ヒナ
目を覚ますと既に太陽は上がっていた。
そりゃそうか、朝日が昇ってから寝たんだからな。
隣にはフィアとミィ、そして昨日メイドになったヒナが裸姿で横になっている。
昨日は張り切ってしまったからな、少し無理をさせたかも知れない。
え? なんで夜用メイド服ではないのか? 脱がす所までがセットだろう?
優しく髪を撫でてるとフィアたちは目を覚ました。
「おはようフィア、ミィ、ヒナ」
「おはようございま、ん、旦那様」
朝の挨拶は大切だ。
「ご主人様ぁ、ん〜、おはようございます」
フィアとミィはそれが良く分かってる。
「ヒナおいで」
「はぃ」
ヒナが頬を染めて俺達の挨拶を見ていた。昨日はあれだけ乱れていたのに素に戻ったら恥ずかしくなったのだろう。
ヒナは純情だな。
でも俺は知っている。裏に隠されたその本心を。ヒナが真性のドMであると言う事を。
だから朝の挨拶ではヒナを満足させる為に、寄ってきたヒナを押し倒してそのまま有無を言わさずに口づけをし口内を蹂躙する。
「ん〜、んぅ〜」
既にヒナの目はとろんと潤んで悦んでいる。
メイド娘たちはご主人様の為に尽くして奉仕してくれる。故に主人はメイド娘たちを愛して大切にしなければいけないのだ。そしてちゃんとそれぞれの希望通りに満足させる事が主人の務めなのだ。
「愛してるよヒナ」
「ご主人様ぁ〜」
甘えた声を出すヒナ。普段の見た目とのギャップが凄いいい。
あ、やばい。今日は何も出来そうにないな。
フィアとミィも積極的なのだがヒナとは方向性が違うのだ。ヒナは俺の中にあった何かを目覚めさせてしまったようだ。
「ヒナはいけない子だな」
「ご主人様、自分でも分からないんです、どうしてこんな気持ちになるのか。でもご主人様に抱いて貰うととっても幸せで、満たされた気持ちになるんです。だからヒナの身体にご主人様の事もっと教えて下さい」
メイドの指導(調教)は1日で終わる物ではない。日々の継続が大切なのだ。
「旦那様ぁ、フィアにも下さい」
「ご主人様、ミィもです!」
新入りのヒナに構うと2人が直ぐにヤキモチを焼くので3人仲良く立派なメイド娘になれるように指導する事に。
たまにはこんな1日もありかもしれない。
次の日馬車を走らせながら中ではヒナにこれからの事とヒナの能力(職業)の事を話していた。
まぁ何処に行くかは俺次第だし、一番はヒナが自分の能力を理解する事だろう。今までと同じと思って動いたらとんでもない事になる。元の何倍ものステータスになってる訳だしな。
「だからヒナのステータスは既に剣聖の親父を抜いてるぞ。普通に戦えば何かない限りヒナが勝つだろうな」
「父上を知ってるのですか!?」
「いや、知らん。鑑定で剣聖の称号(職業)を見ただけだ」
「そうですか」
ヒナはそれから口を閉ざしてしまう。父親が剣聖で如何にも訳ありな感じで、話して見ても悪人では無かったからな。ジャンも家族思いだったし。
何で盗賊のボスになってんだ?
まぁ縁があれば何処かで会うだろう。ヒナも話したくない内は無理やり聞き出す必要も無いしな。
気を取直してヒナに現在の能力を確認させる為に魔物と戦って貰う事にした。とは言えヒナのレベルは43である。剣聖親子は明らかにレベルが高いよな、剣聖は80だったぞ。
周りに相手になるような魔物・・・いた。
マップにはブルーオーガレベル41が1体確認できた。
「ヒナ、オーガを狩りに行くぞ」
「分かりましたご主人様」
何の戸惑いもないな、倒した事があるのか。
「オーガと戦った事があるのか」
「一度だけあります。1人で倒しました」
「今回はブルーオーガのレベル41が相手だが勝てるか」
「私が戦ったのは通常種のオーガでレベルは29だったと思います。色付きは通常種よりも強いのが常識です、それにレベルも私と同じくらいありますから間違いなくAランクの魔物に指定されるかと。私1人では厳しいと思います」
そう言いながらも怯える様子は一切無いんだよな。
「問題無い、全力でやってみろ。いまのヒナのステータスならSランクの魔物でも倒せる筈だ」
ヒナはまだステータスが上昇した事実を実感できてない。百聞は一見にしかずだ、実践が一番だろう。
ブルーオーガの居る場所まで空間転移で移動してヒナに対峙させる。
「オォォォゥゥォォォ!」
野生ブルーオーガは5mと中々の大きさだ、これと対峙するのは普通の冒険者では骨が折れそうだ。
「どうしたヒナ」
ヒナが隣で固まっている。どうしたんだ?
「ご主人様は私がこれに勝てると思っているのですか?」
何を当たり前の事を。
「いや、楽勝だろ」
「・・・」
「もしかしてこのクラスの魔物と戦った事無いのか」
「・・・はい」
まさかだった。一体どうやってレベル上げたんだよ。ああ、パーティー組んでたら経験値は貰えるもんな。
「心配するな、戦ってみろ。危なければ援護する」
そんな必要も無いだろうが。
「分かりました」
やっと頷いたヒナがブルーオーガに剣を構える。
ドガンッ! ドゴッ!
ブルーオーガの拳で木が砕け、地面が抉れる音が聞こえる。
先程からフィアとミィが気を利かせてブルーオーガを攻撃せずに翻弄している。こっちの準備が終わった事に気づき直ぐ様後退した。
「ヒナ、旦那様から頂いた力があればこの程度の魔物如きに遅れを取るなどあり得ません」
「分かっていますね、ご主人様を失望させないように」
姉たちの殺気の篭もった激励を受けてやる気を出したヒナはブルーオーガに接近、振り下ろされた拳を躱し地面を抉った腕を肘から斬りつけ切断する。
ヒナは想像以上に簡単に斬れた事に内心驚き、自分がブルーオーガの速さにも対応出来ている事を確信する。
悲鳴を上げながら残った腕を振りまわすブルーオーガだが、ヒナは残る片腕も斬り飛ばし足を膝から切断して倒れたブルーオーガにとどめを刺した。
苦戦する事なくあっさりと倒した事にヒナは安堵した。先程まで自身を貫いていた姉たちの殺気が無くなっていたからだ。
既にヒナは悟っていた。オーガなどよりも姉たちの方が断然怖いと。
ミィ姉様など年も自分より下で体も小さいのに存在感と溢れる殺気は尋常じゃない。ヒナは今まで研鑽を積んだ経験から素直に姉様として慕うべきと本能で理解した。
「ほら、楽勝だったろ」
「ご主人様っ」
ご主人様が声をかけてくれた。
私は興奮していた。
これ程の相手と1人で対峙するのは初めてだったが、ご主人様から頂いた力はAランクの魔物など全く寄せ付けない力があった。「英雄王」ご主人様の称号だ。フィア姉様がご主人様の事をこの世の全ての王の頂点であり神に等しきお方だと教えてくれた。
今ならそれも素直に納得してしまう。
父上も「剣聖」と言われ一度は王国の聖騎士団長にまで上り詰めた男だ。一目見てご主人様の偉大さを感じとって私をご主人様に託したのだろう。
だがそれは私もだ。今まで剣士として生きてきた私がご主人様を前にすると只の女になってしまった。ご主人様は何もしてない。私の心が、身体がご主人様を求めてしまったのだ。
だから父上には感謝している。私をご主人様の物にしてくれたから。私もそれを求めていたのだろう。
そしてご主人様は本当に私を物として扱ってくれる。メイドとして側に置いてくれる。沢山可愛がってくれる。こんな満たされた気持ちは初めてだ。
ただ。
「ヒナ、旦那様に褒められたからと調子に乗ってはダメですよ」
「ご主人様に身も心も捧げて尽くすのは当然です。そしてこの程度の魔物は瞬殺して当然、もっと精進しなさい」
私の内心を全て読まれている姉様たちはとても怖かった。




