盗賊
「「おはようございます旦那様(ご主人様)」」
目を覚ましたら左右から声が聞こえてきた。どうやら2人とも既に起きていたようだ。
「おはようフィア、ミィ」
返事を返してから朝の挨拶(口づけ)をする。
フィアは情熱的だ。比べてミィは控えめだがくっ付いて離れない。同じ万能メイドでも個人の差が出るのだ。
俺は勿論どっちも大好きだ。
朝のスキンシップをした後はご飯を食べて出発する。
俺は昨日に引き続きテントの片付けもさせて貰えなかった。食後にコーヒー片手にフィアとミィの仕事を見てるだけである。
万能メイドは主人に厳しいのだ。
馬車をアイテムボックスから取り出して乗り込んだ。馬型のゴーレムは文句も言わずに走り続ける。勿論速度も常識の範囲内だ。のんびりと旅を楽しんでるのに全力を出させたら、それこそ数日で街に着いてしまう。それでは何の為に作ったのかと言う話になる。
それに馬車の旅と言うのは何かしらのイベントが起こる物なのだ。現に今マップを確認すると周りに盗賊達が集まっている。馬車一台に20人以上の大所帯で奇襲をかけるつもりだろうか、随分張り切ってる様子だがそれでは効率が悪いのではないだろうか。盗賊も安全第一で仕事をこなす世の中か。
「馬車一台に随分張り切ってるようだな」
「いえ、旦那様。ゴーレムが引く馬車など普通御座いません。彼等はかなりの品になると当たりを付けて襲おうとしています」
「ご主人様が命令して下されば直ぐに処理致します」
フィアとミィは索敵スキルがあるので誰がどこにいるのか把握する事が出来る。それにしてもゴーレムは確かに無いわな。周りの目を気にしてわざわざ街の外で出したくらいだからな。考えてみれば外で会う人間に怪しまれる事間違い無しである。盗賊の眼鏡に叶ったようだな。
「別に殺さないぞ。戦闘出来ないようにしてからアジトに乗り込んでお宝ゲットだ」
盗賊と来たらこれ!と言う程メジャーなイベントじゃないか。当然こなすに決まってる。
「流石旦那様慈愛に満ちてます!」
「はい、ご主人様はとっても優しいです!」
「うむ、当然だ」
いや、本当は人を殺すのに抵抗があるだけなんだが。フィアとミィがいい感じに勘違いしてくれたので乗っかるのは当然だろう。ちょっとした事で尊敬の眼差しを向けられるのはくすぐったいがそれもまた良いものだ。思わずフィアとミィを撫でてしまう。
「旦那様ぁ」
「ご主人様ぁ」
「おらぁ、死ねやぁ!」
何か違うの混ざってるぞ。あ、吹っ飛んだ。
フィアとミィも邪魔をされて怒り心頭だ。フィアとミィが放つ魔法で盗賊達は吹き飛んでいく。
「うおいっ、やべーぞこいつら」
「撤退だ撤退!」
「馬鹿野郎っ、このまま逃げられるか!こいっ……」
俺が殺さないと言ったからか派手に吹き飛ぶものの、誰一人死んではいない。撤退を叫ぶ男も怒鳴る男も皆んな纏めて沈黙してしまった。
「全く、無粋な盗賊達です」
「ご主人様の許しが無ければ死罪です」
フィアとミィもご立腹だ。ちなみに盗賊は殺しても罪に問われません。それにしてもミィも強くなったものだ。あの時の暴漢供より強い盗賊達相手に圧倒だ。能力だけでなく精神的にも強くなったようで何よりだ。
フィアとミィを落ち着かせて盗賊達を一纏めにして縛り上げる。
そしてこれより尋問タイムだ。リーダー格の男を起こして目的とアジトを聞き出す。アジト?マップに載ってるけど?
「ん、何だ。クソっ、捕まったのか」
現状を把握した盗賊の男、ザックに早速尋問開始だ。
「そうだお前たちは全員捕らえさせて貰った。大人しく知ってる事を洗いざらい話して貰おうか」
「はっ、ガキが何言ってやがる。さっさと縄を解いて自由にしろ、そうしたら助けてやっても構わないぞ」
あれ、理解してなかった!
凄いな、この状態で強気に出れる精神力!流石盗賊だ。俺では真似出来ない。
「おいっ、さっさと外せって言ってるだろうが。メイドの小娘は俺が貰ってやるからな」
あっそれは駄目だ。と思ったらザックは「ヒッ」と声を上げて失神してしまった。俺がぷっつんする前にフィアとミィが殺気を飛ばしてしまったみたいだ。気の短い俺よりも先にキレるとは誰に似たのだろうか。2人の事が少し心配である。
さて、気を取り直して次に行こう。
「ああっ、ガキがなめ…」
ガクっ(失神した)
「いいメスがいるじゃ…」
ガクっ(またもや)
「おっ…」
ガクっ(喋らせてももらえない)
盗賊はやはり柄の悪い人が多いみたいだ。フィアとミィの眼鏡に叶う者がいない為尋問すら出来なかった。残念だ。
せっかくなので失神してる彼等を連れてアジトまで一緒に跳ぶことにした。当然馬車はアイテムボックスに収納済みである。
盗賊のアジトは定番である洞窟だった。人数はまだ20人程居るみたいだ。
「なっ、お前達は何だ!」
何だって何だ?
見張りに驚かれてしまったが突然現れたらそりゃ驚くだろう。それも縛られて眠ってる仲間達が一緒に現れたりしたら。
「なんでここにメイドがいる!」
「メイドの女がいるぞ」
えっ、そっちですか。やけに食いつきがいい。流石メイドだ。
「まぁ落ち着いて話を聞いてくれ。実はこいつらに馬車を襲われてな、聞いたらアジトまで案内してくれたんだ」
「何だと!この裏切り者供め。ガキ、メイドを置いていくなら逃してやっても構わないぞ」
「ああ、さっさと女を置いて消え…」
バタっ
ああ、またメイドの殺気の犠牲者が増えてしまった。何故盗賊達は自分の状況を理解出来ないのか。
「フィア、ミィ」
声を掛けるとハッとしたフィアとミィが慌てて頭を下げる。
「「申し訳御座いません!」」
「別に構わないが最後まで話をさせてやってくれ。余りに度が過ぎるなら仕方ないが」
「「はい、旦那様(ご主人様)」」
そうは言ったが2人供止められるか心配だ。まぁ殺してないし構わないか。
門番を務めた盗賊も倒れたので遠慮なくお邪魔する事に。出てくる盗賊達は当然喧嘩腰なので話にならず殺気だけで倒れていく羽目に。
あっという間に盗賊のボスがいる部屋に着いてしまった。
部屋の中にはガタイの良い男の両脇に若い男と女が立っている。ボスの名前はジャンバル。若い男はジャンで、女の方がヒナだ。
彼等は雰囲気で盗賊も物ではない事が分かる。強い、隙がない、間違いなく一流の剣の使い手だ。
何故ならボスのジャンバルの職業は「剣聖」だからだ。2人も「上級剣士」である。
盗賊じゃねぇじゃねぇか!
せっかくお宝ゲットだったのに、これでは盗賊詐欺である。
「よく来たな兄ちゃん」
ジャンバルが声をかけてきた。ジャンはこちらを警戒しながら睨みつけ、ヒナは静かに成り行きを見守っている。
「ああ、御宅の仲間に世話になってな。その落とし前をつける為にお宝を貰いに来たんだが何がある」
いきなりの物品要求である。盗賊なら何を言っても御構い無しだが今回の相手は明らかに訳ありっぽいので断られたら別にいいか、ぐらいの感じである。
「そりゃ悪かったな。そうだな、宝って言っても大した品物はここにはねぇぞ。価値が付くものっていったら俺の剣くらいか」
「おいっ、親父っ何言ってる!」
なんとも素直なボス盗賊(仮)だ。ジャンは怒ってるが。ヒナは特に変化はない。
「お前は相手の力量も測れねぇのか、明らかにお前より上だぞ。そこのメイド達も只者じゃねぇな。お前達は何者だ」
「なっ!?」
ジャンバルの言葉に息を呑むジャン。どうやら随分と信頼しているようだ。普通ガキとメイドが実力者なんて言っても直接実力を見ないと誰も信じないと思うしな。
「いや、剣は要らないぞ。あー、でも何も貰わないのもあれか。他に何かある?」
「はっはっは、俺の聖剣を要らないってか、売れば金貨何百枚にもなるっていうのに。良いだろう、だがその前お前の名前を聞かせてくれ」
「? リョウだ」
「ならばリョウ、お前には金貨以上の物をさし出そう。ヒナっ!今からお前はリョウの物だ、これからはリョウに仕えろ」
「分かりました父上。リョウ様宜しくお願いします」
「なっ! また何言ってんだ!」
ヒナが進み出て挨拶をしてくれた。どうやら一連の流れでヒナが俺に戦利品として差し出されたらしい。相変わらずジャンは納得してないが。
ヒナはサラサラして柔らかそうな銀色の長い髪をした16才の美少女だ。身長は162だな、フィアより少し上か。身体もスレンダーな体型でグラマーな感じのフィアとミィにはない良さがある。
ヒナも納得しているようだしここは大人しく貰っておこう。ヒナに近付き久しぶりに女神の加護「好意」「発情」を発動する。
「っ!」
俺が目の前に立つとヒナの目がとろんと潤み始める。俺は構わずヒナを抱きしめて言う。
「俺の物になれ」
「はいっ!」
ヒナの強い返事を聞きそのまま口づけを交わしヒナの口の中を蹂躙する。
唇を離すとヒナのとろけきった顔がそこにはあった。
ジャンバルは笑いジャンはうるさく叫び、フィアとミィは羨ましそうな目でこっちを見ていた。
「それじゃあヒナは貰って行くぞ」
「ああ、宜しく頼む。俺もヒナがそこまでべったりになるとは予想外だったぜ」
ジャンバルがヒナを見ながら言う。ヒナは俺にべったりくっついて離れないのだ。まるでフィアやミィのようである。
「待て! その前に俺と立ち会え」
ヒナの様子を見ても納得していないジャンが決闘を申し出て来た。ふむ、確かに彼を納得させる為になら戦っても良いだろう。異をとなえてきたジャンに対してヒナはご立腹だが。
「いいぞ」
という事で外に出てから剣を構えて対峙する(ジャンが)
「なんだ、お前は武器は使わないのか」
「俺は魔法使いなんだ」
「はっ、なら初めから勝負あったな」
そう言ってジャンバルの合図に合わせ飛び込んでくるジャン。その勢いのまま袈裟斬りに斬りかかるが俺はその剣筋を見切り僅かに身を引いて躱す。
「まだまだ!」
ジャンは上級剣士に恥じぬ見事な技量を持ち合わせていた。そして力と速さを兼ね備えた猛攻はここが闘技場の上ならば拍手喝采を浴びているだろう。だがここは残念ながら闘技場の舞台でも何でもないのでそろそろ終わりにしよう。
「はぁはぁ、何だ躱すだけか」
息が切れてるのに強がるジャンの放った斬撃を指で掴み頭にデコピンを放つ。
ジャンは某ギルマスのように剣を手放し飛んで行った。さらばジャン。
「おいおい、こいつはとんでもねぇな」
「凄いですリョウ様!」
「「旦那様(ご主人様)なら当然です」」
はい、ジャンのレベルは42だからこうなるのも当然です。剣聖の息子なだけあって結構高いが。
「これでいいな、それじゃあ行くぞ」
「ああ、娘を宜しく頼むぜ」
「当然だ」
俺はヒナを仲間に加えて盗賊に襲われた地点に戻った。ヒナにはこれからメイドの英才教育を受けて貰う事になる。(フィアとミィに)是非頑張って貰いたいものだ。
「ここは?」
「空間転移の魔法で移動した」
簡潔に答えてこれからの事をヒナに話す。
「これからヒナは俺のメイドになって貰う。それでこっちはお前の先輩であり姉になるフィアとミィだ」
フィアとミィを紹介する。
「フィアです」
「ミィです」
メイド達も簡潔だ!
「はい、ヒナです。宜しくお願いします」
ヒナに俺の能力を話し職業をメイドに変更、お揃いのメイド服も支給して着替えて貰った。
「あの、ご主人様。どうでしょうか?」
銀髪美少女剣士がメイドにジョブチェンジ。素晴らしい。剣を学んで培った凛々しさと、元から持つ可憐な可愛らしさを兼ね備えた剣士メイドだ。
「最高だ」
「あっ、ごしゅっ、ん〜っ」
ヒナを強く抱きしめて口づけをする。
「「む〜」」
「フィア、ミィ」
「「はいっ」」
メイド姉妹は拗ねても可愛い。
「ヒナ、先ずは俺が指導(調教)してやる」
「はいっご主人様」
こうしてメイド姉妹に新しい妹が加わった。旅をすると新しい出会いがある。やはり旅は良いものである。これからどんなメイドたちに出会えるだろうか。
まぁ先ずはヒナからだな。
初めが肝心と言う事でその日は朝が来るまで熱血指導を行った。受け身なヒナは何度も気を失いながらも最後までやり遂げてくれた。素晴らしいメイド魂である。
これからも沢山の愛情を注いでメイド娘たちを育てていこう。




