表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
亡命王子は星を導く~運命の婚約者と祝福された結婚~  作者: 和田 モエコ
第三部 エアデーン【再婚約編】

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

128/205

第124話 議会 2

「アレクシス・セイレーン・セントレナード、タルール・シェグファ藩国よりジーラント帝国に渡り、アンドリュー前国王陛下に秘密裏に与えられた『魔鉱石供給量の回復』の任を果たして参りました」

 

 アレクシスは、オリヴァールが国王に即位する前に、「亡命するように」国外に出ていたが、それは前国王陛下からの任務であり、「亡命していたのではない」と暗に議場に告げた。

 

 もちろんアンドリュー前国王崩御時、十四才だったアレクシスに、そのような密命などなく、彼がでっち上げたものだったが、彼の今までの功績から、彼の発言をこの場で問い(ただ)す者は、誰もいなかった。

 

「帰国してすぐ『星の塔』に向かい、『星の嵐』がグレーンフィーン領に向かっていることを知りました。そのまま現地に飛んでおりましたので、帰国のご挨拶が遅れましたことをお詫び申し上げます」

 

 そう言って頭を下げながら、少しも悪びれていないアレクシスの堂々とした様子に、オリヴァールは苛立ちを覚えた。

 

 ──この小賢しいことを()かす甥は、自分がつい先程、「帝国の手先となった裏切り者」と(ののし)っていたのを聞いていたはずなのに、気にも留めず、平然としている……。

 さも今まさに現地から直行で戻ってきたかのように、場違いな断熱コートを着ているのも白々(しらじら)しい──。

 

 オリヴァールは忌々(いまいま)しげに、アレクシスを睨み付けた。

 

 

 アレクシスは涼しい顔で、王の視線を無視して立ち上がると、グレーンフィーン領の現状についての報告をしたいと、議長に申し出た。

 許可されると礼を言い、議場に向かって訴えた。

 

「グレーンフィーン領ですが、領主グレーンフィーン伯爵の的確な判断により、多くの住民が『星の嵐』に備え、避難していたお陰で、領民には怪我人こそあれ、死者はおらず、人的被害は最小限に抑えられました。ですが、本日、ポートダリヤームの漁協に所属する船が転覆しているのが発見され、問い合わせたところ、五名の乗組員が行方不明となっているようです」

 

 アレクシスは、自身も先程知った、今日の夕刊で報じられるであろう最新の情報を明らかにした。

 

「グレーンフィーン領においても、住民の生活の糧である漁船が数隻破損し、家屋も浸水被害を受けるなど、元の生活に戻るにはしばらく時間がかかると思われます。岸壁が一部崩壊するなど、港湾整備にも負担を強いることになります。まずは、行方不明者の捜索を支援し、被害を受けた者達に、エアデーン王国を守る王家として、補償して(しか)るべきだと思いますが、如何でしょうか?」

 

 と国王に訴えかけるアレクシスの瞳には、(いな)とは言わせぬ力が籠っており、国王オリヴァールは眉根を寄せ、片手で口を覆い、深く熟考しているように見えた。

 

 だがよく見ると、国王の目は細かく揺れて泳ぎ、歯は小刻みな音を立て、冷や汗をかいている……。

 そんな玉体の変化に……それが拡張脳機能に潜入されている最中だとは……誰も気が付かなかった。

 

 やがて、セイレーン・オリヴァール国王は、玉座から立ち上がり、フラリと前へ進み出ると、力無くも、はっきりと議場に向かって宣言した。

 

「……(あい)分かった。まずは行方不明者の早急(さっきゅう)な捜索を、王家としても支援する。被災したグレーンフィーン伯爵及び領民には、原状回復への費用を補償し、王家より見舞金を贈らせよう。また、神殿の人事及び魔鉱使用配分を、適宜見直しさせることにする」

「ありがとうございます。国王陛下の慈悲深いお言葉に、国民も安堵することでしょう」

 

 国王の裁可に対し、セイレーン・アレクシス王子は、深々と頭を下げて感謝を伝えると、力強く続けた。

 

「今後このような事態を招かないように策を練ることこそ、我ら国を動かす者の務めです。今後は私も微力ながら、『星の塔』にて、その務めを果たして参りたいと思います」

 

 と、再び臣下の礼を()ったアレクシスは、懇願するように、オリヴァールを見詰めた。

 高い玉座からアレクシスを見下ろした国王オリヴァールは、抑揚もなく告げた。


「セイレーン・アレクシス、父国王より賜った極秘任務、遂行ご苦労であった。今後は静養中のハイラーレーン・エレオノーラを支える摂政として、聖務に励むように」

「ははっ! 慎んでお受け致します」

 

 アレクシス王子は再び深く頭を下げた。

 

 

 これを受けて、本日の議会の召集を要求した議員達の代表者、ホーウッド議員は、王の裁可を(たた)え、立ち上がり拍手した。

 他の議員達も次々に立ち上がり、拍手で国王の英断を称えて追認した。

 

 割れんばかりの拍手に合わせて、エドウィンは、周囲に合わせて乾いた拍手を贈っていた。

 

 ……エドウィンは息子アレクシスが、断熱コートに袖を通さず、羽織るように着ていたのを見逃さなかった。

 

 アレクシスは恐らく、コートの中で「神の指先」を動かし、国王オリヴァールを暗示支配したのだろう。

 エドウィンは、息子が宣言通りのことをやりおおせたことを、空恐ろしく感じていた。

 

 

 ***

 

 

 王国議会の決定は、新聞各社の一面を大きく飾った。

 オリヴァール国王は、グレーンフィーン伯爵及び領民に、原状回復への費用を補償するとした。

 

 行方不明となっていた漁民は、王都からも捜索船が派遣され、グレーンフィーン領の漁師と協働で捜索が続けられたが、後日、最終的に死亡が認定され、その遺族も含め、被災者には王家より見舞金が贈られることになった。

 

 また、セイレーン・アレクシスの帰国が報告された。

 彼が今までタルール・シェグファ藩国やジーラント帝国にいたのは、亡きアンドリュー前国王陛下の密命のためであったと知らされた。

 

 レーン・ジョゼフ神官長により、「星の嵐」が来た原因は、「神の石」を操作出来る者の不在とされたが、今後は、アレクシス王子が、聖王摂政として「星の塔」の管理に携わることも、国民にとっては、大きな安心へと繋がった。

 

 「星の嵐」の到来で国民を不安に陥れ、責任を問われた王家だったが、これにより、国民からの信頼を取り戻すことに、ある程度は成功した。

 

 人々は、当時未成年の王子が、その任務を見事果たして無事に帰国し、「聖王摂政」に就任したことを祝った。

 大手新聞各社は、アレクシス王子の今までの業績を称える特集記事を組んだ。

 

 アレクシスは、今や完全に「時の人」であった。

 

 

 ***

 

 

 数日遅れの新聞記事で、グレーンフィーン領へもそのニュースが伝わった。

 

「あの魔電気中継局を直してくれた兄ちゃんが、セイレーン・アレクシス王子だったんだってよ!」

「本当に『星の嵐』に遭った俺たちへの補償を訴えてくれたんだ!」

「それって、リゼットお嬢様の元婚約者のアレクシス様?」

「私、アレクシス殿下がお嬢様を『お姫様抱っこ』してるところ見ちゃった!」

「私も見たわ!」

「殿下は絶対、お嬢様のこと、まだ好きよね?」

 

 領民は口々に噂をし、今回の「星の嵐」の襲来で、領民を助けてくれた領主一家の住む高台を見上げた。

 

 

 浸水した領民たちの家の片付けはほぼ終わり、カントリーハウスでの炊き出し料理の提供は終わった。

 だが、領民たちの家から出た海水に浸かった不用品は、仮廃棄場に積まれたままだし、崩壊した岸壁も応急処置のままで、一部浸水したり、破損した船もそのままだ。

 

 「星の嵐」の到来で大変な目に遭ったグレーンフィーン領だったが、王家からの補償や見舞金が出るということだし、希望の光が見えてきた。

 これから新領主の下で、この困難を、力合わせて乗り越えていこうという、活力に満ちていた。

 

 そんな領民の生活は、そのうち平穏を取り戻すだろうと思われた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ