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異変

 

「それで大丈夫か、お前ら」


 ゴブリンキングを綺麗さっぱり消滅させてからブルーフォレスト達の無事を確認する。


 獣耳娘達は胸部を破かれてる以外に外傷もないようなので心配は要らないと思うが念のためだ。


 不自然にならないように布を巻いて貰う形で我慢して貰おう。


 メイド娘ならメイド服を渡す所だが。そもそもメイド娘ならそんな状態にまで放置はしないし傷すら負わないだろうが。


「あ、有難う御座います! 王様!」


「ん? 王様?」


 あー、そういやつい王とか言ったんだったか。それもこれも英雄王とか崇めるメイドが悪い。考えなしに出てしまった。まぁいい。



「それは内緒にしといてくれ。それより動けるか」


 適当に誤魔化し声をかける。


「「「はい、分かりました、ご主人様!」」」


「は? なんでご主人様なんだ」


 お前達はメイドじゃないだろ?


「それは! その、わかったんだ。あたしの求めてた王様はご主人様だったんだってさ! メイドの子達が慕う理由が分かったから、だから!」


 ふーむ? クーリカは王を求めていた? そんな話を聞かされてもな。


「ご主人様には危うく、辱しめられて種付けされて孕ませて殺される所を助けて頂きました! この命はご主人様の物です、役に立って見せます! どうかお側に置かせて下さい!」


 流石にフローラのこの感謝のしようは異様じゃないか? 確かに女性なら死んだ方がマシだという場面ではあったが。


「ご主人様、オレはその、がさつでダメなとこばっかだけど、ご主人様のメス犬として頑張るから!ご主人様になら何をされても構わないから! だから飼ってくれると嬉しい!」


 尻尾をぶんぶん揺らして告白するフィオナ。この子が一番性格変わってるんじゃないか? 自分でメス犬っておい、ゴブリンキングに引づられてないか?



 つまり、


「お前ら、俺に飼って欲しいのか」


 ぶんぶんぶん!


 凄い勢いで尻尾が揺れてる。



 だがメイドを増やすつもりはなかったんだがな。


「だがな、それはちょっとな」


 くぅーん、と


 耳がぺたん。尻尾もぺたん。力なく垂れ下がる。


 こんな光景を見ると、なんか罪悪感があるな。というかなんでこんなに懐かれてんだ?



 おい、まさか!?



 ステータスを鑑定するとそこには女神の加護が発動していた。


 直ぐに操作して外す。


 レベルが上がったからか何故かは分からないが、なぜかオートで発動する加護だが操作して外せる事が分かった。というかいま外せた。


 ふむ、もう大丈夫だろう、これで安心だ。


 だからつい冗談で。



「じゃあ俺が飼ってやる」



「「「!!!」」」



 顔を上げて尻尾をぶんぶんぶんっ!!!



 はち切れんばかりに尻尾を振る獣耳娘達。



 あれ? どういうことだ?



 加護が御構い無しなんだが!?









 避難してたフィア達と合流してリュードを目指して帰り道を歩いていた。


 メイド娘を避難させていたブルーフォレストのココとリズはまたクーリカ達と会えた事を心から喜んでいた。


 そんな2人に。



「ゴブリンキングはご主人様が倒した。命を救ってくれた恩義に応える為あたし達はご主人様のメスになる事にした。ご主人様から今迄通りに冒険者活動はしていいと許可は貰っている。ただご主人様の呼び出しがあればそれを優先する事になる」


「「・・・!?」」


 驚き無言になる2人。1人はいつもか?


「にゃ!? ご主人様ってどういう事にゃあ!?」


 クーリカは顔を赤く染めながらココに説明する。


「言葉通りさ。あたし達3人はご主人様に飼って貰うんだからご主人様と呼ぶに決まってるさ。これからはご主人様の・・・メス・・として生きていくんだ」


 クーリカはらしくもなくもじもじとして、恋する乙女のように、自分達はご主人様のメスだと口にする。嬉しそうに。


 それを聞いてたフローラとフィオナも恥ずかしくも、嬉しそうに頷いていた。



「・・・本当にどうしたんだにゃあ?」


「(・・・!?)」


 クーリカ達の表情を見て困惑するばかりのココとリズだったが、視線はその原因であるリョウに向かう。


 リョウは平然とした態度で。


「クーリカ達は俺が飼う事にした。強要した訳じゃない、自分達から言い出した事だからな」


「にゃっ! 奴隷にしたのにゃん!?」


「(!!!)」


「奴隷? する訳がないだろう。俺の物になった以上はメイドとしても働いて貰うがな」


「メイド!?」


「当然だろう。うちのメイドを見ればわかるだろう?」


 そう言ってリョウはフィアを抱き寄せる。


「あっ、旦那様!」


 毎晩のお勤めがあろうと心はいつでも乙女なフィアはリョウに抱きしめられるだけで照れて恥ずかしくなってしまう。


 そんなフィアを見て。


「メイドになれば更に可愛く綺麗になれる。フィアも美しさに更に磨きがかかって俺を夢中にさせてくれる。俺の自慢のメイドだ」


 リョウはそう言って大好きなフィアの真っ赤になったエルフ耳をふにふにと優しく愛撫する。


「んぁ、旦那様っ」


 リョウのメイド愛を聞いたメイド娘たちは更にメイドとして己を磨こうと決意し、リョウのメイド愛に触れたクーリカ達はメイドになれば沢山可愛がってくれる!? と、メイドになる事を決心した。


 そしてココとリズはその空気について行けずに困惑したままであった。









 冒険者ギルドに依頼達成の報告とゴブリンキングの出現と討伐を報告する。


 ゴブリンキングはBランクの魔物でブルーフォレストなら討伐可能範囲だが今回は事情が違った。明らかにAランク、もしかすればSランクはあろうかという化け物だった。


 それも魔物が喋るなどと聞いたこともない情報にギルドも困惑しているのだ。


 リョウはブルーフォレストと共にギルドマスターと向かい合っていた。



「報告は以上だ。あれだけ流暢に話せる魔物がいるのは驚きだったな」


 言葉を話せる魔物か。害になる魔物じゃなかったらテイムしていたんだがな。


「話は理解した。まさかゴブリンキングがオーガを従えているとはな。それに人の言葉を話す、か。ブルーフォレストでも勝てないとなれば驚異度は計り知れない、よく討伐してくれた」


 そう言って俺を見るがその顔は信じてなさそうだな。ギルドマスター、ライザックの態度にクーリカ達もむっとしている。


 だがライザックが疑うのも当然と言えた。リョウの冒険者ランクは未だにEランクの初心者である。それに加えて見た目は少年の姿だ。それがAランクの魔物を倒せる程強いと言われた所で簡単には信じられないだろう。


 確かにリョウの強さを感じ取った者もいる。ミスマルの様に始めから警戒して注意深く観察したり、クーリカの様に特別強者の気配に敏感でなければ分からなかった。だが今ではクーリカ以上の嗅覚を持っていようとも察知するなど出来ないだろう。


 リョウはクーリカにある程度の実力者だと見抜かれた事である一定の水準を持った強者であれば強さを見抜きかねないと考えた。クーリカがリョウから感じ取ったのはリョウから漏れ出る巨大な魔力だったのだ。リョウは完璧に魔力を操作出来る為漏れ出る魔力を抑える事など容易かった。そして保険の為に「偽装スキル」によりステータスをメイド娘含めて書き換えたのだ。


 如何にライザックでも看破出来はしなかった。


「それで君のランクはEランクだったな」


「それが?」


「いやなに、本当にそんな化け物を倒せたのか疑問に思っても不思議じゃあるまい。君が冒険者でなければともかく冒険者ランクは成果によって必ず上がるように出来ているんだからな。Eランクが推定Aランクの魔物を討伐したなど発表の仕様がないだろう?」


「ならクーリカ達がした事にすれば良い」


「「「!!!」」」


「こっちは親切心で言ってるだけだからな。もしも今回と同じように喋る魔物が出て来れば一つ二つランクの高い魔物と思った方がいい。それだけで脅威度を測れるはずだしな。取り敢えずは伝えた、情報を共有するか独自の判断で破棄するかはあんた次第だ」


 正直リョウにとってはどうでも良い事だがこの世界で生きる者からすれば大きな意味を持つ。危険が分かれば近づかないで済む。大事になる前に気づく事も出来るかも知れない。



「いや、すまんな。儂も立場上簡単に話を鵜呑みにする事は出来んのでな。どうやらその様子だと本当のようだな。改めてお礼を言わせて貰おう。感謝する」


「構わない」


「それにしても今回はゴブリンキングがいたからと言ってもゴブリンの量が多すぎた。どこかの村が被害に遭ったりとかはしなかったのか」


 クーリカが疑問に思うのも当然、ゴブリンは頻繁に人や家畜を襲う。あれだけの数がいれば近隣の被害は相当な物だった筈だ。


「それなんだがな。君たちが帰ってくる間に報告があった。実際にオーガとゴブリンの襲撃に遭った村が一つある。壊滅状態で生き残りはごく僅かだそうだ。恐らくはオーガが居た事からゴブリンキングが率いた集団だろう。だがゴブリンキングがいて被害が村一つと言うのは俄かには信じがたい。ゴブリンキングが現れるならその過程で多くの村が襲われる筈だからな」


「だが実際に被害に遭った村は一つだけなのだろう?」


「そうだ」


「なら他に何か原因があるんだろう。当てがあるんじゃないのか」


「・・・お前は何か知っているのか?」


「知らん。だがお前は知ってるんだろう。顔を見ればわかる」


「確証は無い。可能性としての話だ」


「話せ」


 本来なら話す必要は無いのだが相手は有無を言わさぬ圧力がある。ギルドマスターもそれに押されてだろうか、何故か口が軽くなってしまっていた。


「・・・ダイールの森の奥深くに廃棄されたダンジョンがある。3階層迄しかない初心者向けのダンジョンだったそうだ。当然直ぐに狩尽くされていつになっても魔物が湧かなくなり廃棄されたそうだ。今では完全に忘れ去られていて知ってるのは領主や儂の様な関係者くらいだろうな」


「手掛かりがそれしか無いのならそのダンジョンに何かあった。そう考えるのが自然か。だが相手はAランク上位、Sランクにも匹敵する魔物だ。原因を取り除くのも、調査をするのも一筋縄じゃ行かないだろうな。並みの冒険者じゃ返り討ちに遭うのが関の山だぞ」


「わかっておる」


「当てはあるのか」


 無論、とギルドマスターが。


「リュードのAランク冒険者筆頭、ドラゴンファング。彼等ならやってくれるだろう」


「ドラゴンファング? クーリカは知ってるか」


「当然さ。リュードダンジョンの最新層を更新する実力派のバランスの取れたパーティーさ。リーダーの【雷刃】は女癖が悪いが腕は確かだ。【獄炎の幼女】は宮廷魔術師に匹敵する使い手だって話さ。他のメンバーも全員優秀らしいし大丈夫だと思うよ」


 気になる二つ名だが今は流すか。


 クーリカが認めるならそれでいい。俺が調べた方が確実だが出来るなら現地の人間に任せるべきだろう。いつでも俺がいる訳じゃないからな。当てにされてもお互いに困るだろう。


「ならドラゴンファングに依頼を出すんだな。しっかりと警告はしておけ」


「当然だ。情報感謝する」









 リョウが去った後、ギルドマスターはソファに背を預けて溜息を吐いた。


 見た目はただの少年にしか見えなかった。話しても印象はそう変わるものではない。その筈だ。


 自分自身限りない数の修羅場を潜り抜けて生き残ってきた。そうやって今があるのだ。歴戦の冒険者であったギルドマスターすら何気ない会話で素直に(・・・・・・・・・・)頷かせる(・・・・)などとても新人冒険者(Eランク)とは思えない。


 まるで狐につままれたみたいだ。新人がBランク上位の冒険者でも勝てなかったゴブリンキングを倒したなど誰が信じられると言うのだ。例え信じて周りに話たとしようと誰も信じやしないだろう。それに彼は功績や褒賞などはなから眼中に無かった。話にすら登らなかったのだ。彼にとっては誰もが求めるような地位すら無用の長物なのだろう。



 ふうー、ー。


 頭を振って切り替える。今は彼の事などどうでもいい事だ。あの態度を見れば都合良く利用しようとなど出来はしないだろう。それよりも調査の方が先だ。


 Bランクである筈のゴブリンキングの変異種。AランクどころかSランクに匹敵する程強力な魔物になっていたという。流石にSランクは無いと思っているが。


「それに人の言葉を話すか。高い知能を持った凶悪な魔物。脅威は計り知れんな」


 頼みの綱はドラゴンファングか。



 Aランク上位、Sランクにも手が届く位置にいる凄腕の冒険者達だ。彼等ならブルーフォレストの攻撃すら無効にしたゴブリンキングにもダメージを与えられただろう。BランクとAランクの間にも埋めがたい差が存在するのだ。



「頼むぞ」


 そしてギルドマスターは重い腰を上げてドラゴンファングに緊急依頼の指示を出した。




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