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第二十三話 ドキドキの毎日

「はぁ……」


 雲一つない青空の下、風で気持ちよくなびく洗濯物を見つめながら、私は小さな溜息を漏らした。


 ――レオン様に恋心を抱くようになってから、一ヶ月……私は、少し変わった。


 レオン様と一緒に過ごしているとドキドキして、なんだか夢心地になる。

 それだけじゃない。レオン様と一緒に食事やお茶をすると、嬉しくて小躍りしたくなるし、真剣に話を聞いてくれると、涙が零れる程嬉しい。


 ただ……大きな問題も出てきてしまったの。


「レオン様、何してるのかな……」


 もう一つ小さな溜息をしてから、再び洗濯に取りかかる。


 恋をしてから、私はレオン様のことばかりを考えてしまい、いざ会うとドキドキして、まともに喋れなくなることが増えた。

 そして、なによりも……レオン様が女性と話していると、凄くモヤモヤするようになってしまったの。


「こんなの、聖女として……ううん、人として良くないよね。さあ、早くお洗濯をしちゃわないと! 手伝わせてくれる人達に、申し訳ないもんね」


 私は、せっせと洗濯物を干し続ける。タオルが随分と多いのは、騎士の人達がたくさん使うからなんだよ。


「セシリア様、ありがとうございました。とても助かりました」


「いえいえ! またお手伝いに来ますね!」


 私は、深々と頭を下げてから、屋敷の中に戻って、次に出来ることを探し始める。すると、間もなく困っている使用人を見つけた。


「どうかしましたか?」


「セシリア様! その、これからレオンハルト様のお部屋のお掃除をするのですが、急な仕事が舞い込んできちゃって……」


「なら、私がお掃除しておきますよ!」


「いいんですか!? あ、ありがとうございます~! お掃除セットをお渡しするので、ご自由にお使いください! では……ありがとうございました!」


 もう一度律義にお礼を言い残して、彼女は去っていった。


 さて、レオン様の部屋……好きになってから初めて入る……緊張しすぎて、心臓が口から出そう。


「もう、しっかりしなさい、私! 出来ることは、なんでもするんだから!」


 大きく深呼吸をしてから、私はレオン様の部屋の前にやって来て、そろ~っと中に入った。


「レオン様は……やっぱりいないね」


 掃除をするのにはいいけど、会えないというのはとても寂しい。早くまた会って、お喋りがしたい……そんなことを思うと、溜息が出ちゃうの。


「とにかく、お掃除お掃除!」


 私は、ホウキやハタキといった、普通の道具で、お掃除を始める。

 こういう時に、お掃除魔法! とかがあればいいんだけど、生憎私は、聖女の力以外はさっぱりなんだ。


「元から綺麗だから、あんまり汚れが無いや……あっ」


 汚れはないけど、乱れているところはあった。

 それは……レオン様が普段ねている、大きなベッドだった。


「……こ、これは直さないといけないよね……」


 ベッドを前に緊張しながらも、私はベッドメイクを進めていたが、ベッドの上で手を滑らせちゃって、そのまま顔をうずめてしまった。


「……っ!?」


 す、凄い……! 当たり前だけど、レオン様の匂いがたくさんする。

 この匂い、大好きなんだよね……なんか、言葉では言い表せないけど……安心する匂いなんだよね。


「くんくん……くんくんくん……はっ!?」


 気が付いた時には、私は直したはずのベッドの上で、シーツや枕に顔をうずめながら、執拗に匂いを嗅いで、堪能してしまっていた。


 こんな……こんなのって……。


「ただの変態だよぉぉぉぉぉ!!」


 自分のしたことの愚かさに、私は頭を抱えで膝を折る。


 うぅ……こんなの、聖女としてあるまじき行為だよ……でも神様、仕方なかったんです。大好きな人の匂いがするベッドがあって、我慢が出来なかったんです……!


「……あれ? 引き出しが微妙に開いてる……レオン様、急いでたのかな? レオン様って、たまに可愛いところがあるよね」


 ふふっと笑いながら、引き出しを閉めようとした私の目に、とある物が映った。


 それは、あの夕焼けの下でレオン様にプレゼントをした、花冠だった。


「わぁ、プレゼントした時の形のまま、ドライフラワーになってる! これ、魔法なのかな? それとも、ユリウス様の魔法薬かな?」


 どちらにしても、レオン様がこうして大切にしまってくれていることが、とても嬉しい。胸の奥がポカポカして、自然と口角が上がる。


「あれ、他にも何か入っている……」


 いつもなら、人の引き出しなんて物色しないんだけど、今日だけは異常に気になった。むしろ、私を呼んでいるかのような……不思議な気分だ。


「……それじゃあ、失礼して……」


 ゆっくりと、引き出しを引いてみると、そこには衝撃的なものが入っていた。


「う、うそっ……そんな……」


 私は、興奮と戸惑いで震える手で、もう一つ入っていた物を取り出した。


「これ……私の木刀……??」

ここまで読んでいただきありがとうございました。


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