ダイールの森
「お帰りなさいませ、ご主人様!」
「いらっしゃいませ、じゃないのかエミリア?」
「ここでご主人様を出迎えるのは私だけの務めですから」
だけを強調して言うエミリアの視線は後ろにいる新人メイド娘たちに向けられていた。
エミリアはたまにメイドとして可愛いがる事はあるが屋敷に住んでる訳ではない為俺の正式なメイドとなったイヴ達に対抗心を燃やしているみたいだ。
エミリアと新人メイド娘達が視線で火花を散らしている。だが何を言われようとイヴ達から口を開ける事は無い。さっきのは相手が強引に来たからで、今は俺が話している以上必要もなくメイドが声をかける事は無礼にあたるからだ。特に外に出ていて周りの目がある、これが屋敷であれば違ったかもしれないが。
「そうだな、って言っても今回は俺じゃなくてリア達の冒険者登録に来たんだがな。あとブルーフォレストと共同で依頼を受ける事にした。オーガを倒しに行くとか言ってたが問題ないか」
「ご主人様がいるなら安全でしょうし問題ありませんよ。ただ共同でも依頼額が変わる訳ではありませんので2組で依頼を受けるなら報酬は半分になりますが宜しくでしょうか」
「いや、3組だ。俺のパーティーとリアのパーティー。それとブルーフォレスト達で依頼を受ける事にする」
別に報酬はどうでもいいが戦闘を行う可能性がある以上は正式に依頼として参加するつもりだ。基本手は出さずに見守るつもりだが。
「はい、畏まりました。それではまず冒険者登録をしますのでこちらの紙に記入をお願いします」
メイド娘達が冒険者登録を済ませて俺達は東門に来ていた。
そこには先程までいなかったフィア達が待っていた。
うちのメイドは人目を引きすぎる。美少女メイドが乱暴な冒険者が集まるギルドに行けば問題を起こしてくれと言ってるような物だ。実際それで騒ぎを起こす冒険者がいた為、フィア達は屋敷で待機していて貰ったのだ。
メイド娘はいつも俺と一緒にいる為屋敷をいつ掃除しているのか分からないが綺麗に管理されている。俺達を待つ間はダンジョンを周って貰おうと思っていたがフィア達が屋敷を掃除したいと言うので願いを聞いたという訳だ。
どこを掃除したのだろうか。
フィア達を見てブルーフォレストの面々は呆れと驚きの表情をする。
「またメイドさんが増えたにゃん」
「何人いるんだよ」
「でもみんな本当に綺麗な子達ですね」
「(こくこく)」
メイド娘はこれで勢揃いだ。今は執事も武者修行中で外に出ている為屋敷には誰もいないのだが、誰かが訪ねてくれば俺にはわかるのでその時はリアを送り届ければ問題ない。
それなら残して行けばいいと思うが折角みんなでのお出かけなのに可哀想だからこうしたのだ。
「メイドはこれで全員だ。分かってるだろうがフィア達は俺のパーティーだ。戦闘力は申し分ないが今回はお前達が主役だからな。基本は静観する、まあオーガ程度なら手を出す必要もないだろうがな」
そう言うとフィア達はクーリカ達にお辞儀をする。
「ああ、構わないさ。スカウトするつもりだったけど能力のあるパーティーと縁を作っておくのは悪い事じゃないからね」
「ならいいだろう。行くとするか」
ダイールの森は東門を出て一刻もしない距離にある。街から近い為ランクの高い魔物が出れば直ぐに討伐依頼が出される。とは言え強い魔物は森の奥におり表層はゴブリンなどの低ランクの魔物ばかり、今回は表層にCランクであるオーガが目撃された為ギルドに依頼が出された。
歩いてダイールの森に向かう一行。メイド娘11人に美女、美少女の獣耳娘が5人。盗賊に見つかれば襲って下さいと言ってるような面子である。当然返り討ちになるだけだが。
「それにしても皆さん本当に綺麗ですね。雰囲気もまるで貴族のお嬢様みたいですね」
「だな。それはオレも思ったぜ。なんか品があるよな、あんたら」
「(こくこく)」
ブルーフォレストの面々はメイド娘に興味津々のようだ。立ち姿一つとっても得られる情報は多い。彼女達の見た目や雰囲気、言葉遣いから直ぐに貴族である事も察したようだ。
丁寧な言葉遣いの犬人族のフローラはお淑やかな巨乳美少女だ。乱暴な口調の狼人族のフィオナはフローラを超えるわがままボディで最低限の軽装で刺激的な格好をしている。男に襲ってくれと言ってるような物だがそのたびに返り討ちにしているのだろう。こくこくと頷くのは兎人族のリズだ。落ち着いた雰囲気のスレンダー美人で貧乳だがぴょこぴょこ動くウサ耳は美しさプラス可愛さのギャップがいい。にゃんにゃん言ってイヴとサラと話してるのは猫人族のココだ。小柄な少女でどうやら好奇心旺盛。イヴ達と年も一緒みたいだし気が合いそうだ。
「有難う御座います。私はご主人様のメイドでメイドリーダーを務めますリアと申します。確かに私達の身分は貴族位にありますが私共はご主人様のメイドですのでそのようにお振る舞い下さい」
リアはメイドリーダーだ。メイド長はメイド姉妹の長女であるフィアである。
「まじで貴族のお嬢様かよ」
「もしかしたらと思いましたが本当でしたか。あの、ちなみに爵位はどの位ですか」
「私は騎士爵ですが最高はアリス姉様は侯爵になります」
「「「侯爵!(!)」」」
「先程も言いましたが今の私共はご主人様のメイドです。貴族である事は気にしなくて構いません。何より皆様の実力なら貴族からの依頼も来るのではありませんか?」
リアはフローラ達に貴族達の依頼もこなす筈だから貴族の相手は慣れてるだろうから問題ないだろと言われるがブルーフォレストはBランクであり確かに貴族からの依頼も受けた事はあるが頻繁にある訳ではない為慣れてるとは言えない。だが元々荒っぽいのが冒険者だ。ブルーフォレストのメンバーも例に漏れず、驚きはした物だが、だらなんだである。敵対する愚は犯さないが相手が気にするなと言ってる以上そうさせて貰う。
「驚いたがわかったよ。だが固すぎねぇか、オレ達は平民だしそもそも国も人種も違うけど互いに命預けて依頼をこなすんだからもっと砕けてくれて構わねーぜ」
「そうよリアさん。フィオナくらい口を悪くする必要はないけど私達も気にしないからリアさんも気にせずに友人として話して欲しいわ」
リアはリョウを見て頷いたのを確認して「わかりました」と伝える。それはやっぱり固かったがフローラとフィオナも表情を綻ばせた。
ダイールの森に着いた。この周囲には魔物の気配は無いがギルドへの報告がある以上油断は禁物だろう。
リョウにはマップがある為それで状況は一目瞭然だが今回は冒険者の実力を見る目的がある為口出しはしない。
「それじゃあ本番はこれからだね。周りの気配に気を配って中に入って行くよ。リズとココはいつも通りなにか感じれば報告して」
「「わかったにゃん(こくこく)」」
「フローラとフィオナもいいね。ユリオプスとユリストックは安心してついて来なさい、あたし達の実力を見せてあげるから」
自信があるのは結構だ。ブルーフォレストの面々を先頭に警戒しながら森を進む。
「前方に魔物の気配がするにゃん」
「・・・3匹」
「了解、ココ」
「わかったにゃん」
クーリカはココに指示を出して一旦止まる。飛び出したココは直ぐに戻ってきた。
「ゴブリン程度じゃ稼ぎにならないにゃん」
「本命はオーガさ。行くよ」
途中何度もゴブリンと遭遇した。それにしても数が多い。その度にココがゴブリンを狩って行く。流石にBランク冒険者、小さな猫人族の少女はゴブリン程度瞬殺だった。
「やけにゴブリンが多いね。集落が出来てるかも知れないよこれは」
「オーガは出て来ませんね」
「(こくこく)」
「まぁオーガでもゴブリンキングでも瞬殺してやるだけだ」
「オーガはともかくゴブリンキングは厄介なのにゃん」
さっきから遭遇するのはゴブリンばかりだ。それも普段よりも遥かに多く感じる。繁殖力の高いとは言えこの数は異常だ。もしかしたら本当にゴブリンキングがいるのかも知れないとクーリカも考え始める。
オーガがCランクなのに対してゴブリンキングはBランクの魔物だ。力があるが遅いオーガに対してゴブリンキングは力も速度も上の完全な上位互換の魔物だった。どちらも魔法は使わない為そこまでの脅威ではないが単純な身体能力はBランク冒険者と同等以上だろう強力な魔物だ。それもゴブリンは個人ではなく集団戦になる為また厄介なのだ。
クーリカは横目でリョウを見るが今回の目的は勧誘であり新人に実力を見せるものだ。だからと言って手の内の全てを見せるつもりもないし、クーリカはリョウが強いとは思うがどれ程のものかは測れずにいる為戦闘を任せるつもりもない。
その為クーリカはリーダーとして直ぐに決断するの。
「このまま森を周るよ。オーガは発見しだり討伐する。もしゴブリンの集落を見つけたら規模を確認次第撤退する。いいね」
「「「了解!」」」
クーリカはリョウにも確認を取ると再び森の奥に歩き出した。




