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師仲は、実能が人造りの話を聞いた俊房の孫に当たる。


実能は秘術が俊房の子孫に伝わっているだろうと言っていたが、直接聞いてみるなど西行も大胆なことをしたものだ。


「それで、師仲殿は何と仰せられた? まさか、あのような話をお認めにはならなかったであろうな」


「いえ、実能様から聞いた話をすると、師仲様はあっさりと認めてくださいましたよ。実能様が秘術を知っていることもご存知でした。人造りの秘術の話をすること自体は構わないのだそうです。人間は好奇心が旺盛で、秘するべきことにかぎってついしゃべってしまうものですからな。ただ、誰を造ったかを明かすあの呪いのことだけは、決して破ってはならぬと何度も念を押されました」


「それで、実能様のやり方は間違っておったのか?」


「いえ、大概においてはその通りだそうです。ただ、反魂の秘術を行うのが早過ぎるのと、その際に普通の香ではなく、乳香を焚かねばならないのだとか。仏前にも供える香は、魔を遠ざけ菩薩を呼び寄せる力があります。菩薩は生き死にを深く忌まれるので、せっかく人を造っても心を入れることが難しくなるのだそうです。それから、人を造ろうとする人間も七日の間食を絶って潔斎するべきで、これらのことを守れば完璧な人間を造ることができると申されておりました」


「そうか。そうすれば、本物そっくりの人間を造り出すことができるというわけか。そなた、その方法を知って、もう一度試みてみたのではないか」


「そうしようと、思ってしまったことはあります」


そう言うと、西行は簀子に出て階に腰を下ろし、庭に咲いている桜の梢を見上げた。


「私は、桜の花を見ると、いつも待賢門院様を思い出すのですよ。本当に、満開の桜の花を思わせるような、あでやかでお美しいお方でした。それで、ある時その面影が心に浮かんで、自分でもどうしようもなくなって、ついふらふらと法金剛院の裏の五位山まで登ってしまったのです」


五位山には、待賢門院の御陵所がある。


死後は火葬にせずその陵墓に土葬せよとは、待賢門院の御遺言であった。


「私は御陵所の前で、長い間額づいていました。本当に、御墓の石室を破ってしまおうと、この手までかけたのですよ。その石室の中には、あの方の御骨がそのままの形で全て残っています。もしそれに人造りの秘術を施せば、御生前通りのあの美しいお姿を、もう一度この目で見ることができるのです……でも、私は結局、そうしませんでした」


「それは、なぜじゃ」


「あの、義親の甦りであるという人のことを思い出したからです。あの人は、こう言っていました。不死身の身体というものは、只人が思うほど良いものでは決してない、と。自分だけがただ一人、永遠に歳を取ることもなく生き続けることの哀しみを、あの人は私に教えてくれました。永遠の命を持ちながら死を望んだあの人と同じ思いを、私は待賢門院様におさせすることはできませぬ。それに、恐ろしい秘術を使って甦らせなくても、待賢門院様の面影は私のすぐ側にあることに気づいたのです。今もここに、これからもずっと……」


そう言って、西行は自分の胸に手を当てた。

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