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決別

 ミィセン・オロトス。男爵家の三女。肩まで伸びた赤髪で小柄ながらも大きな胸のアンバランス差が魅力的な美少女だ。


 彼女は男爵の妻であるドナ・オロトスによって殺されかけた。執事の暴走かも知れないが。


 これから父親であるライオット・オロトスを訪ねて彼の真意を聞き出しミィセンをどうするか、ミィセン自身がどうしたいかを決めてもらう。


「それじゃあ早速行く訳だが準備はいいか」


「はい、旦那様」


「?」


 頷くフィアと首を傾げるミィセン。


 マップでローザリアを表示する。人のいない場所を確認してから空間転移で二人を連れて飛んだ。


 瞬間、景色がローザリアに変わる。


 ミィセンも流石に驚いたようだな。


「俺は転移魔法が使える。今ローザリアに飛んだから直ぐに父親に会えるぞ」


「っ!」


 目を見開いておどろくミィセン。俺が魔法を使うとみんなこんな感じになるのだ。


 一般で空間魔術を使える人がいないだろうしな。空間魔術は最上位職。賢者と同格でフィアでもなれなかったからな。


「旦那様なら当然です」


「凄いです!信じられません!」


「旦那様はレッドドラゴンも一撃で倒しますよ」


「っ! そんな・・・本当ですか」


「ええ、私も目の前で見た時は驚きました。巨大なレッドドラゴンが相手にもならなかったんです。一撃で倒す旦那様はとっても素敵でした」


 幸せそうに語るフィア。レッドドラゴンを倒したなど普通なら誰も信じない筈だが、暴漢供を瞬殺して映像魔法やら挙句に転移魔法迄経験したからかフィアの言葉を鵜呑みにして目を輝かせるミィセン。確かに真実だがお前には何もしてないからな。


 なんか女神の加護無しで惚れられそうである。レッドドラゴンを倒すとはそれだけ偉大な事なんだろう。これから毎日30分置きに狩って行く事になるんだがな。


「それじゃあ今度見に行くか。一瞬で終わるが」


「はい、見に行きたいです!」


 元気良く答えるが普通は会いたくない相手だと思うが。


 正直レッドドラゴンはレベル100の上位職パーティーが複数いてやっと討伐できるレベルだ。それ以下のレベルでは攻撃が通らないから邪魔なだけだ。つまり戦える者が限られるのだ。


 今のフィアなら一撃で倒せるだろうが。既にステータスは1万3千を超えた。最早フィアに勝てる冒険者はいるのだろうか?


 ミィセンはレベル3しかない。レッドドラゴンの威圧を受けるだけでショック死確定だ。行く時はある程度レベルを上げてからにしなければな。


「それじゃあ男爵の居る所に向かうぞ」


「はい、旦那様」


「分かりました」


 男爵はローザリアの領主の屋敷にいるようだな。無論正面から乗り込む。待つのも面倒だしな。領主は同じ男爵のようだ。


 屋敷の前の門兵に伝言を頼む。


「何だお前らは」


「今ライオット・オロトスが来ていると思うが彼の娘のミィセン・オロトスが面会を申し込みに来た。彼に伝えてくれ」


「ミィセン・オロトス? この娘がか」


「そうだ、後彼女は男爵家の令嬢だぞ。無礼な言動は慎めよ」


「! 失礼した。おい、伝えて来い」


 門兵は部下に指示して走らせた。直ぐに戻って来て屋敷の中の部屋で待つように言われ案内された。


 そわそわしているミィセンに声をかける。


「どうした、落ち着かないか」


「いえ。その、はい」


「大丈夫ですよ。旦那様に任せれば全て上手く行きますから」


 フィア、それは丸投げじゃないか?ミィセンも頷いてるんじゃない。まぁ出来る限りはするがな。


 紅茶を飲みながら待ってるとどうやら来たようだ。


 ライオット・オロトスと執事の男だ。この執事はどうやら映像で見た老執事の息子のようだな。


 ライオットが席に座り執事が後ろに立つ。


「よく来たなミィセン。それで君達は何者だ」


「俺達はミィセンが暴漢供に襲われてるのを助けた者だ。俺はミィセンにそいつらを復讐するか聞いたが彼女はそうはしなかった。そして父親に話を聞きたいと言うから護衛して連れてきた」


「そうだったか、ミィセンを救ってくれて感謝する。だが誰がミィセンを襲ったのだ」


 俺の口調に顔を顰めたが咎めるようすはないようだ。ミィセンを誰が襲ったか。演技している風ではないな。それなら見せてやろうか。


「いいだろう。良く見てくれ」


 俺はフィアとミィセンに見せた映像をライオットにも見せる。ミィセンが襲われた場面も追加してだ。


「「っ!」」


 執事も驚いているようだが、ばれて驚いているのかそれとも知らなかったのか。まぁどちらでも構わないが。


「これが先日あったことだ。何か心当たりはないか。ミィセンは酷く傷ついている」


 先日と言ったがローザリアまでは馬車で半日かかる為こういう言い方をしたのだ。空間転移で飛んで来ましたでは混乱するからな。


「妻がミィセンを良く思ってないのは知っていたがここまでの事をするとは。コジーは知っていたのか」


「いえ、私も父がこの様な事を仕出かすとは信じられません。彼の作り話では?」


 どうやら執事のコジー氏は俺に罪を着せたいようだ。彼も老執事とグルだったようだな。


「どういう事だ、何を言っている」


「奥様は確かにミィセン様を良くは思っておりません。ですがそのような短絡を起こす方でもございません。ならばミィセン様を出しにして旦那様を強請るつもりでは」


 執事はそう言いながら俺を睨み付けるがお門違いも甚だしい。それに俺は金は既に手に入れたから要らないんだが。


 ライオットまでも執事の言葉を信じたのか俺を訝しげに見る。とは言え俺にはどうでもいい事だ。


「茶番はいい、ミィセン」


「はい。お父様、この方の仰った事は本当です。私はこの方に助けて頂かなければ死んでいました。ここまで来れたのもこの方のお力をお借りしたからこそです」


 ミィセンは庶子の娘ではあるが貴族の娘として毅然とした凛々しい態度を見せライオットと向き合った。


 14才の少女にこれだけの風格が出せるなら庶子なんて関係無いと思うがな。いや、庶子だからこそ身につけたのか。


「私はドナ様にもお姉様方にも良く思わらていないのはわかっています。ですがそれが殺される迄になるとは思っておりませんでした。これにお父様も関わっておられるのでしょうか」


 ミィセンが聞きたかったのはこの事だった。最後にミィセンが縋れるのは父親だけだった。その父親が自分を裏切っているのか知りたいのだ。


「私がお前を殺そうとなんてする筈ないだろうが。その男がお前にそう吹き込んだのか」


「いいえ違います。お父様はドナ様やお姉様方のする事に一切口出ししませんでしたよね。それでも私は信じていたのです。お父様がいればここにいていいのだと。お母様が亡くなり屋敷に私の居場所は無くなりました。お父様は私をどう思っておられるのですか」


 真摯に向かい合うミィセンにライオットは息を飲む。彼は今まで無視し続けてきた物のツケを払う時が来たのだ。


「お前の事は大切に思っている。だがドナやセシルの方が順位が上なのも事実だ」


 ライオットの告白に言葉も無く静かに涙を流すミィセン。


「お前をここで放り出せば貴族としての体面も悪くなる。ロジーがそう考えて暴漢を使います処分しようとしたのもそういう考えがあったからだろう。親としては怒りしかないが貴族としては分からない訳ではない」


 処分? 何言ってんだこいつ。後ろの執事もほっとしてんじゃねぇよ。


「・・・ではお父様は私を殺すのですか」


「殺しはしない。だが外出は今後は出来なくなるだろうな」


 どうやらライオットはドナ側に寝返ったようだな。貴族なら娘くらい守って貰いたいものだが。


「つまりあんたは今後ミィセンを自由にしないって事だな」


「そうだ。だがお前にこの事を口にされるのは困る。金は出そう、いくら欲しい」


 この手の輩は金さえ出せば好きに出来ると思っていらようだ。呆れるな。


「要らん、お前みたいなクズにミィセンは預けられんな。俺が貰って行く」


「「「!!!」」」


 絶望した表情だったミィセンの表情が輝き出した。そうだな、女の子はそんな悲しそうな顔よりも笑った方が似合うのだ。


「貴様何を言っているのか分かっているのか。不敬罪で裁く事も出来るんだぞ」


「お前にその力は無いだろう。それにここに来たのはミィセンがあんたを頼りにしてたからだ。その期待をあんたは裏切ったんだ。だから連れて行く。絶望の中鳥籠で一生を過ごすよりも俺と来た方が楽しいに決まってるだろ」


 もう話す事は無いな。オロトス家はこの男で潰れるんじゃないだろうか。執事もどうかと思うがな。


「行くぞフィア。ミィセンも最後の別れの挨拶ぐらいはしておけ」


「はい、旦那様」


「はい」


 ミィセンは席を立って最後にライオットに向き合い一言。


「今までお世話になりました」


 そう言って一礼し、俺の背に続いて部屋から出て行った。ライオットは最後まで何やら喚いていたが興味が無いのでそのままスルーした。







「あの、ありがとうございました」


 屋敷を出て空間転移でカルーアに戻った頃ミィセンは頭を下げて俺にお礼を言った。


「構わない、それより俺と一緒に来るって事で良いんだな」


 ミィセンに確認せずに連れてく宣言をしてしまったからな。


「はい、よろしくお願いします」


 そう言ってミィセンが礼をする。貴族としての教養がある為かその所作は上品だった。


「お前をお嬢様として連れて行く気は無い。フィアと一緒で俺のメイドとして働いて貰うが構わないな」


「はい!」


「それじゃあ今後は俺の事はご主人様と呼べ。俺もお前をミィと呼ぶ。頼むぞミィ」


「はいっご主人様!」


 ミィの満面の笑顔が見れて良かったと思う。


 気付けば女神の加護を発動していないにも関わらずミィは女神の加護「祝福」を授かっていた。


 俺は発動してないよな?


 きっと彼女自身で俺に愛と忠誠を誓ってくれたのだろう。その期待に応えて大切にしなければな。




 こうしてちょっとした寄り道でメイドが増えたのだった。


 ミィは見た目以上に有能そうだ。早速ミィにもメイド服を仕立てなければ。




とうとうメイド娘の2人目の登場です。


ミィはとっても可愛いので皆さんよろしくお願いします。


たまにみぃーって鳴きます

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