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閑話 ミスマルとライン

 

 私、アルテン侯爵家の執事を務めるミスマルですが今は赤竜騎士団のライン様と一緒にダンジョンに挑んでおります。


 何故執事の私がダンジョンなんかに?


 確かにそう思うかも知れません。


 ええ、私自身も驚きですよ、なんせ私は上級貴族の侯爵家で執事をしていたエリートです。その私がわざわざ泥臭いダンジョンに命を賭けて潜るなど思ってもおりませんでした。



 ですが私の決心は揺らぐ事などあり得ません。


 そう、



 あの憎き男を倒すまでは。






 隣で燃えたぎる様な熱い目をしているミスマルを見て「俺も負けられない」そうラインは感じていた。


 多少武に覚えがあろうとここは命を奪い合う戦場だ。最初は執事が何を? と感じていたラインであったが実際戦闘を共にするとこれがなかなか。


 期待のホープと言われた自分に劣らぬ才能をミスマルは持っていたのだ。短剣を持って鋭く切り裂くナイフ捌きと体術はラインから見ても「見事」と言わざる終えない。


 執事は戦闘も出来なければならない物なのか、と疑問を抱くが出来て不都合がある訳ではないし、出来るなら出来た方がいいだろう。


 今もまたミスマルがオークを1体倒した所だ。


 そうだ、確かに強い、強いがこれが()()なのだ。俺やミスマルが劣っている訳ではない筈だ。あのリョウと言う男とメイド達がおかしいのだ。


 そう自分に言い聞かせてミスマルに声をかける。


「やるじゃないかミスマル殿。これなら問題なくパーティーを組めるな」


「有難う御座いますライン様。私も強くならねばならぬ物で」


「強く、ですか。既に貴方は一流の腕を持っておられる。突然訪ねられた時は驚きましたが何故それ程までに力を求めるのですか?」



 ラインの問いにミスマルは苦虫を噛み潰したような表情で答える。


「・・・倒したい男が居るのですよ。今の私では手も足も出ない程の強者ではありますが、いずれは、ね」


 倒したい男がいる、か。


 俺も敗れはしたがいつかは倒したい、追いつきたいと思う男がいる。


 何せ焦がれた女性を奪っていった男だ。相手が悪い訳じゃない、だが許す許さないの話では無いのだ。ぶん殴ってでも奪い返したかっただけだ、まだ付き合ってもいないのに。


 だが彼は見事に返り討ちに遭ったそんな俺に尚手を差し伸べる程の紳士でもあった。


 仕方がない、格が違う。そうも思った。


 だがミスマルと言う男は敗北を突き付けられながらも戦う意思を失ってはいない。それどころか尚熱く燃える眼は決意の表れの様であった。



 この男は強い!


 単純な力の話しじゃない。心が、魂が強いのだ。


 ミスマルと一緒なら俺はもっと強くなれる! そう感じたのだ。



「ミスマル殿。いや、ミスマル。俺も強くなりたい。いや、強くならねばならないのだ。共に戦おう、俺達と共に戦って欲しい」


 真っ直ぐな瞳で見つめられたミスマルもその真剣な表情に頷き。


「勿論です。改めて宜しくお願い致します。駆け上がりましょう、あの男を超える為に!」



 執事としての綺麗なお辞儀と誓いを口にした。










 ミスマルが赤龍騎士団のライン率いる一軍パーティーに加わり一週間が経過した頃その時は来た。


「はぁっ!」


「うぉぉ!」


 バキィンッ! ズバッ!



「グギャァァッ!!!」



 今日何体目かのオークを倒した時にミスマルとラインは同時にレベルアップした。


 人は魔物を倒すと経験値を得てレベルが上がる。それは人としての成長であり進化だ。身体能力各種のステータスアップ、新しいスキルの発現。1つレベルが上がるだけでも得られる恩身はとても大きいのだ。


 だが今回は()が違った。


 ミスマルとラインはレベルアップに喜び直ぐ様ステータスを確認した。


 そして声を上げる。



「「っ!?」」


 いや、声にならなかった。


 そこには以前の1.5倍程に膨れ上がったステータスが表示されていた。


 強くなると言ってもレベルが1つ上がっただけで?


「こ、これは!?」


「ミスマル!? お前もか!?」


 どうしたんだ、と騒ぐ仲間たちを他所に2人は興奮した様子で「ラインもですか。ふふふふふっ」、「成る程、ミスマルもか。はははははっ」と突然笑い出す始末だ。


 そして唐突に。



「ま、魔物、 オークを狩りましょう!」


「ああ、直ぐに行こう!」


 魔物を狩りにダンジョンを走り出す。


 罠など気にせずに走り出すなど危険極まりないがそんな落ち着いた精神状態など保てるはずもない。




 慌てて追いかける仲間達だがミスマルとラインは以前よりもやたらと早く全力で走っても引き離される。


 やっとの事追いついて見ればそこではオークの集団の虐殺現場だった。



「シッ!」


 ズバァッ!


「ピギィッ!」


「戦闘執事」であるミスマルのナイフが以前よりも滑らかに急所を切り裂き瞬殺する。



「はぁっ!」


 ズバァバァッ!


「ギャギャァッ!」


「騎士」ラインの剣戟がオークの硬い身体を物ともせずに断ち切る。



 ふふふふふっ!


 はははははっ!



 楽しそうに笑う2人に仲間達は引き攣りながらも驚きを感じ得ない。


 何故それ程急に強くなったのだ。



 ある一定のレベルに達すると強さの溝が大きく開く時が来ると言う。それが()()()



「そうか、()を超えたのか」



 壁を越えし者。



 限界を超えた本物の実力者。


 冒険者で言うAランクと呼ばれる者達。彼等の様に一握りの者しか立つ事の出来ぬ領域。




「行くぞミスマル!」


「やりましょうライン!」




 その後2人は現れる魔物を片っ端から駆逐して行った。全ては強くなり目標に掲げたある男を倒す為に!





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