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閑話 ある日のフィアとミィ

 それはある日の事。


 いつもは離れる事なく側にいる筈の主人は、珍しく一人で出かけてしまった。


 宿にはメイド姉妹2人が留守番をしていた。


 フィアとミィは大好きな主人のメイドとして側にいる事を許されている。少なくとも2人はそう思っていた。


 フィアはミィと二人きりになったこの機会にある事を聞いた。


「ミィ、貴女は旦那様をどう思ってるの」


「ご主人様は私の大好きなご主人様です。ご主人様は私を救ってくれました。そして側に仕える事を許してくれました。私は生涯ご主人様の許す限りこの身で尽くしたいと思ってます」


 ミィはフィアの突然の問いに直ぐに答えた。ミィ自身もいつか訊かれる時が来ると直感していた。それは同じ主人を持つメイド姉妹だからこそだろう。


 主人であるリョウは彼女達では計り知れない程の偉業を成し遂げている。カルーアのダンジョンを完全攻略し、ドラゴンの上位種であるレッドドラゴンを倒すなど歴史に残る英雄の偉業だ。しかしリョウはそれを鼻にかけないどころか何とも思ってすらいないのだ。


 リョウにとっては出来て当たり前。それが彼女達を更にリョウに心酔させた。リョウは気付いてないが、女神の加護は一方通行ではなく彼女達の想いも強く効果に反映されるのだ。


 既に気持ちは両想い。それも女神の加護の効果で更に倍率どんっ!である。


 フィアは例えメイド姉妹の妹であるミィであっても、主人であるリョウの不利益になるなら躊躇い無く斬り捨てるだろう。リョウ自身に責められたとしてもだ。


 それてそれはミィも同じだった。既に親とは決別し自分には主人であるリョウしかいない。フィアに言った言葉は嘘偽りではなく本心からだ。ミィにとってはリョウが自分の全てなのだ。



「「・・・」」


 二人無言で見つめ合う。


 二人共目を逸らす事はしない。意地の張り合いである。自分の方が主人を愛していると。


 先に折れたのはフィアの方だった。


「そうですか、いいでしょう。ミィにも覚悟があるようですね」


「私はご主人様の物です。それだけはフィア姉様でも引く事は出来ません」


「分かっています。私達は似た者同士。旦那様の素晴らしさを知っている者ですから」


「ありがとうございます、フィア姉様」


 ミィは素直に感謝した。フィアからすればミィは邪魔者でしかない事は理解出来る。ミィでもそう思う筈だ。だからミィはフィアに聞きたかった事をここで口にする。


「フィア姉様はどうしてご主人様に仕える事になったのですか。私はフィア姉様はご主人様の妻になりたい様に見えます」


 ミィはフィアから怒られる事を前提に疑問を口にした。フィアのそれはそれだけあからさまな態度だったからだ。


「出来るなら私も旦那様の妻になりたいわ。でも旦那様の妻になれる方はきっと、旦那様と対等に渡り合える方だけだわ。私ではとてもでは無いけど駄目なのよ」


 涙を溜めて悔しそうに唇を噛みしめるフィアをミィは涙を流しながら抱きしめる。


「フィア姉様。ではどなたならご主人様の伴侶に相応しいのですか」


 ミィも分かっていた。主人は余りにも凄すぎる、現実とは思えない程異常なのだ。そしてそれが英雄と呼ばれる人間なのだと。だからミィは直ぐにリョウの伴侶になるのを諦めた。リョウもミィをメイドとして扱った。ならばリョウのメイドとして誰よりも主人に尽くそう。それがミィの意地であり生き甲斐だ。愛する人の道具として例え姉であるフィアであってもミィほ負けるつもりなど一切ないのだ。


「・・・そうね。もしかしたら世界を見守る6柱の女神様なら旦那様に相応しいかもしれないわね」


 フィアの感は当たっていた。6柱の女神の1柱である愛の女神ツゥアハート。彼女はリョウを愛し既に身も捧げている。女神に愛され祝福を受けているリョウは加護と幸運値が上昇しており、最早相手になるのは神クラスの相手だけだったのだ。


「女神。そうですね、流石ご主人様です」


 ミィもそれには納得した。世界を見守る6柱の女神。神である彼女達ならご主人様を任せる言い訳になる。少なくとも人間には、例え王女であってもミィに認める気は無かったからだ。


 成る程、確かに似た者同士である。嫉妬深く誰よりも主人の1番で在りたい。フィアとミィはこの時本当に姉妹になった。


「うふふ」


「はい」


 2人はお互いに笑い合う。


「ミィも私と一緒ですね」


「はい、フィア姉様」



「所でミィは旦那様に撫でられたり、可愛いがって貰う時に鳴きますよね?あれは何ですか」


 ミィと打ち解けたフィアは早速ミィに気になる事を聞いてみる。仲良くなっても彼女達はライバルでもあるのだ。決して負けるつもりは無い。


「それは、ご主人様が、ミィはミィだから嬉しくなったらみぃーって鳴けってご主人様が」


 ミィは恥ずかしそうに口にする。ミィ自身初めは恥ずかしかったが今では自然に口に出てしまう。リョウの調教スキルが意図せずに発動してしまっているのだ。


「昨日も沢山可愛いがって頂けましたし、でもご主人様激しいからミィが壊れるくらい、でもミィはそれが幸せで・・・」


 ミィの独白が止まらなくなってしまったがフィアは嬉しそうにそんなミィを眺めていた。






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