侯爵令嬢と女騎士
ヒナの実践訓練から数日、リュードに向けて馬車を走らせていた。
メイドの姉妹仲は良好のようだ。上下関係は厳しそうだが。
俺の左右に陣取るフィアとミィ。正面で寂しそうに指を咥えるヒナ。
うむ、このままではかわいそうだ。
小柄なミィを膝の上に座らせてヒナを隣に呼ぶ。
「みぃぃぃぃ」
ミィは喜びながら首に抱きついてくる。フィアとヒナも左右から寄り添い腕を絡めている。ゆったりとしたメイド娘たちとの幸せな時間が流れる。
自然の景色(森の中)を満喫しながらだ、これぞ旅の醍醐味だろう。
「ひゃんっ」
フィアの細く尖ったエルフ耳は甘くて美味しい。フィアの反応もいつも可愛い為つい咥えてしまうのだ。
「旦那様ぁ」
上目遣いで見てくるフィアに優しく触れるくらいのキスをする。周りの目があるからだ。
「みぃ〜」
「ご主人様」
見られていた。
メイド娘たちのおねだりに応えながら旅は続く。
マップを見るとこの先に人の集団がいるようだ。旅に出て第1村人発見である。(村人じゃないぞ、既に盗賊に会ってる)比較的移動のペースが速いようだ。詳細を確認すると侯爵令嬢一行で周りは騎士の皆さんが馬に乗ってらっしゃる。侯爵家の私設団か。
外を馬車で移動するって言っても本当に馬車だけで外を走れるのは俺達のように腕がある者だけだ。
基本商人なんかは護衛で冒険者を雇うのが普通なのだ。商人が魔物を倒せるくらい強ければ別だろうが。
そして当然冒険者は馬なんて持ってないから歩きになる。その為街の行き来はかなりの日数がかかる訳だ。侯爵家の皆さんは貴族だけあってかなり資金は裕福なようだ。
ん、周りにオークの群れが現れたな。20、いや30はいるな。しかもオークキングまでいる。やばくない?
あ、戦闘に入った。レベル的にオークだけなら問題無いんだけどな。
盗賊に続いてのイベントである。
それじゃあ助ける要求に何を貰おうか。お金?は別にいらないしな、何かマジックアイテムか、別に対して興味ないな。・・・欲しい物とか無いな。
まぁいっか、メイド娘たちと人助けの旅と言う事で。
自分が思ったよりも物欲がない事に驚いたが俺にはメイド娘たちがいるのだ。既に満足していたようだ。
「この先でオークの集団に人が襲われてるから助けに行くぞ」
「はい、旦那様」
「「はい、ご主人様」」
ふにゃんとした顔のメイド娘たちが直ぐにシャキッとした顔で返事を返す。メリハリのあるメイドさんだ。
馬車を出てアイテムボックスに収納し、空間転移で侯爵令嬢の乗る馬車の近くに移動する。
「「ブオォッ」」
「はぁっ」
女騎士はオーク2匹を相手に立ち回っている。
一対一なら問題無いだろうがこのままでは厳しいだろう。構わず助太刀する事にした。それが目的だしな。
「援護する!」
声を張り上げて女騎士が相手するオークを、黒に魔力で染めたオリハルコン製の剣で一刀両断する。
「なっ!お前達は何者だ」
驚く女騎士だが構ってる時間は無さそうだ。
「ヒナ、ここで馬車を守ってやれ」
「はい、ご主人様」
ヒナがアイテムボックスから剣を取り出すとその光景を見ていた女騎士、名前はシェリーだ。は驚いた表情を浮かべる。何も無い所から取り出せばそうなるか。
「フィアとミィは散開して倒せ。オークキングは俺が倒す」
「はい、旦那様」
「はい、ご主人様」
「「「オークキングっ!?」」」
シェリーだけでなく周りの騎士達の耳にも入ってようだが関係ない。前に出過ぎてる騎士がいるようでそろそろ危ない、そっちのフォローはミィに任せよう。
手分けしながらオークを狩り続けて殲滅していく。
粗方倒したら最後にオークキングがやって来たようだ。来るのが遅い。
「旦那様」
フィアが隣に報告に来た。ドロップアイテムは放置している。魔物を横取りする盗賊じゃないからな。
「ブォォォォォォォォォ」
「後はこいつだけか」
「はい、旦那様」
俺の呟きも聞き逃さず拾って返事をするフィアに関心しながらオークキングに留めを刺す。
「うるさい」
叩き斬っても良かったのだが演出も大事だろう。オークキングは空間圧縮によりドロップアイテムに変換されてしまった。
「良かったな、生きてて」
呆けてる騎士、名前はラインに声をかける。彼はミィに助けられなければ死んでいただろう。感謝しなさい、ミィに。
とは言え騎士達も全く無傷という訳にはいかなかったようだな。欠損はないが深手を負ってる者も多数いるみたいだ。
「助かった、感謝する」
直ぐに気を取り直して頭を下げる騎士ライン。素直に頭を下げるとは彼は真面目な性格のようだ。
「構わない、困った時はお互い様だ。内のメイド達は強いしな、オーク程度なら問題無い」
オークどころかレッドドラゴンが何体来た所で返り討ちだ。ヒナはまだ無理だけどな。
「確かに強かった。悔しいが私よりもな」
本当に悔しそうだな、表情によく出てる。本当に正直な人だ。
「それより怪我をした奴がいるだろ、治してやるから見て回っていいか」
「回復魔法まで使えるのか! 助かる、宜しく頼む」
再び頭わ下げる騎士ライン、いやラインくんと呼ぼう。
戦闘が終わったからミィとヒナも合流して来た。ヒナはシェリーと侯爵令嬢を引き連れて来たようだ。
「あなたがヒナさんの主人であるリョウ様ですね。私は侯爵家の人間であるアリスティア・アルテンと申します。今回は私共を助けて頂き感謝致します」
「ああ、こっちは出来る事をしただけだから気にするな」
どうやらこっちも礼儀正しいようだ。助けた後に偉そうにされると萎えるもんな。良かったよかった。
アリスティア嬢は見ての通りフィアやミィに匹敵する美少女だ。柔らかそうなふわふわな金髪に大きなクリクリした目で小動物みたいな可愛らしさがある。身長はミィより少し上か、だがある部分はフィアに匹敵する。そして先程の挨拶には貴族としての誇りか、芯の部分を感じた。見た目通りじゃ無いって事だろう。
要するにとても良い。だが貴族の娘なのでメイドにするのは難しいか、侯爵令嬢だしな。ミィの時とは状況が違うしな。残念だ。
「っ!?」
びくんっ、としたアリスティアだがどうしたのだろうか、先程より顔が赤くなっているが。
「それより怪我をした者の手当てをさせて貰っていいか、欠損は無いようだが傷が大きな者もいるだろう」
「「!」」
俺が回復魔法を使えるというのはアリスティアとシェリーも驚いたようだ。
「ぜ、是非お願いします。報酬は必ずお支払い致しますので!」
「お、おう。分かった」
アリスティアの気迫に押されて騎士達に回復魔法をかけていく。
「うおー治ったぞ」
「助かった。これで問題なく護衛が出来る」
「ありがとう、ありがとう」
なんか騎士達は良い人が多いな。アルテン侯爵は良い人なのだろうな。
「まさかこれ程とは」
ラインくんが感心しているが回復魔法なんだから治るもんじゃないのか。どこに感心してるのかよく分からんな。
「ああ、ありがとうございます!」
ガバリと頭を下げるアリスティア嬢だがかなり顔が赤くなっている。熱でもあるのか?
隣に立つシェリーもアリスティア嬢と同じくらい赤くなってる。
「おいおい、大丈夫か」
「はい、大丈夫です!それで報酬の件ですが夜までお待ち頂いて宜しいでしょうか?」
「ん、それは構わないが」
「で、ではそれでお願い致します。ライン後を頼みますね、シェリーは来なさい」
「「はっ」」
そのままシェリーを連れて立ち去るアリスティア嬢。一体どうしたんだろうか。
「今回は助かった、改めて礼を言わせてくれ、ありがとう」
「ああ、受け取っておこう」
ラインくんと話して俺達も今日は彼等に同行する事になった。騎士達はフィア達メイド姉妹にも感謝していた。
普通なら反発してもおかしくないが、全くもって気のいい奴等である。
アリスティアside
「お嬢様、どうしたのですか」
シェリーは興奮していた。だが努めて冷静な口調で話す。シェリーは目の前でオークを一刀両断したリョウに尊敬を寄せた。それは図らずも自身で女神の加護の対象となってしまったのだ。
それだけならまだ良かったが留めにリョウの回復魔法を見てしまう。恩を売るでもなくただ当たり前のようにこなすリョウをみてまたそこで感心してしまう。その相乗効果で既に「好意」が「発情」にまで育っていた。
そしてアリスティアにラインの事をネタにされて、恋愛に興味を持ってしまったシェリーが今の自分の心境を恋だと思うのも仕方ない事だろう。
「シェリー、リョウ様の報酬は何が相応しいでしょうか?」
シェリーはこの時既に頭の中で妄想を終わらせていた。当然その答えは既に出ている。
「リョウ様にはお嬢様の命を救って頂いたと言っても過言ではありません。ならばそれ相応の物を出さねば侯爵家が笑われてしまいます。お嬢様の側を離れる事になるのは寂しいですが、報酬には私の身体を差し出して下さい。それならばリョウ様も納得する筈です」
「駄目です!リョウ様に親友であるシェリーを差し出すなどそれこそ私が笑われてしまいます。だからリョウ様には私自身を差し出す事にします」
「お嬢様!」
やはり。と、それはアリスティアとシェリーの2人が思った事。アリスティアも既にリョウから女神の加護「好意」を受けているのだ。
アリスティアとて年頃の女の子だ。貴族の侯爵家と言う事で自由な恋愛など許されるはずもないが憧れはする。それが突然現れて助けてくれる頼もしい人物が目の前に現れたらどうだろうか。それもリョウは馬車の中で震えながら外を見守るアリスティアの目の前でオーク2匹を一刀両断したのだ。それを運命だと思い込むのは無理もないだろう。
「シェリーにはラインがいるでしょ!」
「いりません!私はリョウ様がいいんです!」
「何贅沢言ってるの!リョウ様が望む報酬でなきゃいけないのよ、なら私の身体しかないじゃない!」
「お嬢様は侯爵家の娘なんですよ、そんな勝手が通る筈無いでしょう。ここは私を差し出した方が丸く収まります」
「そう言ってシェリーがリョウ様に抱かれたいだけでしょう」
「リョウ様がそれを求めてくれるなら私に反対の意思はありません」
「ん〜」
「む〜」
2人して睨み合うアリスティアとシェリー。ここで折衷案を出すアリスティア。
「ならば報酬は私達2人にすればどうかしら」
「! それです!」
2人納得してリョウを呼び出す事に。
「それで報酬は何になるんだ」
聞いたリョウの目の前でおもむろに服を脱ぎ出すアリスティアとシェリー。下着姿でリョウの前に立ち宣言する。
「報酬は私達です。どうか気の済むまで堪能して下さい」
「わ、私は身体を差し出すだけだ。心まで自由にできるとは思わない事だ。だが好きなだけ蹂躙してくれて構わない。私はもうリョウ様の物だからな」
断られる事など微塵も考える事なく真っ赤な顔で宣言するアリスティアと挑発するシェリー。
「つまり俺のメイドになるって事で良いのか」
メイド脳のリョウが心配する事はそれだけだ。
「私達は既にリョウ様の物です。リョウ様が望むならメイドにだってなります」
恋愛脳のアリスティアはリョウの望むことなら何でも受け入れてしまう。
「わ、私は騎士だ。私をメイドにしたいなら私を屈服させてみろ。だが私はリョウ様の粗末な物で・・・は・・・」
恋愛下手で素直になれないシェリーは服を脱いだリョウの一部をみて絶句する。
「・・・凄い」
対照的にアリスティアはうっとりしている。
「うそ、そんなの無理ぃ」
急に弱気になって這いずって逃げようとするシェリーだが。
「なんだ、メス犬プレイか、悪くないな。もう俺の物なんだから遠慮なく指導(調教)して行くぞ」
ヒナ(ドM)によってドSに目覚めたリョウにはシェリーにヒナと同じ匂いを感じた。ちなみにアリスティアはフィアとミィ派だ。
「もうシェリーったら抜け駆けするなんて」
アリスティアの呟きと共に本日2人のメイド娘が生まれたのだった。




