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第十八話 いつかはレオン様と……!?

「ふぅ、これでよしっと!」


 翌日、私はレオン様にお願いされて、一緒にお城から遠くて聖女の結界の効果が薄い町や村に赴いて、直接結界を張って回っていた。


「聖女様、ありがとうございます……!」


「これで、安心して暮らせます!」


「それならよかったです! 皆さんの笑顔を守れて、とても嬉しいです!」


 聖女の結界が無ければ、いつ魔物に襲われてもおかしくない。

 いくら、王家直属の兵士が常駐しているとはいえ、きっと不安だったよね……間に合って、本当によかった。


「さてと、レオン様に報告してこなくちゃ」


 確か、村長様のところで、何か話があるって言ってたはず。村長様の家に行けば、合流できるよね。


「えっと、赤い屋根の家って言ってたよね……あれかな?」


 事前にレオン様から聞いていた特徴の家に向かうと、レオン様が数人のお年寄りと一緒に、難しい顔をしていた。


「とりあえず、これで村への物資を運ぶルートは確保できるだろう」


「ありがとうございます、レオンハルト様……おかげさまで、村人が飢えずに済みます」


「礼を言われる覚えはない。むしろ、対応が遅くなってしまったことを、謝罪したい」


「何を仰いますのですか! あなた様がいらっしゃらなければ、我々はこの地で朽ちるか、故郷を捨てるしかなかったのですぞ!」


「しかし……ああ、セシリア。戻ったか」


 私のことに気が付いたレオン様の表情が、ほんのわずかに和らいだ。


「言われた通りに、結界を張り終えました!」


「ありがとうございます、聖女様……!」


「まだ時間がかかるから、どこかで休んでいろ」


「はい、わかり――ん?」


 私のスカートの裾を、クイックイッと引っ張る感覚を感じて、視線をそちらに向けると、絵本を持った小さな女の子が立っていた。


「せいじょさま、ごほんよんで!」


「あ、これ! 聖女様に迷惑をかけてはいかん!」


「だって、おじいちゃんたち、あそんでくれないんだもん! ねえ、せいじょさま……だめ?」


「うん、いいよ。一緒に読もっか!」


「やったー!」


「聖女様、孫娘が申し訳ありません」


「いえいえ!」


 ぴょんっと飛んで嬉しさを爆発させる女の子の可愛さにキュンキュンしながら、私は一緒に部屋の隅っこに行くと、女の子を膝の上に乗せて、絵本を読みはじめる。


「むかしむかし、あるところに……一人のお姫様がいました。お姫様は、家族にいじめられていて、寂しい毎日を過ごしていました」


「…………」


 真剣に聞いている女の子が、わかりやすいようにゆっくりとしたテンポで読み進めていく。


 内容としては、家族にいじめられて、周りにも理不尽に嫌われているお姫様が、王子様と出会って幸せになるという、よくある話だ。


 ただ……なんていうか、自分に重なるところがあるからかな。お話の中のお姫様が、あまり他人事のように思えなかった。


「――こうしてお姫様は、王子様と結婚をして、幸せに暮らしましたとさ。めでたしめでたし」


「えへへ、おもしろかったー! せいじょさま、ありがとう!」


「どういたしまして」


 ……ふふっ、子供の無邪気な笑顔って、本当に可愛いなぁ。見ているだけで、とっても癒されるよ。


「ねーねーせいじょさま! せいじょさまって、おうさまと、けっこんするんだよね! このえほんの、おひめさまみたいに!」


「うん、そうだよ。もうちょっと先の話だけどね」


「それなら、このえほんみたいに、ちゅーしたことあるの?」


「えぇっ!?」


 女の子のとんでもない発言に、私は声を裏返らせてしまった。


 レオン様と、キス……だなんて……そんなの、考えたこともない。

 そもそも、私達は政略結婚だから、愛のある結婚じゃない。

 でも、それをこの子に説明をしても、理解できるかは怪しいけど……子供の純粋な質問を、邪険にするのも……。


「う、うーん……まだ結婚はしてないから、したことはないよ。でも、いつかはするんじゃないかな……? あ、あはは……」


「そうなんだ! おとなってすごいな~! わたしも、いつかかっこいいおとこのこと、けっこんしたいな~」


「あなたは、好きな人はいるの?」


「えっとね……えっと……おとなりさんの……うぅ……」


 よほど恥ずかしいのか、耳まで真っ赤にさせている姿が、あまりにも愛らしくて、思わず頭をよしよしした。


「ふふっ、いつか結婚したら、私も結婚式に呼んでね」


「うん! わかった! わたしも、せいじょさまのけっこんしき、いくから!」


「ありがとう!」


 ふう……我ながら、話題の逸らし方が上手にできたと思う。これ以上根掘り葉掘り聞かれたら、絶対にぼろが出てたと思う。


 ……それにしても、レオン様とキスか……か、考えるだけでドキドキして、顔が熱くなっていくのがわかる。


 レオン様とは、恋仲じゃないし、そういう気持ちを抱いたことはないはずなのに……どうしてドキドキするんだろう。

 ……ただ単に、キスという好意に恥ずかしさを感じているだけなのかな?


「……今の話、隣の部屋のレオン様に、聞かれちゃったかな……?」


 お話の邪魔にならないように、レオン様のいる部屋へと繋がる扉から、少しだけ顔を出して、レオン様の様子を伺う。


「あれ……?」


 パッと見では、普通に話し合いが続いていて、話が聞こえていたとは思えない。

 でも、一つだけ少し変なところがあった。


「レオン様の持ってる書類、上下が逆じゃ……あ、気づいたみたい」


 レオン様が、あんなミスをするなんて、珍しいこともあるものだ。

 も、もしかして……凄く疲れているんじゃ? そうだよね、今日もここに来てから、ずっと働き通しだし……。


「今、私に何か出来ることってないかな……」


 ここでの聖女としての仕事は、確かに終わった。だからといって、あとは何もしませんっていうのは、人として違うと思う。


 ……よしっ、何か出来ることがないか、村の人に聞いてみよう!

ここまで読んでいただきありがとうございました。


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