その後ゆっくり何をするかを考えれば良いと思うんだけど。」
「分かりました、冒険者登録ですね。」
「そうそう、ミノル君は製造とか研究がしたいそうだから
私が個人的に何か開発でも頼もうかと思うんだけど、
そう言うのってどうしたらいいと思う?」
「まずはそういう施設を建設するのが先決かと思いますよ。」
「その場合この未開の森に適当に建ててもいいの?」
「私の方で許可を出しておきましょう。」
「ありがとうチャリオット、本当に頼りになるわ」
三人を置き去りにどんどん決まる処遇に
ケント君もニックさんもミノル君も口を挟む事なく
大人しく聞いていた。
というより、付いて来れなかっただけかも知れないが、
とりあえずは命を狙われる心配のない所で、
ゆっくり思う様にして欲しいと思ったのだった。
冒険者登録と街の案内のために
チャリオットに呼ばれた係員に連れられ
三人は執務室を出て行った。
「それでお願いって何?」私が聞くと、
「その前に未開の森のダンジョンの報奨金なのですが、
アオイさんと連絡が取れず関係書類などに
私の名前でサインしてしまいました。
なので、ダンジョン発見の功績が私の名前になってしまった事
まずはお詫びさせてください、本当に申し訳ありませんでした。
勿論褒賞金はアオイさんにお渡しいたしますので、
どうかお許しください。」
「いいよ別に、お金は欲しいけれど名声は望んでないし。」
「そうですか!それは誠にありがとうござます。」
チャリオットは心底ほっとした感じで嬉しそうに笑った。
「それから堆肥の件ですが、早速報告いたしましたところ、
すでに始めたのですが結果が分かるのはまだ先になりますので
その件に関しては結果次第何かしらの褒章をと考えているようです。」
「だからいいよ別にそんな事は、
それより本当に小麦の開発を早急にお願いしたいよ。」
「その件は私も強くお願いしておきましたのでご安心を。」
「うん、分かった。まぁ、期待しながら待ってるよ。
で、お願いって結局なんだったの?」
私がそう尋ねると、少し思い悩む様子を見せてから
意を決したようにしてチャリオットは言った。
「私をアオイさんの旅に同行させてください。」
一瞬何を言っているのか理解しきれず、
「へっ」っと何だか気の抜けたような返事をしてしまった。
「もちろん今すぐという訳には行きません、
この街のお陰で未開の森西地区は大分開拓が進みましたし
未開の森のダンジョン近くにも新たな街も建設中です。
近く北部辺りまで街道を伸ばしモーデル国へと繋げるため
両国間の友好条約締結などの問題の為にも
本当にこの街は重要になっています。
なのでギルド長としての雑務も多忙を極めているというより、
冒険者ギルドとしての業務よりその他の業務に追われ過ぎて
自分を見失いつつあるんです。
お願いです、私をここから連れ出してください。」
一気に捲し立ててから
潤んだ瞳で懇願するように私を見つめてくる。
この人は自分の美しさの使いようを本当に良く分かっている。
そんな風にお願いされたら断り切れない乙女心を上手に擽る。
「新たなギルド長が来ましたら、業務の引継ぎなどもありますし
そうですねひと月ほど待っていただければ一緒に旅立てます。」
「何だかそれって、私がお願いした様な言い方だよね?」
「いえ、けしてそんなつもりではないのですが、
私を同行させると彼方此方の冒険者ギルドで
少しばかりの無理が効きますよ。この国内でしたら尚更に。」
と、悪代官真っ青の笑い方をするチャリオット。
「じゃぁ私は、ダムデムで攻略途中のダンジョンを攻略して
目的の召喚紋壊しを終わらせてくるよ。」
そう私の予定を話すと
「そんな楽しそうな事私も連れて行ってくださいよ。
独りでなんてズルいです、私も冒険がしたいんです。」
駄々をこねる様にチャリオットが言うのでじゃぁと、
ミノル君のための開発施設の建設をして
久しぶりにスライムダンジョンのモンスターハウスで
鞭のスキルレベル上げでもしようかと
新たな予定を考えるのだった。
なんだかんだ言って私はチャリオットに甘かった
と言うより、遠慮も警戒もしなくていい関係が
心地良くなっていたのかもしれない。
読んでくださりありがとうございます。




