ギルド集合
冒険者ギルドにある訓練場にリュードにいるほぼ全ての冒険者達が集まってギルドマスターであるライザックの説明を聞いていた。
「今回集まって貰ったのは他でもない、リュードが危険に晒されているからだ。ダイールの森の奥には廃棄されたダンジョンがある。先日ドラゴンファングが調査を行った際にダンジョンの機能が復活している事が分かった。そしてそこには魔人族も関わっている」
なんだよまたドラゴンファングかよ!
いやそこじゃねぇだろ!なんで魔人族がいるんだよ!?
おいおい、そんな危ねぇの俺達が聞いた所でなんも出来ねぇだろ! こちとらEランクだぞ!? 舐めんなよ!
ギルドマスターのライザックが全てのリュードの冒険者達に作戦と内容を説明する。
冒険者達はあれやこれやと大騒ぎになっている。
「魔人族は実験により強力な異常種と呼ばれる魔物を作り出している。こいつは見た目はあまり変わらないようだが強さのランクが一段階上っている。ゴブリンの異常種でも舐めたらえらい目に遭うだろう」
なに!? うそだろ!? ゴブリンが狩れなきゃ俺はどうすりゃいいんだよー!?
なんだよ異常種って!? そんなの知らねぇよ!?
何やってんだよ魔人族はよ!? こっちはいいからグレンダ帝国滅ぼせよ!?
「やかましいなミィ」
「みぃ〜♪」
そんな中、リョウはメイド娘のミィの頭を優しくなでなでして和んでいた。ミィも気持ち良さそうに鳴いている。
リョウの側にはフィアとヒナが両脇に控えている。
ブルーフォレストのクーリカ達はメイド服姿でドラゴンファングら含めたAランク冒険者達と廃棄ダンジョンに魔人族討伐に向かっている。リズとココは変わらぬ戦闘服姿だがメイド服を着ているクーリカ達と混ざった違和感は半端ない。リョウは全く気にしていないが。
ただ装備で見ればクーリカ達が来ているメイド服は国宝級を超える装備でありAランク以下の冒険者では傷一つ付ける事は出来ないだろう正に鉄壁の装備だ。
訓練場ではまだライザックの説明が続いていた。説明が続くにつれて冒険者達の士気は次第に落ちていく。このままでは魔物どころか戦闘すら役に立たないのでは?
そんなびびり出す冒険者達もライザックの次の言葉によって恐怖も忘れて興奮し出した。
「いいか、よく聞けー! 今回魔人族の侵攻を止めるべくAランク冒険者による精鋭が廃棄ダンジョンに突入し制圧する。君達には魔物がダンジョンから溢れ出す可能性がある為、街の外壁からの守護を頼みたい。決して魔物を街に入れてはならない。これは領主であるリュード伯爵からの依頼でもある。参加するだけで金貨1枚! 討ち取った魔物は通常の倍の額で取引に応じる!」
うおおおぉぉぉぉぉぉ!!!
やったぜぇぇぇぇぇぇ!!!
まかせろぉぉぉぉぉぉ!!!
彼等が興奮するのも当然だ。なにせ下級冒険者では金貨を手にする機会などないのだ。参加するだけで大金が手に入ると知って騒ぐ冒険者達。実に現金なものである。
実力は無いがやる気があれば役には立つだろう。冒険者は慈善事業じゃない。自分の命をベットして稼いでいるのだ。彼等を動かすには分かりやすい報酬が一番なのである。
ライザックはそんな彼等を敢えて鎮めずになお焚き付ける。
「魔物を5体倒した者には追加で銀貨1枚が追加報酬として支払われる。その後も5体ずつ倒せば倒しただけ払わせて貰う。魔物は全てその対象だ、ゴブリンでも5体倒せば銀貨1枚だ! 稼ぎ時だぞクソやろー共っ!」
やっふぅぅぅぅぅ!!!
やるぜやるぜやるぜー!!!
金だ金だぁぁぁぁぁぁ!!!
ゴブリンなど小さな魔石にしかならない為大した価値がないがゴブリンを倒して生計を立てている下級冒険者も多くいる。ゴブリンハンターからすれば5体狩るだけで銀貨1枚などボーナスに違いない。安い酒場なら好きなだけ飲み食い出来る額だ。
D、Eランクの冒険者達は興奮しながら踊り出す始末だ。
「既にドラゴンファング等Aランクの冒険者達が廃棄ダンジョンに向かっている。数時間後には魔物が押し寄せる危険がある。準備出来た者から直ぐに外壁に向かい待機して置いてくれ。リュードの命運はお前達に託す!」
ウオォォォォォォォォ!!!
金に誇りに使命感にと高ぶる興奮を抑えきれず叫ぶ冒険者達。
遂に来た一世一代のヒーローになれるチャンスだとライザックの言葉を受け我先に駆け出して行った。
「現金な物だな、冒険者って奴は」
走り去って行く冒険者達を見てリョウは呟く。そんなリョウに近付き声をかけて来たのは見覚えのある男達だった。
「ご無沙汰しております、リョウ様」
「久し振りだな、リョウ殿」
アリスの屋敷の執事、ミスマルと騎士ラインだ。
久し振りに見たミスマルとラインは自信の溢れる精悍な面構えになっていた。ダンジョンに潜り続けてレベルが上がっただけでなく精神的にも強くなったようだ。ミスマルは何故か笑顔なのに目が笑ってないようだが?
「ああ、久し振りだ。お前達もリュードの防衛に加わるのか?」
「当然だ、民を守る事が騎士の本懐だ。今は冒険者として活動しているが自分が騎士である事は変わらないからな」
「何より高額な報酬も頂けるのです。武器防具に道具類と強くなる為には幾らあっても足りませんからね」
いずれお前も倒してやるよ、みたいな目をしてるミスマルが笑顔で話す。
「確かにな。中々強くなってるんじゃないか?」
「分かりますか?」
にやり、と
ラインが自信満々で言う。
「あぁ、見れば分かる」
ミスマルとラインには以前ダンジョンで見かけた時にレベルアップと同時に「村人」の職業をプレゼントしたのだ。
「村人」。それは最弱の職業であり通常職の半分程度のステータスしかない。しかもスキルすら無い。
だが人に与えるには通常職すら強すぎるのだ。なんせステータスが倍になるなどレベルが倍になるのと一緒だ。上級職や最上級職はレベルが上がりにくい為ステータス的に言えば条件的にはそう変わらないのだが基本能力が倍は違う。
しかし「村人」だけは違う。そもそもがこの職業を持つ者はそうはいない、皆生きる為に何かしらの仕事に従事するからだ。つまり「村人」とは「ニート」の事である。そりゃスキルなんかないわ。いや、現代社会では色々ありそうだが。
まぁこの世界では「村人」は最弱職なのだ。
だがそれが好都合な訳だ。通常職など与えたら違和感バリバリで問題が起こるのが目に見えていたが「村人」なら丁度いい塩梅で強くなったと感じられるのだ。
それでもステータスが突然1.5倍に膨れ上がる訳で普通に考えて異常なのだが。
都合が良いと言うのはスキルを覚えない事もそうだ。彼等は自分達が「村人」を、つまり職業を2つ持っている事を知らないのだ。
少しステータスを隠蔽するなど容易い事。鑑定スキルがあっても俺よりレベルが高くなければ見抜く事など出来ないだろう。
なにより俺は彼等が嫌いじゃないからな。
ちょっとしたトラブルはあったが彼等には是非強くなって幸せになって貰いたい物だ。
「そろそろ行きましょう、ライン」
「ん? あぁ、そうだなミスマル」
どうやら彼等は呼び捨てで呼び合う程の仲になっているようだ。「それでは失礼する、今度は戦場で」と言って去って行った。
「実力的にはAに近いBくらいか」
この調子なら直ぐにでもAランクに届きそうだ。レベルが上がればSランクも夢ではないだろう。レベルが上がりやすいしな。
「旦那様、そろそろ私達も行きましょう」
「そうだな」
廃棄ダンジョンはクーリカ達に任せればいいだろう。実力的に問題ないし何かあってもチョーカーの竜騎士を呼び出せば事足りるだろうしな。
「俺達はリュード防衛戦だ。周りの冒険者達に気を遣って魔物を狩り過ぎない様に注意しないとな」
「「「はい、旦那様(ご主人様)」」」
せっかくのイベントだ。魔王どころかドラゴンすら出ないEランクの楽勝確定なクラン戦みたいな物だが皆んなでやると何故かわくわくしてくるよな。
うむ、俺も少し興奮してきたな。
帰ったらマスターした分身の術を使ってはっちゃけるとするか。




