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職業(仮)

 フィアに職業も付けたしそろそろ行くか。


「フィア、これからダンジョンに行くがいいな」


「はい、旦那様」


「それじゃあ昨日行った5階層に跳ぶぞ」


「?」


 フィアの首を傾げた可愛い姿を見ながらダンジョン5階層に空間転移する。


「え?」


 目を、ぱちぱちと瞬きするして驚くフィアを、俺は優しく抱きしめて頭を撫でる。


「その、旦那様に、撫でられるとどうしようもなく安心出来ます。旦那様の為にしっかりしなきゃと思ってましたが旦那様の包容力には敵いそうにありません」


 そう言って頬を染めながらすりすりと擦り付けるフィアが愛おしくて幸せな気持ちになる。


「問題ない。フィアは俺に尽くしてくれればそれでいい。俺そんなフィアを愛でるだけだ」


「はい、旦那様」


 抱き締めたフィアにキスをしてから解放する。


 フィアといるとそれだけで充実する。これも愛の女神のおかげか。感謝しとこう。








 ダンジョン5階層にはもう用は無いのでさくさく進むとしよう。


 マップを確認しながら最短ルートを選んで進んでいく。


 出会う魔物もまだ弱い奴しかいない為、わざわざフィアに倒させる必要も無いだろう。俺が処理していくか。


「フィア、魔物は俺が倒す。フィアは俺に付いて来るだけでいい」


「はい、旦那様」


 フィアは文句も言わずに頷いてくれた。悪くない。


「フィア、俺の為に最高のメイドになってくれ」


「はい!旦那様っ!」


 うむ、いい笑顔だ。その顔だけで幸せになれる。


 名前を呼べば必ず「はい」と返す。他人行儀と言うより様式美なのだ。だから俺はついつい名前を呼んでしまう。はいの返事するフィアは可愛いのだ。


 やはりメイドの素質があるんだろうな。


 下の階層に進む中、魔物が現れる。


「旦那様、キラービーです!」


「ああ、問題ない。見ていろ」


 俺はキラービーの集団に向けて右手を前に出し拳を握る動作をする。


 キラービー達は一瞬にして圧縮され消滅。ドロップアイテムに変換された。


「旦那様!」


「今のは空間魔術だ。空間を指定して圧縮する魔法だな。空間そのものを固めて壁にして盾に使ったり、その応用で階段を作ったりな。ほら、魔力を流して色を付けてやれば分かりやすいだろ」


 実演して説明してやる。空間魔術は転移や圧縮だけでは無い。様々な応用が利くのが最大の利点だろう。


 通常は自分自身が起点となる属性魔法も空間魔術を併用する事で発動地点を指定出来るのだ。


 これを使えばゼロ地点で相手にダイレクトで魔法が放てる。ファイアボールを魔物の体を起点に発動すれば当てる必要すら無いのだ。強すぎるな。


「すごい、本当に凄いです!旦那様!」


 目を輝かせて興奮するフィア。彼女は元冒険者だから俺がやってる事の凄さを実感できるんだろう。


「当然だ。俺はフィアの旦那様だからな」


「はいっ!」


 偉そうに言うがフィアは上機嫌で肯定した。確かに空間魔術は俺も使った時は感動したからな。単純に強すぎるし使い易くて便利過ぎるんだよな。


「それじゃあさくさく行くぞ」


「はい、旦那様」


 ダンジョンの中をまるでピクニックに行くかのように楽しく2人で進んでいく。


 魔物が出るポイントはマップで分かっているので出た瞬間に圧縮。また圧縮。はい圧縮。


 彼等はドロップアイテムに変換される為に出て来るのだ。


 ドロップアイテムはフィアには拾わなくていいと指示を出している。それは拾って行かないと言う訳では無く、念動力を使えば間接的に触れた判定になる為アイテムボックスが使えるのだ。


 その為ドロップした瞬間アイテムボックスに収納される事になる。


 本当に魔法は便利だな。


 7階層迄の出現する魔物は変わらず、8階層でオークとゴブリンの階層にかわる。


 オークとゴブリンは、アーチャーやらメイジやらと言ったクラス持ちの魔物に変わるようだ。だがドロップは変わらずオークは「肉(並)」だしゴブリンは「魔石(極小)」だ。


 たまにいるオークジェネラルは「肉(上)」をドロップするので少しはましか。


 ホブゴブリンは「魔石(小)」だったが。


 強さは推して知るべしだ。全て圧縮されて潰れていくのである。残念。


「あの、旦那様」


「どうしたフィア」


「あのレベルが、かなり上がっているのですが。これも旦那様が?」


 そういえば言ってなかったな。今迄と違う上がり方をすれば驚くか。既にフィアのレベルは41になってるしな。ステータスも2000を突破したか。フィアからしたら爆発的に上がっている感覚か。


「そうだ、俺のスキルをフィアに使ってレベルを上げ易くしてる。レベルが上がればそれに比例してステータスも上がるからな」


「本当に凄いです」


 フィアの俺を見る目が敬愛から信奉に変わっている気がする。フィアの今日何度目かの凄いは感嘆だけでは無かった。いつの間にかフィアのステータス欄には女神の加護に「祝福」が追加されていた。


「祝福」 効果 対象者に絶対の愛と忠誠を誓う


 これも女神の加護の力なのか。


 フィアに加護を使った際には無かった筈だ。なら何か条件があるのか?好意なら加護で上げる事が出来るが、ならそれ以外の条件があるのか。分からないな。


 まぁ特に問題無いからいいか。


「フィア、フィアのステータスにある女神の加護をどう思う」


「女神の加護ですか? 私のステータスにありませんけど」


「!?」


 確認するがフィアのステータスには確かに女神の加護「祝福」がある。フィアには見えない? これにも何か理由があるのか。分からない事だらけだが、今はそれで不利益になる訳でもないしな。仕方ない、取り敢えずは置いておくか。


「いや、いい。それよりもう直ぐ9階層のフロアボスだ」


「はい、旦那様」


 不自然に会話を切った所為かフィアは不思議そうにしてた。


 ん? そう言えばチームを組むと仲間のステータスが見れるんだよな。女神の加護が見えないって事はフィアには俺の職業はどうなって見えてるんだ?


「フィア、俺の職業が見えるか」


「はい、旦那様の職業は英雄王です。私は初めて聞きましたが旦那様の力の一端に触れた今、その凄さは私の理解の範疇を遥かに超えています。間違い無く旦那様は神の力を持っております。英雄王とはこの世の全ての王であり、この世界の神です。神である旦那様にお仕えできてフィアは幸せ者です!」


 フィアのテンションが過去最高に高いな!ってか俺は女神の使徒であって神じゃねぇよ。


 これはツゥアハートが弄ったな。何が英雄王だよ。王様とか英雄になれって言ってたのが一緒になってるじゃねぇか。


 何だ? 女神の使徒ってのがバレるのは不味いのか。この世界で女神の使徒なんて言ったら神の代行者みたいなものか。そう考えると面倒しか生み出さない様な気がしてくるな。


 しかし俺のやる事は全て英雄王の一言で解決するような気がするな。いいのかそれで。俺は困らないが。


「しかし俺が英雄王ならフィアはメイドの女王を目指さないとな」


「っ!? 旦那様!」


「それはそうだろう。俺の横で仕えるならそれくらいはならないとな」


「はい!旦那様! 私は必ずメイドの女王になってみせます!」


 ただの乗りだったんだがフィアは本気のようだ。しかしメイドの女王か、悪くないな。


 いつか職業がメイドの女王になる日は来るのだろうか。


 この日はお互いにテンションが高く、15階層まで突破して帰還した。


 フィアは俺のやる事全てに手放しで褒めて持ち上げるので、俺はとても気分が良かった。


 でもそんな事したら俺は調子に乗って、何かやらかすだけなので自分では少し自重しようと思ったが、そうは思っても結局なにかしてしまう気がする。


 その時は仕方ないな。そう思いながらも夜はテンション高く今日も盛り上がった。





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