第三十八話 カゲの正体
「ふーっ……ここが今日のパーティー会場か? 随分としけた雰囲気じゃねえか。ほれ、特別ゲストが来たんだ。酒の一杯でも出しやがれってんだ」
「ユリウス様!? どうしてここに!?」
「僅かだったが、奇妙な魔力がこの国に入ってきたのを感じてな」
魔力を感じる……?
私にはよくわからないけど、ユリウス様ならわかるのかな?
「おや、その時点で気づかれていましたか。聖女の魔力の中なら、絶対に気づかれないと踏んでいたのですが」
「そこらへんの連中なら、わからねーだろうけど、ワシは天才だからな。それに……肉親のことがわからない奴が、どこにいやがる?」
「に、肉親? ユリウス様、いったい……」
「ほれ、うら若き乙女が疑問に思ってんぞ。いい歳して、疑問一つにも答えられないほど、落ちぶれたのか?」
「相変わらずですね。いいでしょう」
マントの男は、ふっと小さく笑いながら、マントのフードを取ると、どことなくレオン様やユリウス様に似た、知的な男性の顔が外界に晒された。
「……まさかとは思っていたが、やはりか。これが悪夢なら、さっさと目覚めて、気分転換に一杯飲みたい気分だな」
「そんな寂しいことを仰らないでください。今のこの体なら、いくらでもお付き合い出来ますよ?」
「下戸のお前がか? 冗談じゃねえ。てめえとそんな時間を過ごすくらいなら、研究をしている方が、百万倍有意義だ」
「ユリウス様、知り合いなんですか?」
気になりすぎて、話の間に入って聞いてみると、ユリウス様は小さく頷いた。
「奴の名は、ガイウス・ヴァルハザード……ワシの実の弟だ」
「えっ!?」
ちょ、ちょっと待って。私の聞き間違いじゃなければ……今、弟って言ったよね!?
それに、ガイウスって……どこかで聞いたことがある名前……そうだ! いつだったか、社交界でその名前を聞いたことがある!
「あれ、でもおかしいですよ! 確か、ガイウス・ヴァルハザードは……十年前に、処刑されたんですよね!? もしかして、私の記憶違い……?」
「私についてお詳しいのですね、セシリア嬢。光栄の至りです」
「相変わらず、心にもないことばかり言いやがる。魔力体になっても、そこは変わらないのか」
「魔力体?」
「奴は人間じゃない。体の全てが、魔力で出来ている。簡単に言えば、意思を持った魔力の塊だ」
人間じゃないってことは、オバケ!?
魔力とか言ってるけど、結局のところはオバケだよね!? 私、オバケダメなのに~!
「ははははっ! さすが、我が尊敬するユリウス兄上! この短い時間で、私の状態に気づくとは!」
「隠すつもりもないくせに、よく言うぜ。付き合う身にもなれ」
「良いではありませんか。家族のスキンシップですよ」
「世界一気持ち悪いスキンシップだな。目的は……どうせくだらないものだろうから、聞く必要はないな。どうやってその状態になったかは知らんが……この場で改めて処刑してやる」
「あなたに出来るのですか? 」
「出来ないと言ったら?」
「ふふ……あなたなら言いませんよ」
「なら聞くんじゃねえよ」
互いににらみ合い、一歩も動かない中、ユリウス様がほんのわずかに足を動かした瞬間、ガイウスは指を鳴らそうとした。
しかし、その前にユリウス様は懐から薬を取り出して、それをばらまく。
すると、植物のつるが生まれ、ガイウスを拘束しようとしたが、避けられてしまった。
「死角からの攻撃だったのに……あの人、戦いにかなり慣れているの?」
「ふふっ、生身の体を無くしたことで、身軽になったのかもしれませんね」
「生身……あの、あの人は何故処刑されてしまったんですか?」
「民とは仲良くってやり方だった兄貴やワシと、恐怖と武力で最強の国を作るやり方だったガイウスで、王家は二極化していてな。それがある日、ガイウスが強硬手段に出たことで身柄を拘束され、処刑された」
「死の谷から突き落とされた時は、流石にダメかと思いましたが……私は奇跡的に生還しました。しかし、体はもうダメだった。だから、私の全てを込めた魔力体を作り、後を託したです」
「しぶてーやつだ」
「そこまでして、王家として国を強くしたいんですか!?」
「それは、過去の私です。私今のの目的は、現王族を完全に破壊し、その後に世界を全て私のものにすること。この騒動は、始まりでしかありません」
「そりゃご大層な夢だな。ぜひもっと聞かせてほしかったが……時間切れだ」
ユリウス様がそういった瞬間、部屋の扉がぶち破られ、私の愛しい人が飛び込んできた。
「……待たせたな」
「いや、良いタイミングだ、レオン。いまならカッコつけられるぜ」
「レオン様!!」
レオン様が無事だったのも嬉しいけど、この状況で来てくれるのが、本当に心強いよ! もっと好きになっちゃう!
「おやおや、これは強力な増援ですね」
「お前は、昔から変わらないな。丁寧な物腰だが、本質では他人を見下し、ペラペラと喋って自分に酔い続ける。美学だかなんだがしらんが、だからお前は負けるのさ」
「品位を無くした時点で、全ての世界の王に立つ資格などありません」
「ちょっと、さすがに不味いんじゃ無いかしら!?」
「そうですね。流石に彼ら二人を相手にするのは厳しい。そろそろお暇しましょうか」
「ガイウス叔父上。あなたの魔法の腕は、存じております。しかし、俺の剣と叔父上の魔法薬から、逃れることはできない」
「ふふっ、成長しましたね。しかし……あなたには出来ない。ええ、この先もずっと……」
「それはどうかな?」
吸っていた煙草の煙が、ゆらりと歪んだかと思った瞬間、彼らの足元に魔法陣が組み上がっていた。
あれって、さっき私がかけられた、拘束魔法だよね?
「これで逃げられないだろう? さて、相手は魔力体だし、封印するのが手っ取り早いか」
「……ユリウス兄上は変わりませんね。しっかり手を回せても、肝心なところで詰めが甘い。だから……あなたは負けるのですよ」
拘束魔法を受けたはずのガイウスは、一瞬でその場からいなくなってしまった。
それから間もなく、私の前に現れると、光が体を包み込んだ。
「では、名残惜しいですが……今回の演奏はここまで。また次回を、お楽しみに」
「やっ、なにこの光!?」
「セシリア!! 手を伸ばせ!!」
「レオン様!!」
光に包まれそうになっていた私は、急いでレオン様に向けて、手を思い切り伸ばした。
――しかし、その手は無情にも届くことなく、そのまま光に包み込まれ……意識を失ってしまった。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
読んでいただいた方々に、お願いがございます。5秒もかからないので、ぜひ☆による評価、ブックマークをよろしくお願いします!!!!
ブックマークは下側の【ブックマークに追加】から、評価はこのページの下側にある【☆☆☆☆☆】をタッチすることで出来ます!




